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2019.10.16 (2020.12.24 One's Ending編集部 加筆)

大切な人との死別を乗り越える、悲嘆のプロセスとは

親しい人との死別を経験した方は、大きなショックを受け「悲嘆(グリーフ)」を感じます。
「死の衝撃=悲嘆」は突然悲しみとなって現れるものではなく、段階を追って認知されることをご存知でしょうか?
死生学の権威「アルフォンス・デーケン※」は、死別による精神的ショックを受けてから立ち直りまでを12段階のプロセスに分類しています。

今回は、彼が提唱した「悲嘆のプロセス」と、グリーフに苦しむ人を支え、悲しみを癒す「グリーフケア」についてご紹介します。

グリーフケアとは

グリーフ(grief)は「悲嘆」と訳し、死別による深い悲しみの感情を表現するときに使われる言葉です。

人は、身近な方との死別に遭遇すると、深い喪失感を感じつつも「乗り越えよう」と前向きな気持ちも起こり、どうにか悲しみを乗り越えようとします。

グリーフとは、この「喪失」と「立ち直り」の2つの感情の間で揺れ動く、複雑な精神状態のことです。

 

グリーフ状態にある人は、単に気分の落ち込みだけでなく、怒り、罪悪感、思慕など、さまざまな心理的反応が現れます。

また、頭痛やめまい、息切れといった肉体面の反応や、睡眠障害、食欲減退などの行動的な反応まで、長期間にわたって心と身体にあらゆる変化が起こります。

 

「グリーフケア」とは、死別によってこのようなグリーフ(悲嘆)反応が起こっている人の気持ちにさりげなく寄り添い、再び日常生活に適応していけるように、悲しみを癒すサポートをすることです。

 

〈グリーフ(悲嘆)によって起こるさまざまな反応〉

・心理的反応……悲しみ、ショック、怒り、罪悪感、感情の麻痺、孤独感、虚無感、無力感など

・肉体的反応……睡眠障害、食欲減退、疲労感、めまい、肩こり、体重減少、体力低下など

・行動的反応……ひきこもる、過活動、涙が止まらなくなるなど

 

グリーフケアは、資格ができないわけではありません。

実際、家族や友人など、身近な人がグリーフケアを行うことも多々あります。

死は、突然訪れることも多く、いつ、誰に起こるかわからないものです。

そのため、専門家でなくても、グリーフケアについての知識を身につけておくことは重要だといえます。

 

【関連記事】グリーフケアの意味とは~身近な人を失った悲しみを乗り越える方法~

 

悲嘆のプロセスとは

悲嘆のプロセスとは「悲しみは段階的なプロセスによって構成されている」という概念です。

人は、大切な人の死に直面してからそれを受け入れ、乗り越えるまでに、いくつものプロセスをたどるといわれています。

多くの研究者たちによりこの悲嘆の段階説が示されており、そのひとりがドイツ・オルデンブルクで生まれた哲学者「アルフォンス・デーケン」です。

上智大学でも教鞭を取ったこともある日本の死生学の第一人者で「死生観・死の準備教育」を提唱しており、独自の視点で悲嘆のプロセスを12段階に分類しています。
適切なグリーフケアを行うためにも、大切な人を亡くした遺族の精神状態を理解しておきましょう。

 

1. 精神的打撃と麻痺状態

死はとてもショッキングな出来事なため、ストレートに受け止めると心身の崩壊を招きかねません。

死の報告を受けたときは冗談や嘘としか受け止められないなど、物事を理解する機能が一時停止し、ショックをやわらげるために現実感覚が麻痺します。

 

2. 否認

麻痺状態から回復すると「死を受け入れたくない」という気持ちから否認が始まります。

突然死や事故死など予期せぬ死の場合は、この傾向が顕著に表れます。

最初は自分を落ち着かせるために「そのうち元気に帰ってくるはずだ」など、楽観的な言動が聞かれます。

時間の経過と共に死が事実であることを確信し始めると、今度はそれを否定する心理が大きく働き「嘘だ」「何かの間違いだ」など、激しく否認する行動が現れます。

 

3.パニック

この時期は、死を確信する一方で、それを否定したい感情が合わさって情緒不安定になり、パニックを引き起こします。

「もう二度と会うことができない」という寂しさや悲しみの感情から、無念さ、恐怖などが一気に押し寄せ、普段は冷静な人でも、泣く、わめく、叫ぶなど、極限状態に陥ることが少なくありません。

場合によっては、暴れたり物を破壊したりすることもあります。

通常は時間と共に冷静さを取り戻しますが、長時間パニックが続く場合は鎮静剤が投与されることもあります。

 

4.怒りと不当感

ショック状態が収まると徐々に「なぜ自分たちだけが辛い思いをしなければならないのだ」という不当感や、死に至らしめた相手に対する怒りがこみ上げてきます。

大きくなりすぎた負のエネルギーは、加害者だけでなく、時として、加害者の親族、加害者の所属機関、所属機関の監督省庁をも怒りの対象にすることがあります。

 

故人に過失がある場合でも、間接的にかかわった人や組織、注意を怠った故人にまで怒りがぶつけられることもあります。

感情を押し殺すことはストレスになりますが、手当たり次第に怒りを表出しても軋轢を生むだけです。

「何が死の要因なのか」「責任の所在はどこにあるのか」などを振り返り、冷静さを取り戻させることが必要です。

 

5.敵意と恨み

故人の過失や事故、不可抗力である場合でも敵意や恨みは増幅します。

医師は、こういった敵意や恨みの対象となりやすい職業です。

現代の医学は進歩していますが、本人の病状によっては、医師であっても必ず救えるわけではありません。

しかし、冷静な判断力を失った家族は、医師に対して過剰な期待を寄せています。

救われると信じていた命が救われなければ、信頼はたちまち憎悪となり、医師に対して理不尽な怒りがぶつけられてしまうのです。

それを裏付けるように、近年では遺族が医療機関と訴訟を起こすケースが増加しています。

 

6.罪意識

罪意識とは、過去の行いを悔やんで「こんなことになるなら、生きているうちにもっとあれこれしてあげればよかった」と自分を責める感情です。

罪意識は責任感が強い人に起こりやすく、うつ症状や引きこもりなどの要因となるほか、重篤な場合は自殺の危険もあります。

 

7.空想形成・幻想

空想形成・幻想は「故人の分の食事を必ず用意する」「いつ帰ってきてもいいように生前のままに部屋の状態を保つ」など、死を受け入れられず、故人がまだ存在しているかのように振る舞う行動です。

これらの行動は「罪意識を軽減したい」という心理から行われることもあるため、無理に現実と向き合わせることは避けた方が良いでしょう。

 

8.孤独感と抑うつ

葬儀や告別式が終わって日常に戻ると、途端に寂しさがこみ上げ、深い悲しみに苛まれます。

大切な人を失った悲しみ自体は正常な感情ですが、過去を振り返ってばかりでは前進できません。

特に配偶者を亡くした高齢者は、生活環境や年齢などから孤独感が強くなるため、抑うつ状態にならないよう周囲のサポートが必要です。

 

9.精神的混乱とアパシー

「アパシー」とは無気力のことです。

愛する人を失った空虚さから、あらゆることに関心を示さなくなっていきます。

「無気力」「引きこもり」「対人拒否」は、孤立死への危険サインです。

 

10.あきらめ―受容

少しずつ死を受けとめようとする努力が始まります。

「あきらめる」という言葉には「物事を明らかにする」という意味も含まれています。

「死」というつらい現実をあきらかにすることで今の自分が置かれた状況を受容し、悲しみを乗り越えていこうとする努力を始める段階です。

 

11.新しい希望―ユーモアと笑いの再発見

人生には辛いこと、苦しいこと、悲しいことなどがたくさんあります。

それらをひとつずつ鮮明に覚えていては、心が壊れてしまいます。

忘却は、苦しみを和らげるためのセーフティ装置です。

悲しみを忘れるからといって、故人への想いが薄れるわけではありません。

楽しかったことや嬉しかった思い出はしっかりと残っています。

笑顔でユーモアを交えて故人の話ができたとき、はじめて悲嘆のプロセスをうまく乗り切ったといえるでしょう。

 

12.立ち直りの段階―新しいアイデンティティの誕生

悲嘆のプロセスを乗り切ると、立ち直りの段階を迎えます。

これから始まるのは過去の続きではなく、新しい未来です。

愛する人を失う前の段階に戻ることはありません。死別の苦しみを乗り越えて新たなアイデンティティを獲得したことで、成長し、新たな人生に向けて歩み始めます。

 

悲嘆のプロセスは以上のように12の段階をたどりますが、必ずしも先ほどの順序どおりに進むとは限りません。

人によっては、いくつもの段階を飛ばしたり、まだ前の段階に戻って同じ状態を何度も繰り返したりなど、死を乗り越えるまでのプロセスは個人差があるということを知っておきましょう。

 

グリーフケアの方法

次に、周囲の方ができるグリーフケアの方法をいくつかご紹介します。

 

思いを吐き出す

大切な人を失った悲しみを癒すためには、感情を吐き出すことが効果的だとされています。

ですので、故人との生前の思い出を語り合ったり、死の前後の話を聞いたりするのもグリーフケアの方法のひとつです。

人によっては何度も同じ話を繰り返す場合もありますが、指摘せず、静かに聞くようにしましょう。

楽しい話だけでなく、後悔や不安、怒りなど、素直な感情をありのままに吐き出してもらうのも、グリーフケアとして有効です。

 

お別れの儀式を利用する

葬儀や告別式といったお別れの儀式を行うこともグリーフケアであるといえます。

こういった場は、泣き叫んだり、怒ったりなど悲しみの感情が吐き出しやすく、現実を受け止めることにもつながります。

 

遺品を整理する

遺品整理もグリーフケアとして有効な方法です。

遺品の片づけを通して、故人との思い出を振り返って自分の気持ちに向き合い、悲しみを乗り越えるきっかけになります。

ただ、故人の形見の品を片付ける作業は、遺族にとって辛いものです。

気持ちの整理がついていない状態で無理に「そろそろ遺品整理をしたら」とすすめるのではなく、遺族が“やろう”と思ったタイミングを見計らって少しずつ始めるのがよいでしょう。

 

ただし、相続の手続き期限があったり、賃貸で早急に退去を迫られていたりなどの事情があり、どうしても遺品整理を行わないといけないケースもあります。

そういった場合は、遺品整理の専門会社への相談を検討してみるのもひとつの案です。

 

ワンズライフのこちらの記事では「遺品整理をしないといけないが、悲しみを乗り越えられない」という遺族の複雑な感情や、グリーフケアとの関係を、サポートを受ける人の目線で詳しく説明しています。

 

【関連記事】「遺品整理がつらい、できない…」を乗り越える方法とは?グリーフケアとの関係

 

グリーフケアを行う上で大切なこと

グリーフケアの基本は「遺族の気持ちにさりげなく寄り添うこと」です。

しかし、人によって“寄り添う”の考え方は違うため、自分の行動や掛けた言葉が、かえって相手を傷つけてしまうこともあります。

では、グリーフ(悲嘆)で苦しむ人に対してサポートを行う場合、どのようなことに気を付ければ良いのでしょうか?

 

励ましの言葉や安易なアドバイスはNG

愛する人を亡くし、悲しみに暮れている方に対して「頑張って」「元気を出して」と励ましの言葉を掛けることで「早く立ち直らないといけない」とプレッシャーになってしまうことがあります。

 

また、経験談にもとづいて「〇〇した方が前向きになれるよ」「もっとこうした方がいいよ」など、安易にアドバイスをするのもよくありません。

遺族にとっては提案でなく押し付けになってしまいます。

 

死別の悲しみを乗り越えるためには、十分に悲しみ、死に向き合うことが必要です。

何と言えば良いかわからないときは、無理に言葉を掛けず、静かに寄り添うことも大切だといえるでしょう。

 

悲しみを肯定すること

自己表現が苦手な人は、悲しみを感じても表に出さず、無理に明るく振る舞う場合があります。

ただ、何も言わないからと言って立ち直ったわけではありません。

そういった人には「悲しみを感じることは当たり前のこと」だと肯定し、素直な気持ちを吐き出しやすい環境づくりが大切です。

 

まとめ

人の命には限りがあります。

亡くなった直前にそれを受け入れられなくても、必ず受け入れなくてはならない日が訪れます。

大切な人を失ってグリーフ反応が起こることは正常なことであり、とことん悲しむことは新しい一歩を踏み出すために必要な作業です。

ただ、深い悲しみから立ち直るには、数多くのプロセスと長い時間を要します。

 

グリーフが引き起こす反応は個人差がありますので、一見元気そうに見えても、深い絶望感に苦しんでいることや、自己表現ができず、心の中で悲しみを抱え込んでいることもあります。

また、悲嘆のプロセスの過程も人それぞれですので、1年で乗り越えられる人もいれば、何年もかけて次の段階に進む人もいます。

グリーフケアを行う人は、このような遺族の複雑な感情の変化を理解し、気持ちに寄り添い、継続的にサポートしていく心構えが重要です。

 

今回グリーフケアの方法のひとつとして、遺品整理をご紹介しました。

人によっては事情があって、心の傷が癒えないうちに遺品整理をしないといけないこともあります。

そのようなときは、プロに手伝ってもらい、第三者を交えながら整理していく方法を提案されてみるのもよいでしょう。

 

遺品整理のワンズライフでは、スタッフ全員がグリーフケアを大切にして業務に取り組んでいます。

遺品整理は、単なるモノの片づけではなく、整理を通して故人を悼み、死を受け入れていく作業です。

ワンズライフでは、遺品整理を故人の「生きた証」と「想い出」に寄り添う作業と定義し、ご依頼者様の心に寄り添う対応を行っています。

 

※本コラムで紹介した死生学の権威アルフォンス・デーケン氏が、9月6日肺炎のためご逝去されました。(NHKニュース

大切な人との死別を乗り越えるグリーフケアの普及に取り組んだアルフォンス・デーケン氏のご逝去の報に接し、謹んで哀悼の意を表します。

 

この記事を書いた人
吉田 匡和
社会福祉士・介護支援専門員・社会福祉主事・福祉住環境コーディネーター。 一般企業を経て、介護業界に転職。老人保健施設、特別養護老人ホーム、デイサービスなどの相談援助業務・管理職を務める。 社会福祉士・介護福祉士養成校の教員を経て、フリーライターに転向。 個人事業所「Bule Orca【ブーレオルカ】」を立ち上げ、介護業界のほか、飲食、旅行などさまざまな分野で執筆を行っている。
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