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2021.11.26

遺品整理の現場から~餓死に至る可能性があるセルフネグレクト

「自己放任」と訳されるセルフネグレクトは、社会から孤立しがちな一人暮らしの高齢者に特に多くみられる問題です。
セルフネグレクトに陥ると家が荒れ果ていわゆる「ごみ屋敷」のような状態になり、そのまま問題が放置されると餓死や孤立死に至るケースもあります。

今回は、セルフネグレクトの具体的な意味や原因とともに、一人暮らしの高齢者が餓死に至った事例や現代のセルフネグレクト問題についてお伝えします。

セルフネグレクトとは

セルフネグレクトには法的な定義がありませんが、簡単にまとめると「生きていくために必要な行為を放任・放棄すること」をいいます。
セルフネグレクト状態に陥るのはさまざまな原因があるとされ、高齢者だけでなく若い世代にも起こりうる問題です。

 

セルフネグレクトの意味

セルフネグレクト(Self-Neglect)は直訳すると「自己放任」や「自己放棄」という意味になり、通常の生活を送る意欲や能力がない状態を表す言葉です。
また、その結果として自己の安全や健康が脅かされることになっても、周囲に助けを求めない状態をいいます。

 

ここでいう「通常の生活」とは、食事をとる、睡眠をとる、身なりを整える、個人衛生を保つ、住環境を整えるといった、基本的な生存に関わる行為を指します。
ただし、セルフネグレクトは精神的に健全ではなく正常な判断ができない状態にあるため、単に怠け癖があること、部屋の片付けが苦手なこと、身なりにこだわらないこととは別問題です。

 

セルフネグレクト状態に陥っても、自分ではなかなか気付けないことがほとんどです。
支援が必要な状態であったとしても助けを求めることができず、問題が表面化されないケースも多いと推測されています。

 

セルフネグレクトに陥る原因

セルフネグレクトに陥る原因としては以下が挙げられます。

 

• 身体機能の低下
• 認知症や精神疾患等の問題
• 家族や地域コミュニティからの孤立
• 親しい人との死別・離別
• 経済的な問題による生活苦

 

加齢による判断能力の低下や認知症の発症によってセルフネグレクト状態に陥るケースもありますが、高齢者だけでなく若い世代にも起こりうるのが、本人の意思で自ら生活を放棄してしまうケースです。
生きることが苦痛で何もする気が起きない、通常の生活を送る意欲が持てないなど、いわゆる自暴自棄のような状態ともいえるでしょう。

 

餓死は身近な問題?〜とある現場の事例

「明日食べるものがない人がいる」

現代の日本ではあまりピンとこない方も多いかもしれません。
しかし、実際には割と身近に存在している問題です。

 

世界から見ると豊かな経済大国の日本ですが、何らかの事情で働けなくなり、わずかな収入でその日一日を必死に生き延びている方もいらっしゃいます。
実際に誰かが手を差し伸べなければ、生きていくのも困難な状態に陥っているのです。

 

ここからは、一人暮らしの高齢者が生活に困窮し、孤独死に至った事例をご紹介します。

 

とある現場で孤独死をされた方は、ご家族と別れ一人暮らしを十数年続けておられました。
何があったのかは推察しきれませんが、おそらくはご本人の意思または事情があったのだと思われます。
日々の生活に困窮し、最後の方はご近所の方にもお金を借りておられたそうです。
部屋はヤニだらけでモノがあふれている状態でした。

 

故人様の死後、部屋の片付け作業をしているときには、ご近所の方が心配して見に来られていました。
このような状況でも心配して来てくれるわけですから、周囲とのつながりがまったくなかったというわけではないのでしょう。
だ少し、社会の事情に翻弄されてしまっただけなのではないでしょうか。

 

現代のセルフネグレクト問題

セルフネグレクト状態が続いたまま放置されてしまうと、餓死や孤独死に至る可能性があります。

 

今回ご紹介した事例は一人暮らしの高齢者という特にセルフネグレクトに陥りやすい状況にあり、経済的に生活が厳しかったこと、行政や関係団体などもっと広い範囲で支援を求められなかったことが、餓死・孤独死を招いたのだと考えられます。

 

実際、セルフネグレクトに陥っている方たちは、誰かが支えてあげなければそのまま死に至るケースが後を経ちません。
そもそも自分がセルフネグレクト状態にあることに気付いていないケースが多く、また気付いていても自ら周囲に助けを求められない方は多々いらっしゃいます。
自分から声をあげられない理由には、周囲への遠慮があること、誰かに頼ることに抵抗があること、荒れている部屋や生活環境を他人に見られたくないことなどがあるようです。

 

地域コミュニティが希薄化する現代社会において、セルフネグレクトはますます明るみに出にくい問題になっているといえるでしょう。
昔は地域のつながりが深く、助け合いや見守りのコミュニティがありましたが、現代は周囲との交流が少なくなっています。
その結果、社会的に孤立してしまい、誰からの支援も受けられずに餓死や孤独死に至ってしまうケースが増えているのです。

 

また、セルフネグレクトに至る原因のひとつに、金銭的な事情があります。
お金がなくて好きなことができない、日常生活すらままならないことから生活意欲を失い、セルフネグレクトに陥ってしまうのです。
現実問題として生活困窮者の方は身近にいらっしゃるもので、今後この問題も増え続けていくように思われます。

 

セルフネグレクトへ対応するには

現代のセルフネグレクト問題に対応するには、自治体や専門職の介入・支援など、地域社会による見守り体制の強化が不可欠です。

 

しかし、セルフネグレクト状態に陥っている方は、他人からの支援を拒否するケースも見受けられます。
本人の意思を尊重することはもちろん大切ですが、セルフネグレクトによって生命のリスクがある場合は、このまま放置し続けることの危険性をしっかりと伝える必要があるでしょう。

 

また、高齢化が加速し一人暮らしの高齢者が増えていること以外にも、急激に変化する社会情勢において不安定な状態や無気力状態になりやすいことから、セルフネグレクトは高齢者のみならず若い世代でも陥りやすい問題となっています。
高齢者は地域からのサポートを比較的受けやすい立場にありますが、働き盛りの若い世代にまで十分に目を行き届かせるのは難しいケースが多いでしょう。

 

今やセルフネグレクトは、世代を問わず誰もが陥る可能性があります。
セルフネグレクト問題を減らすには、身近な人が気にかけてあげ、セルフネグレクトの予兆を察知することが大切です。
セルフネグレクトに陥りやすい今だからこそ、社会が一丸となってこの問題に取り組む必要があるでしょう。

 

まとめ

セルフネグレクトとは、通常の生活を維持するために必要な行為をおこなう意欲や能力がなく、自らの健康や安全を脅かすことをいいます。
必要な支援が受けられないまま放置されてしまうと、餓死や孤独死に至るおそれがあります。
社会的に孤立しがちな一人暮らしの高齢者に多く見られますが、若者も例外ではなく、誰もが陥る可能性がある問題です。

 

セルフネグレクトは自分では自覚しにくいこと、人に頼ることに遠慮してしまうことなどから、なかなか表面化しにくい問題でもあります。
セルフネグレクトへ対応するには、身近な人が気にかけてあげたり、地域で見守り体制を強化したりと、孤立を防ぐための取り組みが必要になるでしょう。

 

この記事を書いた人
One's Ending編集部
関東の遺品整理専門会社(株)ワンズライフのメディア編集部です。 遺品整理、生前整理、空家整理に関することから、終活、相続税に関することまで。人生のエンディングにまつわる、役に立つ情報やメッセージをお届けしていきます。
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