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2017.05.09 (2022.03.11 One's Ending編集部 加筆)

40代・50代でやるべき老前整理とは?メリットと成功のコツ

「終活」や「遺品整理」という言葉は、広く認知されています。親世代の遺品整理に苦労して、「自分は元気なうちに『生前整理』をしておこう」と考える方も増えました。
そういったなかで、生前整理よりもっと早い年代で行う「老前整理」が注目を集めているのをご存じでしょうか?
老前整理とは、「株式会社くらしかる」の代表・坂岡洋子さんが提唱した言葉です。
「家族のためではなく自分のために」「老後を安全で快適に過ごす」という考えから生まれました。
そこで、今回は「40代・50代でやるべき老前整理」について解説します。
メリットや成功のコツもご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。


老前整理とは

老前整理と聞いても、イメージが湧かないという方もいらっしゃるでしょう。
そこで、よく聞く生前整理と老前整理の違いについて解説します。

 

老前整理が誕生した理由

「老前整理」の提唱者である坂岡洋子さんは、長年インテリアコーディネーターとして活躍された方です。
彼女は在宅介護の現場を多く見て、高齢者の自宅には物が多すぎることに気付きました。
物が多すぎると片付けも大変ですし、つまずいて転倒したり災害時に逃げ遅れたりなどというリスクもあります。
そこで、老いる前に自分自身で身辺の整理を行い、身軽で快適な生活ができるように整えることをすすめました。

 

生前整理との違い

老前整理と似ている言葉に「生前整理」があります。
生前整理も元気なうちに身辺を片付けることを指しますが、実は片付けの目的が違います。

 

生前整理では、生きているうちに「自分の死後」について考えて身辺を整理することです。
主に以下のことを行います。

 

・所有している財産(現金・預金・株式・公債・不動産など)を目録に残す
・使用している銀行や証券会社、カード類をなるべくまとめてわかりやすくする
・エンディングノートや遺言書を作成する
・自分の死後、残された所有物(時計・宝飾品・カメラ・趣味のグッズなど)の譲り先や処分方法などを考える

 

自分にもしものことがあったとき、残された家族は相続の手続きをする必要があります。
自身の財産をすべてわかりやすく整理して、無用なトラブルが起きないように、事前に対処するのが生前整理といえます。

 

生前整理についてはこちらの記事を参考にしてください。

 

生前整理でやることとは?リストを使った進め方のポイント
生前整理はいつから始める?始める時期・タイミングと進め方を解説

 

一方の老前整理は、これまでの人生を整理することで、「自分の未来」を過ごしやすくするための片付けです。
生前整理とは異なり、財産よりも持ち物を片付けることに主軸が置かれます。
40代・50代といっても、急な病気やケガで入院する可能性はあるでしょう。
持ち物を片付けておくと、いざというときに必要なものをすぐに取り出せて、家族の負担を減らせます。

 

老前整理のメリット

「老前整理」を40代・50代で行うメリットとして、次の3つが挙げられます。1つずつ解説しましょう。

 

メリット1:体力があるうちに頭の中を整理できて、セカンドライフに備えらえる

40代・50代というと子育てに仕事に多忙な方が大半で、老前整理まで手が回らないと思われるでしょう。
「時間に余裕ができたら始めよう」と先延ばしにしがちですが、時間が経てば経つほど人生で蓄積した物は増えていき、どこに何を置いたのかを忘れる傾向にあります。
また、老前整理には体力も必要なので、元気なときに行うのがおすすめです。

 

若いうちに老前整理を行うと、物との付き合い方や人生の考え方が変わります。
実はもっと若い20代・30代の間では、最小限の持ち物で暮らす「ミニマリスト」が流行っています。
不動産情報サービスのアットホーム株式会社が一人暮らし中の20代男女を対象に行ったアンケート(※)では、自分がミニマリストだと思っている方は24.4%いました。

また、ミニマリストになりたいと考えている方は38.9%という結果です。
若い世代でも約4割に老前整理と同様の考えが普及しているといえます。

 

人間は目に入る情報が多いと、集中力がなくなるといわれています。
家の中の物を減らすと、頭が冴える感覚になるのはこのためです。
適正な量の物を身の回りに置くと、自分で管理可能になります。大袈裟に感じるかもしれませんが、自分の価値観や人生の方向性を整理できて、時間的余裕のあるセカンドライフに備えられるのです。

たとえば、いずれ再開しようと思いながら押入れに入れっぱなしだった趣味のグッズ。
出してみるとすでに興味が薄れている可能性があります。
反対に、買ったまま積んでいた本を読んでみたら、とても役立つということもあるでしょう。
早いうちに取捨選択すれば、今後の人生を豊かにできるはずです。

 

※出典:アットホーム株式会社「“一人暮らしの社会人が幸せに暮らすために必要な住まいの条件”調査2020」
https://athome-inc.jp/news/data/questionnaire/sumai-hitorigurashi-202006/

 

メリット2:老後、安全に安心して暮らすことができる

部屋がすっきりとした空間になると、家の中での移動もスムーズになります。
今は実感がないかもしれませんが、年齢を重ねると家の中が歩きやすいというのは大きなメリットです。
消費者庁の発表(※)によると、高齢者の転倒事故の約半数が自宅で起きています。
浴室で滑ったり廊下の小さな段差につまずいたりと、若い頃には考えられない理由で転んでしまうのです。
しかも、自宅で転倒した高齢者の8割は通院や入院が必要になります。脚を骨折すると、そのまま寝たきりになる可能性もゼロではありません。

 

不用品を片付けて移動を妨げるものがなくなれば、安全に暮らせるようになります。
また、毎日の掃除も物が少ないほうが楽です。
将来的に車いすの生活になった場合には、歩くよりも移動するためのスペースが必要になります。
普段から家を整理しておけば、いざというときに慌てずに済むでしょう。

 

※出典:消費者庁「10(てん)月10(とう)日は『転倒予防の日』、高齢者の転倒事故に注意しましょう」https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_040/assets/consumer_safety_cms204_201008_01.pdf

 

メリット3:金銭的な余裕も生まれる

意外に思われるかもしれませんが、身辺が片付くと無駄が省けて金銭的な余裕が生まれます。
たとえば、はさみや爪切りを使おうと思ったときになかなか見つからなくて、追加で購入したという経験はありませんか?
物を減らして自分が把握可能になれば、無駄なアイテムを購入しなくなります。
食品や衣類なども、所有している物を可視化すると上手に使えるはずです。
今までないと思って購入していたものを買わなくて済むようになります。

 

老前整理を実際に行った方の声

興味を持ち始めたけれど、老前整理経験者が身近にいないという方も多いでしょう。
そこで、今回老前整理を実際に行った方の声を集めてみました。老前整理を行うきっかけや始め方など参考にしてください。

 

・東京都在住、30代男性
私はグループホームで暮らす高齢者の方々の介護を仕事にしています。認知症になった高齢者の方々と毎日のように接していると、言葉の端々になにか後悔といいますか、悔いのような発言や様子が見受けられるときがあります。老前整理とは直接的に結び付くものではありませんが、ふと、「この方たちはここに来る前に自宅にあるいろいろなものを整理することができたのだろうか」と思ったのです。私は自宅にあった、読むことはないであろう大量の本や聴かなくなったCDなどを手始めに処分しました。いつ何が自分に起こるかは誰にもわかりませんから、徐々に片付けていこうと考えています。

 

・40代女性
老前整理を行ったきっかけは、親友の両親が亡くなったことです。親友の両親は年会費のかかるクレジットカードをいくつか所有していたのですが、どれくらいの枚数を持っていたのか、またどれくらい使っていたのかがまったくわからず……。解約しようにも、手がかりがなくとても大変だったと聞きました。だから、自分のときも家族が困らないように、ノートに使っているものや所有しているものは、終活のためにも残しておくべきだと思いました。

 

・奈良県在住、30代女性
私が老前整理を考えるようになったきっかけは、ある終活セミナーに参加したことでした。終活とはお年寄りだけのものではなく、すべての年代の人が人生の終わりを見つめて今をいきいき生きるためにあると習い、老前整理をしようと決意しました。本当は還暦すぎた母にこそしてほしかったのですが、まずは自分がすることで、老前整理のよさをアピールしようと考えました。まずはエンディングノートを書き、自分の理想の老いや価値観について知りました。それに基づき、幼児期から学生時代の名簿や思い出の品を始め、使わない服や見ない本も、次々と断捨離。家具や家電も最低限にして広い空間を手に入れました。これを見た母も終活に興味を持ったようです。

 

・大阪府在住、女性
子供たちも成人し、第2の人生のスタートとして老前整理をしようと思いました。とりあえず持ち物の見直しです。これからの人生で何が必要か何を大切にしていくかをもとに整理をしました。その結果、毎日の生活がとても楽になりました。迷いも少なくなり、思い立ったらすぐ旅にでも出られそうな気分です。さらに墓じまいもしました。永代供養にしてもらうように伝えています。将来必ず誰にでも訪れる事柄をスムーズに行えるようにしておくことは、今の生活を精神的にゆっくりできる気がします。

 

・鹿児島県在住、50代女性
私が老前整理を行った理由は、まだ自分が元気に動けるうちに、且つ、部屋の掃除をして足や腰が悪くなり動けなくなる前に、整理をして老後に備えたいと思ったからです。私は結構昔から物を溜め込むタイプでしたので、最初はいるもの、いらないものを分けて、いらないものは捨てました。まだ使えそうなものは、仲のよい友人に譲りました。自分ができることはして、子どもたちに迷惑のかからないようにしています。

 

老前整理のやり方

老前整理には多くのメリットがありますが、具体的な手順がわからないという方もいらっしゃるでしょう。
基本的には、部屋の片付けと同じですので、ライフスタイルに合わせて自分にぴったりのやり方で進めるのがおすすめです。
整理整頓アドバイザーなど専門家関連の書籍やサイトを参考にするのもよいでしょう。
ここでは、とくにおすすめの手順をご紹介いたします。

 

 

1.「使う物」と「使わない物」に分ける

 

まずは家の中にあるさまざまなものを「使う物」と「使わない物」に分けるところから始めましょう。
分類していくなかで、次の4種類が出てくるはずです。

 

・今も使っていて今後も使う物
・今は使っていないけれど、次のシーズンに使う物
・今も使っておらず今後も使わない物
・いつか使うと思われる物

 

この場合、最後の「いつか使うと思われる物」は判断に迷います。
「いつか」がはっきりとした期日であれば、そのまま残しておいても構いません。
ただし、使う日がはっきりしないなら、思いきって使わない物に入れましょう。

ここで大事なのは「使える」と「使う」は違うということです。
使えても使わなければ意味がありません。
物を主体にはせず、自分主体で考えてみましょう。

 

2.「使わない物」を「処分する物」と「残す物」に分ける

 

「使わない物」に分類されたものをさらに整理して、「処分する物」と「残す物」に分けます。
この段階での残す物は、もう当分の間使う予定はないけれど、数年の間に使う可能性があるもの。具体的には、礼服や訪問着などが該当します。
それ以外は、現在使っておらず数年後にも使う可能性が低いので、処分する物に該当するでしょう。

 

3.判断に悩む場合は「保留ボックス」に入れる

残す物と処分する物に分けるとき、数年後に使うかどうか判断に悩むケースも出てくるでしょう。
判断に長時間悩むと片付けが進まなくなるため、迷ったときは「保留ボックス」を作ってとりあえず入れておきます。

 

保留ボックスを作るときは、再度検討する日付を書いておくのがポイントです。
記入した日付になったら、保留ボックスに入っている物を取り出して、処分する物と残す物に分けてみましょう。
このときは、保留ボックスなしでどちらかに分類します。

 

4.「処分する物」を手放す

最後に「処分する物」を実際に手放します。
手放すといっても、すべてゴミに捨てるわけではありません。
買取や寄付、知人に譲るなど、物を活かすこともできます。

 

本や古着などはまとめて買い取ってもらうのがおすすめです。
大量にある場合は、出張買取を行ってくれる業者に依頼すると、手間がかからず済みます。
人気の商品やブランド品などは、想像以上の高値で買い取ってもらえるかもしれません。

 

地域のバザーやフリーマーケットに出すというのも1つの選択肢です。
フリマアプリやネットオークションなどを使うと、リサイクルショップに買い取ってもらうよりも高値が付く可能性もあります。
出品や発送に手間がかかりますので、操作が面倒ではない方におすすめです。

 

家電や家具などは、市町村によって処分方法が違います。
とくに、エアコン・洗濯機・冷蔵庫・テレビの家電4品目は、「家電リサイクル法」によって指定された方法での処分が義務付けられています。(※)
自治体のゴミ出しルールを確認してから処分するようにしましょう。

 

※出典:経済産業省「家電4品目の『正しい処分』早わかり!家電リサイクル法」
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/kaden_recycle/fukyu_special/

 

前整理を成功させる4つのポイント

老前整理成功のポイントは4つあります。
片付けを継続できないという方はぜひ参考にしてみてください。

 

大きい物から処分する

老前整理をするときは、大きな物から処分しましょう。
たとえば、存在感のある家具や家電。大きな物を処分するとスペースが生まれます。
何もない空間が生まれると達成感が出て、片付けをもっと進めようと思えてきます。

 

反対に、細々した物から始めると、時間はかかるのに達成感を得られずに飽きてしまうかもしれません。
長く続けるためには、「大きな物から処分」が鉄則です。

 

少しずつ時間をかけて

老前整理は遺品整理と異なり終わらせる期限がありません。
一気にやろうとすると負担が大きく途中で嫌になってしまうので、ゆっくりと自分のペースで進めましょう。

 

たとえば、1日15分間と時間を決めて取り組んだり、1日2つは不要品を捨てるなどルールを設けたりすると、コツコツ続けやすくなります。

 

片付ける物が多い状況に困っている場合には、遺品整理業者などのサービスを活用するのもおすすめです。
遺品整理士認定協会のホームページに掲載されている「優良企業一覧」(※)を参考に探すと、信頼できる業者を見つけられます。
まずは、電話やメールで問い合わせして、費用やサービス内容を確認したり見積もりを依頼したりしてみましょう。

 

※出典:一般社団法人遺品整理士認定協会「優良企業一覧」
https://www.is-mind.org/company.html

 

物に対する意識を変える

老前整理を始めると、家の中に使っていない物がたくさんあることに気付きます。
同じ物がいくつも出てきたり、大事に取っておいたはずなのに存在を忘れていたりということもあるでしょう。
「なぜ捨てずに取っておいたのだろう?」と、不思議に思うかもしれません。

 

「そのうち使うかもしれない」という意識を変えることが、老前整理成功への近道です。
もし、「もったいない」と思って捨てられない物があるなら、今日から使ってみませんか?
高級食器や高価なアクセサリーも、普段使いすると生活の質が高まります。
大切な物だからしまっておくのではなく、大事に使っていくように考え方を変えてみましょう。

 

また、物を捨てても思い出や愛情は消えないということも覚えておきたいポイントです。
故人からの贈り物や子どもの作品などは、古かったり壊れていたりしても処分しにくいかもしれません。
気になる場合には、撮影して写真を残しておくこともできます。
捨てても不義理ではないし、今までの愛情や思い出は残り続けます。
捨てたくない理由をはっきり言えない場合、意外と処分すると爽快な気持ちになるかもしれません。

 

リバウンドを防ぐ

老前整理を行ったあと、きれいな状態を維持するのは難しいことです。
空いたスペースにまた物が増えてしまえば本末転倒ですよね。
物に対する意識を変えて、定期的に見直しましょう。

 

リバウンドを防ぐために気をつけたいのは、次の2点です。

 

・7~8分目程度の収納を目指し、詰め込みすぎない
・物を購入する際は「本当に必要なのか」「持っている物で代用できないか」を見極める

 

収納スペースに物を詰め込みすぎると、何がどこにあるのかを把握できず必要のない物を買いやすくなってしまいます。
可視化できる量の収納を心掛けましょう。

 

そして、新しく物を買うときは、本当に必要なのかを落ち着いて考えてみることが大切です。
安いとかお得という理由で購入すると、買ったことに満足して使わなくなることもあります。

 

まとめ

老前整理とは、単に不要な物を処分することではありません。
自分が溜め込んできた物と向き合ったり整理したりしながら、今後の人生をどのように生きるのかを考えることなのです。

 

たくさんの物に囲まれていたほうが安心するという方もいらっしゃるでしょう。
これまでの人生で溜め込んだ大量の物や価値観と向き合うのは簡単ではありませんが、作業が終わったあとには心も体も軽く、爽やかな気持ちになるはずです。
日常的な片付けや掃除が楽になって、家事の時間を短縮できるというメリットもあります。

 

これからの人生をより有意義に快適に過ごすため、今から少しずつ物を減らした生活を始めてみませんか。

この記事を書いた人
One's Ending編集部
関東の遺品整理専門会社(株)ワンズライフのメディア編集部です。 遺品整理、生前整理、空家整理に関することから、終活、相続税に関することまで。人生のエンディングにまつわる、役に立つ情報やメッセージをお届けしていきます。
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