2019.02.15
エンディングノートとは何?メリットやオススメの選び方と書き方を解説
人生の最後を見据えながら、自分らしく生きる「終活」の浸透とともに、自身の生と終焉を書き綴る「エンディングノート」の存在がクローズアップされています。
今回の記事では、具体的にエンディングノートとは何なのか、書いた場合のメリット、おすすめの選び方や書き方などを分かりやすく解説しますので、参考にしてみて下さいね。
エンディングノートとは
その名の通り「人生の終末」を記した「ノート」です。終活は生前から終焉までのライフステージにおいて、“いつ何をすべきか”や“最後はどうあるべきか”などを考えて行動しなければなりません。このような頭にある計画を具体的に書いたのがエンディングノートになります。
エンディングノートという言葉が広まった背景には、終活自体が注目されたこともありますが、「エンディングノート」という映画が公開されたのも大きな要因の一つでしょう。映画の内容は、仕事一筋に生きた末期がんの父親(砂田知昭氏)の姿を、監督である実の娘(砂田麻美氏)が追ったドキュメンタリーです。
すべてにおいて生真面目な砂田知昭氏は、余命宣告を受けると、限られた人生を自分らしく生きるため、そして残された家族が困らないようにエンディングノートを作成します。知昭氏が作成したノートには、愛する人たちへのメッセージが詰まっているのです。こちらは2011年に公開されましたが、現在でも上映している映画館があり、またDVDも発売されていますので、気になる方はぜひチェックして見てください。
遺言書や遺書とはどう違うの?
遺言書・遺書・エンディングノートの3つは間違えやすいので、一つずつ解説いたします。
遺言書
自分に万一のことがあった場合、「財産(遺産)を誰にどれだけ渡すか」や「事業や不動産などの管理を誰に託すか」を生前に取り決め、その意思表示を民法の規定に従って書面に残したものです。
遺言書の内容は、原則として法律で定められた相続の規定よりも優先される等、法的効力があります。それゆえ、相続をスムーズかつトラブルを防止する目的で作成されるケースが多いです。
【関連記事】自筆証書遺言とは?要件や作成の注意点、書き方の解説
遺書
遺書は、死を前提に自分の気持ちを家族や関係者へ記したものです。病死における家族などへの感謝の言葉、自殺における身の潔白や保身、加害者への憎悪や怒りなど、心情について書かれるものであり、遺言書のように遺産のことは書きません。また、書いてあっても法的効力は発生しないため、残された財産の相続を話し合う時にはご注意ください。
エンディングノート
遺言書がおもに「死後の財産分与」、遺書が「最後のメッセージ」だとすると、エンディングノートは「人生の記録」といえるでしょう。
遺言書のように法的効力は存在せず、遺書のように死後の話へ特化した内容である必要もありません。また、病気によって死期が迫っている場合のみならず、「いつか訪れる死」に対して書かれることも少なくないのが、エンディングノートの特徴です。
エンディングノートを書くメリット
家族に思いを託すことができる
自分の希望を書き残すことができる点が、エンディングノートの最大のメリットです。遺産相続など金銭的なことは、法的根拠のある遺言書に記すでしょう。
しかし、エンディングノートには「どのように葬儀を行ってほしいかや誰を呼んでほしいか」だけでなく、「家族に向けて感謝の言葉」を綴ることもできます。
これまでの人生を振り返ることができる
人生は必ずしも平たんな道のりではありませんよね。しかし、辛いことや悲しいことを乗り越えてきたからこそ、これまで過ごしてきた日々があります。
エンディングノートを書き、さまざまな思い出を振り返ることで、見過ごしていた幸せに気づくでしょう。また、人生の記録を振り返ることにより、今後どのように生きていきたいのか考えるきっかけにもなります。
エンディングノートの選び方
エンディングノートに決まった形式はありません。
市販のノートでもよいですし、WordやExcel等を使ってデジタル管理するのもよいでしょう。
また最近ではスマートフォンの普及により、アプリも登場しています。いつどこでもエンディングノートを書くことができ、簡単に編集できるというメリットもあるので非常におすすめです。ただしスマホのパスワードは、家族であってもショップやメーカーで解除してもらえないというデメリットもあります。デジタルでの管理は状況に応じて使い分けるのが良いでしょう。
「どのような内容を書けばいいかわからない」「ノートの作り方が分からない」という方は、まず文房具店や本屋などで販売されているエンディングノートをご購入ください。
また、インターネットを利用すれば書式をダウンロードすることもできますので、個人で必要な分だけダウンロードして印刷し、市販のノートに貼り付けて作成するのもオススメです。
おススメのエンディングノート
コクヨ エンディングノート『もしもの時に役立つノート』
http://www.kokuyo-st.co.jp/stationery/life-event/ending/
大手通販サイトで、売り上げランキング第1位を誇るエンディングノートの定番。
文房具メーカー大手のコクヨらしく、必要かつ詳細な情報が書き込めるように項目が整理されています。付属品にCDなどの記録メディアを1枚収納できるケースがあるため、思い出の写真(画像)や動画を入れるのもよいでしょう。
終活ノート『マイウェイ』
一般社団法人終活カウンセラー協会が制作した終活(エンディング)ノートです。
彼らは全国各地で講演活動を通して実際の声を聞き、様々なエンディングノートの監修を行なってきました。
この協会だからこそ制作でき、選りすぐりの中から厳選した内容が詰まっているノートのため、大変書きやすいと評判を集めているのです。
また、白内障の方に向けてカラーの見やすさや文字の書きやすさを重視したり、高齢者の方に向けて文字の大きさや記入スペース等を作ったり、さまざまな箇所にこだわりがつまっています。ワンズライフ代表で終活カウンセラー上級インストラクターである上野貴子も、自信を持っておすすめいたします。
エンディングノートの書き方
「これを絶対に書かなければいけない。」というような定めは特にありません。
しかし、エンディングノートの性格上、自分が何らかの要因で突然死亡した場合を想定し、家族の困惑を防ぐための情報を書き残すと、もしもの際に役立つことがあります。
最初に終末期医療についての対応や葬儀への希望を書き、それから友人や知人などへの連絡先、貯蓄・保険・年金・その他貴重品の情報などを記すのがおススメです。
公式な書類ではないため、こころを楽にして、死後に伝えたいことや今の気持ちなど、ラフな感じで書いて頂いて構いません。好きなイラストや写真を載せるなど、自分らしいエンディングノートを作ってみてください。
内容について、以下にいくつかの例を挙げていますので、記入する際の参考にしてみてください。
ご自分のこと
この世に生を受けてから、現在までの流れを書きます。人の一生には、卒業・就職・結婚・出産など様々なライフイベントがあり、その都度、喜びや悲しみ、ときには怒りもあったはずです。そのようなライフステージの過程を振り返ることで、今後何をするべきかが見えてくることでしょう。これまでの人生を振り返りながら自分史を書いてみましょう。
いわゆる個人情報も、ここに記しておきます。家族なので本名や生年月日くらいは知っていても、本籍地、マイナンバーや年金証書などの基本情報、家系図などは、わからない方も多いですよね。そうした情報を書き記すことで、行政などへの手続きが確認も少なくスムーズに行えます。
記載例
- 生年月日
- 本籍地
- 家族
- 家系図
- マイナンバー
- ライフイベント
- 人生のターニングポイント
- 思い出話
- 人生観
- 性格、信念
- 人脈、仲間
- 学歴、職歴、資格
- 趣味・特技
- コレクション
身の回りのこと
ペットの世話
ひとり暮らしの場合、残された犬や猫などのペットを誰に引き取ってもらうかも決めておかなくてはなりません。ご家族の生活環境によって引き取れない場合などは、早めにスイッチできる人を探しておくと良いでしょう。また、同じ動物でも個性があるので、ノートにはプロフィールやパーソナリティを書いておいてください。
デジタル情報
最近は高齢者の方でも、SNSを楽しむ方が増えています。日々の出来事が綴られているので、亡くなった後に思い出を振り返るご家族も少なくないでしょう。
しかし、これらは退会手続きを取らないと、永久にアップされたままの状態になります。。アドレスやパスワード、退会手続きなどの操作方法をノートに記し、いつまで公開するのかを設定しておいた方がよいでしょう。その際には、後から手続きを行う親族のためにも、パソコンなどのパスワードの記載を忘れずにお願いします。
家族や友人、お世話になった方への感謝の言葉
人は一人で生きることはできません。しかし、日頃から感謝している相手でも、面と向かってお礼を言うのは恥ずかしいものですし、自ら感謝を伝える機会も少ないことでしょう。エンディングノートには、家族や友人、お世話になった方への感謝の言葉を綴り、積極的に「ありがとう」の気持ちを書き残しておきましょう。
財産のこと
年金証書や保険の証書、介護保険証や健康保険証、または通帳と印鑑など、貴重品の保管場所は本人以外知らないケースが多いですよね。あらかじめ保管場所をノートに記入しておくと、家族はスムーズに対応することができます。ただし、ノートは貴重品に関する情報も書かれているので、漏えいしないよう十分に管理しなくてはなりません。
また、法律で定められた財産分与以外の方法を希望する場合は、遺言書が必要になるため、ノートには、遺言書を作成している事や誰が管理しているかなどを記載しましょう。
記載例
- 預貯金
- 金庫などに保管している現金
- 不動産
- 有価証券
- 貴金属
- 骨董品など価値のあるコレクション
医療・介護のこと
厚生労働省の調査によると、昭和50年から自宅で亡くなる人と病院で亡くなる人の数が逆転し、現在では病院で亡くなる方がほとんどです。
近年では、延命治療を行うケースが少なく、慣れ親しんだ介護施設やご自宅などで、最後を迎える「看取り」が行われています。
また、親族が末期の状態になった時に「どの程度の医療行為を必要とするか」は家族にとって悩ましい問題です。
家族の負担を取り除くために、あらかじめ末期症状や認知症により自己判断ができなくなったときの対応方法を決めておきます。残された遺族が「もっと何かできたのではないか」という後悔をさせないための気遣いといえるでしょう。
記載例
- 希望する医療機関及び介護施設
- 希望する治療方法
- 延命治療の有無
- 臓器移植・角膜移植など他者への提供
葬儀・お墓のこと
これまで死について語るのはタブーとされていたため、生前に葬儀について話し合われることは少なく、本人や家族の立場や交友関係によって葬儀の内容が決められていました。
しかし、昨今では密葬や家族葬など、葬儀の形態も変わりつつあり、終活が一般化するにつれ、自分で気に入ったお墓を購入する機会も増えてきています。ご家族にとってもデリケートな部分のため、事前に取り決めておく方が安心ですね。
記載例
- 信仰する宗教
- 葬儀の方法(密葬・家族葬など)
- 納骨の方法(納骨・散骨など)
- 喪主
- 遺影に使う写真
- 参列者への案内
遺言、形見分け、遺品整理のこと
家族間でトラブルがないよう遺言を残してあれば、その保管場所を記しておきます。
また、資産価値の低い貴金属品やコレクションなど、思い出が詰まった品をどのように分けるかを記しておきます。逆に貰っても困るようなものは、処分の方法を記します。中には「家族は興味を示さないが、愛好家には人気なもの」や「資産価値はないが、歴史的に貴重なもの」もあると思いますので、それらの譲渡希望先も決めておきましょう。
記載例
- コレクションの処分方法及び形見分け
- 家財道具など遺品の処分方法
連絡先
人は他の人との繋がりを持って生きています。
葬儀会社だけでなく、病院や施設、同窓会や趣味の会など、様々な方への連絡が必要となります。
しかし、家族が交友関係のすべてを把握していることは少なく、連絡するのは困難を極めと言えるでしょう。友人・知人の連絡先一覧があれば、家族にとって重宝するかもしれません。
メッセージ
家族や友人に対し、感謝の言葉や思い出話、最後に伝えたいことなど、共に過ごした時間が幸せであった内容をメッセージとして残します。文字だけでなく、写真や動画と一緒に残すのも良いでしょう。いつもと同じ普段通りのまま、語り掛けるように心の思いを伝えてみてください。
エンディングノートを書いた後
エンディングノートを書き終えたあとの注意点をお伝えします。
定期的な見直し・更新
エンディングノートは、「書いたら終わり」ではありません。人が生きていく上では、必ず変化の連続があります。比較的若いうちにエンディングノートを書いたならば、様々な面で変わったことがあったでしょう。
定期的に見直して更新する必要があります。
たとえば、自身の健康状態、家族構成や資産状況などは、その都度変化していくものです。
また、思考や死生観が変わることもあります。
変化があるたびに更新するのも良いですが、1年に1回など日付を決めて、定期的に見直すだけでも十分かもしれません。
正しく保管する
エンディングノートには、個人情報や重要な情報が満載です。自己責任のもと、正しく保管しましょう。自宅の金庫や机の引き出し、お仏壇など、紛失しづらく見つけやすい場所がおすすめです。
家族に伝える
エンディングノートの性質上、せっかく書いても、家族に見つけてもらわなければ意味がありません。エンディングノートを書いたことは、必ず家族に知らせておきましょう。また、配偶者だけでも構わないので、保管場所についても知らせておきましょう。
おわりに~エンディングノートはライフプラン~
エンディングノートは「死のためのノート」ではなく、「よりよく死を迎えるためのノート」です。
「死んだあとにどうするか」という情報だけではなく、「自分らしい終焉を迎えるために何をすべきか」が綴られます。「人間が必ず訪れるゴールに向かって、自分のポジションを確認していく。」いわばライフプランのようなものです。過去を振り返ることで、明確な未来が見えてきます。あなたも人生を自分らしく生きるために、エンディングノートを始めてみませんか?
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