2023.09.29
エンディングノートと遺言書の違い~トラブルにならないために
終活の一環として、エンディングノートや遺言書の作成を考えている方もいるでしょう。
自分の思いや希望を文書で残しておくと、残された家族は迷うことなく遺品の整理や手続きを進めることができます。
しかし、エンディングノートと遺言書には明確な違いがあるため、作成する際には両者の違いをよく理解しておく必要があります。
今回は、エンディングノートと遺言書は具体的にどのような違いがあるのか、トラブルを防ぐためにも知っておきたい終活の基礎知識をご紹介します。
エンディングノートに法的効力はない
エンディングノートとは、人生の終わりに備えて自分自身の情報や希望などを書き留めておくノートです。
エンディングノートの形式に規定はなく、記す内容も本人が自由に決めることができます。
自筆である必要もないため、パソコンやスマートフォンなどで作成しても問題ありません。
一般的にエンディングノートに記す内容には以下のようなものがあります。
・もしもの時の連絡先
・預貯金や不動産など財産に関する情報
・医療や介護に関する希望
・葬儀やお墓に関する希望
・遺言書の有無
・これまでの人生の振り返り
・家族や友人に伝えたいメッセージ
これらの内容を書き留めておくことにより、自分の人生を振り返ったり、残された家族の負担を減らしたりすることができます。
ただし、エンディングノートに法的効力はありません。
たとえば遺産相続に関する希望をエンディングノートに記したとしても、法的な強制力がないために自分が希望したとおりになるとは限らないのです。
エンディングノートに記す内容はあくまで自分の希望であり、「こうしてほしい」とお願いすることはできても、そこに強制力はない点に注意しなければなりません。
それでは、強制力をもって財産や相続における意思を実行してもらうためにはどうすればよいのでしょうか。
この場合、法的な書類である遺言書を作成しておけば、法的効力のもとで自分の意思に従ってもらうことができます。
つまり、エンディングノートと遺言書の違いは「法的効力の有無」にあるのです。
遺言書が持つ3つの法的効力
遺言書とは、財産を所有する人が相続に関する自分の意思を示した書類です。
法的効力を持つ遺言書により、自分の財産をどう分けるのか明確に示しておくことで、自分が亡くなった後も意に沿う形で相続を実行してもらえます。
遺言書には主に以下の3つの法的効力があります。
①相続分と遺産分割方法の指定
②推定相続人の廃除
③遺言執行者の指定
簡単に言うと、遺言書により「①誰に何をどのくらい相続させるのか」「②誰に財産を渡さないのか」「③誰に遺言書の内容を執行してもらうのか」を指定することができます。
遺言書がなければ相続人同士での話し合いが必要となり、場合によっては収集がつかなくなることも考えられます。
遺言書を残しておけば自分の意思が尊重されるのはもちろん、身内の相続争いを防ぐことにもつながるのです。
ただし、被相続人と近しい関係にある兄弟姉妹以外の法定相続人に関しては、一定の遺産を取得できる権利があります。
この「最低限保証されている遺産取得分」のことを「遺留分」といい、遺言を作成する際には遺留分への配慮が必要となります。
トラブルを防ぐために注意すべきこと
先述のとおり、エンディングノートと遺言書には「法的効力を持つか否か」という点で違いがあります。
エンディングノートにも自分の財産に関する内容を記載できますが、それだけでは法的な強制力を持たせることはできません。
遺産相続に関して自分の意思を示し、その内容に従ってもらうためには、エンディングノートとは別に遺言書を書いておく必要があります。
ただし、遺言書の形式は民法で規定されており、それに従って作成しなければ法的な効力を持ちません。
遺言書の作成にあたっては、以下の要件をすべて満たす必要があります(自筆で作成する場合)。
①遺言書の全文・作成日付・氏名を遺言者が自筆し、これに押印すること
②財産目録のすべてのページに署名・押印すること
③変更がある場合はその箇所を指示し、変更した旨を付記して署名・押印すること
これらの規定が守られていなければ、遺言書の内容が法的効力を持たず、遺言者の意思に沿った形で相続が実行されない可能性があります。
確実に有効となる遺言を残しておけるよう、実際に遺言書を作成する際は弁護士などの専門家に相談するとよいでしょう。
まとめ
エンディングノートと遺言書は、法的な強制力を持つか否かという点で明確な違いがあり、これらの違いを理解することが相続人間のトラブルを防ぐことにつながります。
特に遺言書は法律の規定に従って作成しなければ効力を持たないため、弁護士に相談しながら進めていくことをおすすめします。
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