2023.09.13
2024年4月の相続登記申請義務化と罰則を解説
2024年4月1日より改正不動産登記法が施行されます。
これまでは相続登記申請の法的な義務がなかったために、土地の所有者が分からなくなってしまう「所有者不明土地」が問題視されていました。
今回の法改正では相続登記の申請義務化を定めており、正当な理由なく申請を怠った場合には過料が科される可能性があります。
今回は、改正不動産登記法に基づく相続登記の申請義務化についてわかりやすく解説します。
現段階(2023年6月時点)では義務となっていないものの、2024年4月からの施行に向けて理解を深めておきましょう。
相続登記の申請義務化〜2024年4月1日より開始
相続登記の申請義務化が始まる背景には、相続登記がされないことで発生する「所有者不明土地」の存在があります。
所有者不明土地とは、不動産登記簿により所有者をすぐに判明できない土地、所有者が判明してもその所在が分からない土地のことです。
法務省民事局の資料によると、所有者不明土地の割合は24%に及ぶといいます。
この所有者不明土地が発生する主な要因となっているのが「相続登記の未了」です。
現状、相続登記の申請は義務化されておらず、申請していなくても所有者に対し不利益が生じることはほとんどありません。
しかし、相続登記されていない土地の所有者を探すには多くの時間と費用がかかること、所有者が分からない土地は放置されるケースが多いことなどさまざまな問題点がありました。
相続登記の申請義務化は、このような背景のもとで新たに設けられた制度です。
2024年4月1日より、不動産を取得した相続人は「その取得を知った日から3年以内」に相続登記の申請を行う必要があります。
注意点として、施行日(2024年4月1日)以前に相続が発生していた場合も、相続人に対して登記の申請義務が課されます。
ただし、このケースにおいては経過措置が適用し、相続登記申請義務の履行期間が施行前から始まらないよう配慮されています。
つまり、相続による所有権の取得を知った日が施行日より前であったとしても、申請義務の履行期間は「施行日から3年間」となります。
相続登記義務化に関する罰則は?
これまでは相続登記の申請が義務付けられておらず、当然ながら申請していないことに対する罰則もありませんでした。
しかし、今回の改正不動産登記法によって相続登記の申請義務化が定められたことにより、正当な理由がないにもかかわらず登記申請義務に違反した場合は、10万円以下の過料(※1)の適用対象となります。
(※1)法令違反に対する制裁として科される「行政上の秩序罰」のこと。過料事件があった場合は裁判所に通知され、要件に該当するか否かを裁判所が判断する。
ただし、申請義務違反があることを把握していても、ただちに裁判所へ過料通知を行うことはないとされています。
まずは申請義務のある相続人に対して義務の履行を催告し、その時点で催告に応じて申請を行うのであれば過料が科されることはありません。
催告があっても正当な理由なく申請を行わなかった場合に限り、過料事件として裁判所に通知されることになります。
なお、ここで言う「正当な理由」の一例は以下のとおりです。
•相続人が極めて多く、他の相続人の把握や戸籍関係書類の収集に時間がかかる場合
•遺言の有効性が争われている場合
•相続人が重病である場合
•相続人がDV被害者である場合
•経済的に困窮している場合
参考:法務省民事局『令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント』
「相続人申告登記」が新たに創設
改正不動産登記法では、新たに「相続人申告登記」という制度が設けられました。
相続登記の申請義務化に伴い、相続人が負う申請義務の手続き的な負担を軽減することを目的としています。
相続人申告登記とは、申請義務の履行期間内(3年以内)に以下の2点を法務局に申し出ることにより、申請義務を履行したとみなす制度です。
- 所有権の登記名義人について相続が開始したこと
- 自らがその相続人であること
この手続きでは法定相続人の範囲と法定相続分の割合を確定する必要がなく、簡易な手続きで申請義務を履行できます。
複数の相続人がいる場合も、特定の相続人による単独での申出、もしくは他の相続人も含めた代理申出が可能となります。
相続人申告登記を行うと、登記簿には申出をした相続人の氏名・住所が記載され、過料の支払い義務を免れます。
ただし、申請義務を履行したとみなされるのはあくまで申出をした相続人のみである点に注意が必要です(代理申出は可能)。
まとめ
2024年4月施行の改正不動産登記法に伴い、不動産を取得した相続人に対し相続登記の申請が義務付けられました。
履行期間は「その取得を知った日から3年以内」とされていますが、施行日より前に相続が発生したケースにおいても義務化の対象となり、その場合は「施行日(2024年4月1日)から3年間」を履行期間としています。
正当な理由なく手続きを行わなかった場合は過料の対象となるため、なるべく早めに対応することをおすすめします。
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