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2018.02.07 (2022.12.23 One's Ending編集部 加筆)

セルフネグレクトとは?原因や心理、対策事例で孤独死を防ぐ

「セルフネグレクト」とは、自分自身の基本的な生活を顧みない行為を指します。
たとえば、衛生面や服装、食事などに気を配ることはなくなり、自ら他者に対して援助を求めることができなくなる状態です。
かつてセルフネグレクトは、認知症などによって判断能力の衰えた高齢者に特有の状態だと考えられていました。
しかし、近年になって老若男女問わず誰にでも起きうるものだと考えられるようになっています。

セルフネグレクトを放置すると、最悪の場合は孤独死につながる可能性もあります。
そこで今回は、セルフネグレクトの原因や周囲ができる支援などを中心に解説します。
簡単にできるチェックリストも載せたので、近所の方や遠方に住む家族など、セルフネグレクトに陥っていないか気になる方がいる場合には活用してみましょう。


セルフネグレクトとは

旺文社『現代カタカナ語辞典』によると、セルフネグレクトとは「自己放任。医療や食事を拒み、健康や安全を自ら放棄する人」と、書かれています。
また、これに続いて「ほとんどが高齢者で、食べ物やゴミも放置するため、ごみ屋敷化してしまう。
福祉や医療、環境の面からも問題視されている」と、解説されています。 

 

こういう解説を読むと、「セルフネグレクトは自己責任」や「だらしない人がなるもの」と、感じる方がいるかもしれません。
しかし、セルフネグレクトに陥るにはそれなりの原因があり、高齢者だけでなく、20~30代の若者にも起こりうるものです。
このため、自分やご近所の方、離れて暮らしている家族も、セルフネグレクトになる可能性があるものだと考えておいた方がよいでしょう。

 

セルフネグレクトの定義とチェックリスト

 

「どうしてもやる気が起きない」や「ずっと眠たくてボーっとしてしまう」という気分は誰もが経験したことがあるはずです。
どうしようもなく面倒で、入浴や歯みがきをしないで寝てしまう日もあるでしょう。
そういった状態とセルフネグレクトには、どのような違いがあるのでしょうか?

 

セルフネグレクトを発見するためのチェックリストは次の通りです。

 

・昼間でも雨戸が閉まっている
・電気、ガス、水道が止められていたり、新聞、テレビの受信料、家賃などの支払いを滞納していたりする
・食事をとっていない
・薬や届けたものが放置されている
・物事や自分の周囲に関して、極端に無関心になる
・何を聞いても「いいよ、いいよ」と言って、遠慮したり諦めたりしている
・室内や住居の外にゴミがあふれていたり異臭がしたりする
・何らかの疾患が疑われる症状があるのに、医師の診断を受けていない

 

参照:福井県「高齢者虐待発見チェックリスト

 

チェックリストに1つでも当てはまる状態であれば、今後も注意深く観察して、状況が悪化しないようにしましょう。
もし、セルフネグレクトが疑われるなら、積極的な支援が必要になります。

 

セルフネグレクトの原因

孤独

若者から高齢者まで誰しも陥る可能性があるセルフネグレクト。
セルフネグレクトになるには主に4つの原因があります。

 

社会的な孤立(家族・友人・近所と疎遠など)

一人暮らしをしていると、誰とも会話をしないで1日が終わるということもあるはずです。
とくに仕事をしていない方の場合、離れて暮らす家族や、友人・ご近所の方と積極的に交流をしなければ、社会的な孤立状態に陥ります。

 

人と交流することがなくなると、身なりを気にしなくなる可能性があります。
また、自宅を訪れる人がいなければ、部屋を清潔に片付けようという気力が湧かなくなるかもしれません。

 

もともと社会的な孤立は、現役を引退した一人暮らしの高齢者に顕著にみられました。
しかし、忙しい職場で長時間労働を行っている若い世代にも、社会的な孤立は起こりうるものです。
たとえば、「朝から晩まで仕事をしているため、プライベートな時間をとれず友人と交流できない」しかも「職場の人間関係が悪く、気軽に話ができる人がいない」という場合には、人に会っているはいるものの、社会的な孤立状態といえるかもしれません。

 

また、ここ数年は新型コロナウイルスの流行によって、若い世代も高齢者も、なかなか人と交流ができない時間が増えています。
2022年のニッセイ基礎研究所の調査では、とくに20代・30代の女性の約3割が「コロナ禍で孤独・孤立への不安を感じている」と、答えました。
70代の男性・女性はともに、不安を感じているという回答が約1割だったので、若い世代のほうがコロナ下で孤独を感じているといえるでしょう。

 

※参照:ニッセイ基礎研究所「コロナ禍でどんな人が孤独・孤立を感じているのか~『第8回 新型コロナによる暮らしの変化に関する調査』」

 

 

身体機能の低下(視力や体力の低下や病気など)

身体機能が低下すると、掃除・料理・洗濯などをスムーズに行うことが難しくなります。
やろうと思ってもできないという状況が続くと、無力感に苛まれることもあるでしょう。

 

例を挙げると、足腰が痛くなれば、毎週決まった曜日の朝にゴミを出すことが難しくなるかもしれません。
また、外出も億劫になるでしょう。病気が原因だったとしても、病院まで行くのが大変だと感じる可能性もあります。

 

こういった状態が続くことで、セルフネグレクトになるのです。

 

判断力の低下(認知症やうつ病など)

認知症や、うつ病などの精神疾患で判断力が低下することも、セルフネグレクトになる原因です。

 

認知症の場合は、徐々に自分が何をすべきかの判断がつかなくなります。
たとえば、「外出するから着替える」という判断ができなくなるのです。
さらに、誰かに声をかけられないとお風呂へ入れなかったり食事を取れなかったりする方もいます。

 

また精神疾患が原因でも、認知症と同様に判断力が低下し、結果としてセルフネグレクトに陥る場合もあります。

 

家がごみ屋敷のようになった方は、何らかの精神疾患や障がいを抱えているかもしれません。こちらの記事で詳しく解説しています。

 

【関連記事】片付けられない症候群の特徴と改善策とは?部屋を片付けられない原因は病気や障害かも?

 

経済的困窮(家賃や食費が払えないなど)

経済的な困窮も、セルフネグレクトになる一因です。
たとえば、突然の失業で収入が途絶えてしまった場合、栄養バランスのよい食事をとったり、体調不良の際に病院へ行ったりすることができなくなる可能性があります。

 

近年問題視されているのが、自宅にひきこもったままの子どもがいる世帯です。
親の年金などを頼りに生きてきた方が、親の死をきっかけにセルフネグレクトになってしまい、そのまま自宅で亡くなるというニュースを見たことがある方もいるでしょう。

 

私たち人間が一般的な生活を維持するためには、必要最低限の経済力を満たさなければなりません。
しかし、何らかのきっかけで経済的困難な状況に陥ると、生活維持が難しくなるケースもあります。

 

自ら助けを求められれば、生活保護などを受けることもできますが、そのためには何度も役所に通ったり書類を提出したりしなければなりません。
一度でも断られた場合には、助けを求めること自体を諦めてしまい、よりセルフネグレクト状態に陥る可能性があります。

 

セルフネグレクトと孤独死との関係

手を差し伸べるイメージ

セルフネグレクトは「緩やかな自殺」と呼ばれるほど、その状態が続くと不健康になり亡くなる危険性が高まります。
2011年にニッセイ基礎研究所が行った調査結果によると、「孤独死した方の約80%がセルフネグレクトかもしれない」と考えられています。
少し前の調査ですが、今も同じ傾向にあるでしょう。

 

※参照:ニッセイ基礎研究所「『セルフ・ネグレクトと孤立死に関する実態把握と地域支援のあり方に関する調査研究報告書』(平成22年度老人保健健康増進等事業)

 

 

セルフネグレクト状態である方を早期発見し介入することができれば、孤独死した方の約80%を助けられた可能性があるのです。
つまり、セルフネグレクトを見てみぬふりすることは、相手を死に近づける行為といえます。

 

【関連記事】遺品整理の現場から~餓死に至る可能性があるセルフネグレクト

 

身近な方がセルフネグレクトの場合にできる支援

家族や身近な方がセルフネグレクト状態になっているときに、周囲ができる支援を解説します。
まずは個人や地域の方が声掛けをして、その後必要に応じて行政を頼るのがよいでしょう。

 

個々人でできる支援:まずは当事者の話を聞く

自分の親や近所の方がセルフネグレクトを疑うような行動をしているとき、まずは当事者の話を聞くことが大切です。
自分の家族が身だしなみを整えられず不衛生でいると、思わずイライラして感情的に「ちゃんと片付けなさい」などと、言ってしまいがちです。
しかし、命令口調で正論を言っても、改善しません。
相手の話をしっかりと聞いて、セルフネグレクトになっている原因を理解することが大切です。

 

行政に頼るなら:まずは地域包括支援センターに連絡する

個人の声掛けだけではうまくいかないときや、行政の支援が必要だと感じたときは、地域包括支援センターに連絡しましょう。

 

地域包括支援センターとは、市町村に設置された、住民の健康や生活の安定のために必要な支援を行う施設です。
2021年4月時点で、全国に5,270ヶ所が設置されているので、最寄りのセンターに連絡しましょう。
都道府県別の地域包括支援センターはこちらで確認できます。

 

※参照:厚生労働省「地域包括ケアシステム

 

地域包括センターでは、主に高齢者の介護予防支援や包括的支援を行っており、セルフグレクトや孤独死を防止するための対策にも関わっています。
保健師・社会福祉士・主任ケアマネージャーという3つの専門家が配置されていることで、困りごとに対して総合的な支援ができるのです。

 

まとめ

セルフネグレクトの原因や孤独死を防ぐ支援方法を解説しました。
セルフネグレクトは認知症の高齢者がなるものというイメージがありますが、若い世代でも起こりうる問題です。
とくにここ数年のコロナ禍により、従来のような地域の繋がりや友人関係が維持できないケースが幅広い年代で見受けられます。

 

セルフネグレクト状態が続くと、食事や衛生面に気遣えずに最悪の場合孤独死をしてしまう可能性があります。
悲しい事件や事故が起きる前に、セルフネグレクトになっている疑いのある方には積極的な支援が必要です。

 

しかし、個人での声掛けはかなりの根気が必要でしょう。
このため、地域で一丸となっての見守りをしたり地域包括支援センターに相談したりすること、適切な場所への支援につなげることが大切です。

 

 

 

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この記事を書いた人
One's Ending編集部
関東の遺品整理専門会社(株)ワンズライフのメディア編集部です。 遺品整理、生前整理、空家整理に関することから、終活、相続税に関することまで。人生のエンディングにまつわる、役に立つ情報やメッセージをお届けしていきます。
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