遺品整理・生前整理の現場から~独立した子供部屋の整理
皆さんは「生前整理」と言う言葉をご存知でしょうか?
生前整理とは、自分の死後に残された家族が片付けや相続で苦労しないよう、自分や家族の財産等を元気なうちに整理することです。高齢化や核家族化に伴い単身の高齢者が増える中、生前に物や気持ちを整理したいというご依頼が多くなり、生前整理の需要が高まっています。
今回は、生前整理の現場から、独立した子供部屋の整理事例をご紹介します。
生前整理の必要性や片付けを進めるうえで大切なことについても触れていますので、今後の参考にしていただければ幸いです。
【事例】 子供部屋の生前整理
ますます進む高齢化や核家族化に伴い、孤独死や孤立死といった言葉もテレビ・新聞で取り上げられるようになった現代。
孤独死が増えているということは単身の高齢者が増え続けているということであり、体が動くうちに身の回りの整理をしておきたいと考える方も少なくありません。
今回ご紹介する生前整理の事例は、ご実家を出て行かれてからそのままにしている子供部屋の整理をしてほしいというもの。
今までのご依頼はほとんどが高齢者の方またはそのご家族からでしたが、今回のご依頼者様は40代の方です。いつもとは少し違った気持ちで生前整理の作業をさせていただきました。
子供部屋はご依頼者様が実家を出て行かれたそのままの状態でした。
当日の立ち合いにはご依頼者様のお母様もいらっしゃり、幼少期に遊ばれていたであろうゲームやおもちゃを涙ぐまれながら見ていらっしゃいました。
ご依頼者様がご実家を出てからも子供部屋には一切手を付けていなかったくらいなので、お子様が出て行かれてとても寂しかったのでしょう。
作業開始から終了まで、ご依頼者様とお母様がお二人で物を一つ一つ確認しながら懐かしんでおられる姿が印象的でした。
今回は生前整理でご依頼をいただきましたが、どちらかというと思い出の整理をさせていただいた気がします。
長らくそのままにしていた子供部屋を整理することになったのは、いい意味で子離れする決意をされたのだなと感じました。
生前整理の必要性
故人の遺品を家族が片付ける遺品整理とは違い、生前整理は本人が元気なうちに物や財産をあらかじめ整理しておく作業です。
生前整理は片付ける意思があれば年齢にかかわらずいつでも始められるため、作業を急ぐことなく昔の思い出を懐かしみながら自分のペースで進めていけます。
ここでは、生前整理を行う必要性をご紹介します。
自分の老後への備え
日本は超高齢社会といわれていますが、「寿命」と「心身ともに健康を保てる年齢」は別物です。
人は年齢を重ねると体や脳が老化し、思うように体が動かせなくなったり、判断能力が衰えたりします。
身の回りの生活用品を片付けるには体力がいりますし、財産を整理するには判断能力が必要です。
体や脳の老化が進む前に、少しでも早いうちに物や財産を整理しておくことは、自分自身の老後の備えになります。
今回ご紹介した事例のように、当事者が思い出を振り返りながら作業を進められるのも、本人が健在のうちに片付けを始める生前整理ならではです。
家族にかかる負担の軽減
生前整理を行い不要な物を処分したり必要な物の行き先を明確にしたりすることで、自分の死後に家族にかかる負担を軽減できます。
亡くなった方が生前整理をしていなかった場合、その方の身の回り品の片付けは残された家族や身内が行うことになります。
いくら家族とはいえ、一緒に住んでいなければどこに何があるのか分からなかったり、本当に処分してもいいのか判断に悩んでしまったりするもの。
さらに、相続における故人の意思が不明確な場合、遺族間でトラブルに発展するおそれもあります。
生前整理は、残された家族に負担をかけないための思いやりの作業でもあるのです。
生前整理を進めるうえで大切なこと
生前整理を進めていくうえでは、捨てる物と残す物の判断基準を家族間で共有しておくことが大切です。
「いる」「いらない」の判断は人によって異なるもので、子供にとっては不要でも、親にとっては思い出深く必要な物かもしれません。
家族といえども、自分の意思を確認せずに次から次に物を処分されてしまうのは、決して気持ちの良いものではないでしょう。
この辺りのコミュニケーションがうまく取れていない場合、親子間に亀裂が生じてしまう可能性があります。
生前整理は本人が健在のうちに行う作業のため、何が必要で何が不要か本人の意思を大切にしながら進められるメリットがあります。
家族でよく話し合い、互いの気持ちを共有しながら進めていくことが大切です。
まとめ
今回は、独立した子供部屋の生前整理の事例をご紹介しました。
心身ともに元気なうちに始める生前整理は、親子で昔の思い出を懐かしみながら作業を進められ、物の片付けのみならず「思い出の整理」にもなります。
大切なのは「捨てる」「残す」の基準を家族間で共有し、互いにコミュニケーションを取りながら進めていくことです。
自分自身の老後のために、そして大切な家族のために。少しずつ生前整理に取り組み始めてはいかがでしょうか。
おすすめ記事