
2017.10.05 (2021.04.22 One's Ending編集部 加筆)
孤独死とは-原因と対策 防止するためにできること-
「孤独死は高齢者の問題だ」そう思ってはいませんか?
実際のところ孤独死は、高齢者にだけ起こることではありません。東京23区内においては、20代から30代の若い世代や、40代、50代といった、いわゆる働き盛りの世代の方にも孤独死が起こっています。
以前にも30代の元女優が自宅で孤独死していたことがニュースで報道されしばらく話題となりました。
今後は「孤独死がありふれた死となる」と指摘している専門家もいるほど、現在では深刻な社会問題のひとつとなっています。
今回は、誰からも看取られず一人で亡くなってしまう「孤独死」が増えている原因と防止策について解説します。
孤独死される方の人数は年々増加の一途をたどっており、もしかすると、あなたがその現場に遭遇することもあるかもしれません。
そこでこの記事の後半では、孤独死に遭遇した時にすべき対応や、現場の原状回復についてもご紹介します。
孤独死とは
孤独死には、国として共通した定義はありません。
平成8年に広辞苑で初めて「孤独死」が明記され、そこには「看取る人もなく、一人きりで死ぬこと」と記されています。
一方で孤独死について、警察の死因統計では「変死」として扱われることが多く、行政においては「孤立死」と表現されることが増えてきています。
インターネットで「孤立死」という言葉を検索してみると「社会から孤立した状態で亡くなり、長期間気付かれないこと」(出典:小学館 デジタル大辞泉)と記されており、この2つの言葉について明確な違いは決められていないようです。
この記事の中では、孤独死を「誰にも看取られない状態で息を引き取り、そのまま一定期間発見されなかった状態」と定義した上で、孤独死について深く考えていきたいと思います。
現代の日本において孤独死が増えている背景
今の日本では、孤独死が増えているとされています。
厚生労働省などの国の機関では、孤独死自体の調査をしておらず、2021年時点では全国的な統計データがありません。
ここでは、東京都監察医務院の「東京都23区における孤独死の実態」の調査内容を参考にして話を進めていきます。
この調査によると、令和元年(2019)度において単身世帯の孤独死は5,554件発生しています。
孤独死の発生率は年齢が上がるごとに高くなり、65歳以上の単身高齢者の孤独死の割合は全体の70.4%を占めています。
しかし一方で、20~50代までの現役世代の孤独死も年間1,000件以上起きていることから、年齢や世代に関係なく、誰にでも起こりうる身近な問題であるといえるでしょう。
また、東京都23区内においては、一人暮らし世帯の割合が年々増加していることから、孤独死の発生件数も増加傾向にあるとされています。(※1)
2019年において、年間の死亡者はおおよそ137万人とされているのが現状ですが、このうち孤独死したとされる死者は、65歳以上だけで約3.2万人、50代未満を含めると4万人を超えると推測されています。(※2)
ではなぜ、日本において孤独死が増加しているのでしょうか?
次は、その原因を解説していきます。
単身世帯の増加
ひと昔前の時代までは、サザエさんのように祖父母から孫までの3世帯同居生活が当たり前でした。
しかし現代では、親と子が離れて暮らす核家族や、結婚をせず、さまざまな事情があって家族を持たない単身者が増加傾向にあります。
単身世帯については全世代で増加傾向にありますが、その中でも特に懸念されているのが「65歳以上の高齢者単身世帯が増えている」ということです。
家族を持たない単身者世帯の増加に加え、核家族化が進んだことで、65歳以上で一人暮らしをする人は年々増え続けています。
内閣府の調査によると、平成29年時点での単身世帯者の数は全国で約2,378万世帯、その中で、65歳以上の単身高齢者の人数は約592万人です。
また、この調査では、65歳以上人口の20%以上が一人暮らしをしているということがわかっています。
以前は、たとえ高齢者がひとりで暮らしていても、親戚関係にある家族が定期的に訪問して、健康状態や日々の様子を確認していました。
しかし、近年はそういった親戚づきあいも希薄となりつつあります。
また、友人同士の付き合いも希薄化してきているのが現状です。
平成27年度 「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査結果」によると、日本の高齢者のうち4人に1人は友人がいないとされています。(※3)
単身で暮らし、友人や訪問する家族もなく、社会とのかかわりが遮断されている中、次第に衰弱し、誰にも発見されないまま孤独死してしまう方が増えているのです。
新型コロナウイルスの影響
2020年、新型コロナウイルスの感染症の拡大を避けるため、政府は全国に緊急事態宣言を発令し、不要不急の外出自粛を要請しました。
さまざまな行動が制限されたことで、以前よりも地域や家族との交流の機会が減り、高齢者の様子を日常的に確認することが難しくなっているため、孤独死が増加しやすい状況になっているといえるでしょう。
また、全国の警察が2020年3~12月に取り扱った「変死事案」の中で、新型コロナウイルスに感染していた人は122人いたことがわかっています。
通院や通勤、生活必需品の買い物などは制限されていませんが、新型コロナウイルスの感染を心配して病院に通うことをためらう人も少なくありません。
高齢者や基礎疾患のある人は、新型コロナウイルスの重症化リスクが高いとされています。
必要な通院をためらうことで持病が悪化したり、新型コロナウイルスに感染しても病院に行かず、そのまま病状が急変して自宅で亡くなったりするケースが起きていることも、孤独死の増加を招く要因のひとつであるといえます。
通院自粛による「コロナ孤独死」は現実味を帯びてきており、2021年現在も収束のきざしは見えない状況です。
そういったことからも、感染への配慮を行いながらも、単身者への見守りやコンタクトを取る新たな孤独死対策が求められています。
雇用体制の変化
かつては、一度就職するとそのまま定年まで勤めあげる「終身雇用制度」がほとんどの会社で採用されていて、仮に社員が出社しなかった場合は、すぐに会社の方が自宅を訪問し、無事かどうかを確認するケースがよく見られていました。
しかし現代では、非正規雇用や派遣といった雇用体制で仕事をする人も増え、終身雇用制度はなくなりつつあります。
そのため、企業側も社員一人ひとりに対し、欠勤したからといってすぐに自宅へ確認しにいく手間をかけなくなりました。
その結果、会社勤めで仕事をしていても、周囲の人が知らない間に孤独死に至ったというケースが増加傾向にあります。
亡くなったことに誰も気づくことができず、そのまま放置されてしまい、死後に時間が経過してから遺体で発見される方も多いのが実態です。
また、正規雇用でないためにお金がなく、経済的な問題で生活が困窮して、体調を崩した結果孤独死に至るというケースもあります。
周囲とのコミュニケーションが希薄
以前は複数人で楽しむものという風潮があったカラオケや焼き肉ですが、ニュースや雑誌で「ひとり○○」「おひとりさま」という言葉が取り上げられた影響もあり、最近は「一人カラオケ」「一人焼き肉」もスタンダードになりつつあります。
そのため、一人での生活そのものを楽しもうとする方が増え、以前と比べて他者と積極的にコミュニケーションを取る機会が減りつつあるのです。
一人の生活を楽しめている場合は問題ありません。
しかし、人間は毎日一人の生活に慣れすぎると、徐々に他人とコミュニケーションを取ることが苦痛になります。
また、近年のインターネットの普及により「ネット上でのコミュニケーション」は積極的にとられるようになった一方で「直接顔を合わせてのコミュニケーション」は希薄になってきているのです。
インターネットにアクセスし、SNSやLINEのアカウントにログインをすれば、実際に会わなくても家族や友人と気軽に連絡が取り合えます。
その結果「スマホやパソコンなどを使い、オンラインでコミュニケーションは取っているのに、隣近所には誰が住んでいるかもわからない」という極端なコミュニケーションが取られるようになり、家族にも友人にも発見されず、孤独死に至るというケースも増えているのではないでしょうか。
孤独死を防ぐためには、近所の方とすれ違う際に「おはようございます」や「こんにちは」等、自ら積極的に挨拶するように心掛け、周囲とコミュニケーションを取っていくことも大切です。
孤独死を防ぐ自治体の取り組み
推定年間3万人以上にもおよぶ、孤独死。
孤独死は死亡後、遺体の腐敗によって周辺への衛生管理に問題が発生することも少なくありません。
そのため、日本全国の各自治体では、孤独死を防止するためのさまざまな取り組みを行っています。
次は、その中でも、特に孤独死対策に力を入れている自治体の取り組みの内容を4つご紹介します。
民間事業者と連携した見守り活動(福島県会津若松市)

孤独死した場合、水道や電気、ガスといったライフラインが使われなくなるとともに、配達された新聞や郵便物等が放置されたままになってしまいます。
会津若松市では、それらを取り扱っている民間事業者と連携し、孤独死につながる兆候を察知したり、異変を感じる世帯を発見したりした場合には、市、または警察に通報してもらうことで安否確認を行うことができる「孤立死等防止ネットワーク」を確立しています。
生活弱者発見 緊急連絡プロジェクト(滋賀県野州市)

滋賀県野州市では、不動産管理会社と連携して、家賃を滞納していたり新聞・郵便がたまったまま放置されていたりなど、生活弱者からのSOS情報をいち早く発見することで、孤独死の防止、そして生活そのものの再建を目指すプロジェクトを進めています。
最近では、不動産管理会社だけではなく、地域の民生委員にも協力を呼びかけ、より早く助けが必要な生活弱者の発見ができるように対策も進めています。
安否確認ホットライン事業(大阪府豊中市)

孤独死の発見が遅れてしまう原因のひとつとして、通報先が一か所にまとめられていないことがあげられます。
そこで大阪府豊中市では、安否確認の連絡窓口(安否確認専用ホットライン)を新設し、住民及び事業者等が住民の異変に気付いた場合は、その情報を確実に市へ届けてもらえる体制を整えています。
また、提供された情報をもとに、迅速かつ適切に対応できるような実施マニュアルを作成し、行政内部の対応体制の整備を行っています。
孤独死ゼロ作戦(千葉県松戸市)
家賃や公共料金が預金口座から自動引き落としになっていると、万が一その方が倒れていたり亡くなっていたりしても、周囲の人が異変になかなか気づくことができません。
特に、高度経済成長期に建設された団地は住人の高齢化率が高まり、単身高齢者が数多く暮らしていることから、孤独死が起きやすい状況となっていました。
そこで千葉県松戸市の常盤平団地では、自治会や社会福祉協議会、民生委員の3団体と連携し「孤独死ゼロ作成」の取り組みを進めています。
団地内に緊急通報システムを開設し、地域住民との集いの場となるサロンをオーブンするなど、安否確認や高齢者の孤立を防ぐ対策を行っています。
孤独死を防ぐためには、自ら備えることも重要です。ワンズエンディングの以下のコラムページでは、自分でできる孤独死を防ぐ備えについてわかりやすく解説しています。
【関連記事】「孤独死を防ぐために知っておきたい、現状と3つの備え」
【関連記事】「孤独死を防ぐために、今からできること」
孤独死に遭遇してしまった時にすべきことは?
一般社団法人日本少額短期保険協会の「第4回孤独死原状レポート」によると、孤独死現場の第一発見者は、家族や友人といった近親者が約32%、管理会社や不動産のオーナーが約27%、福祉関係者が約19%となっています。
では、もしも身近で孤独死が起き、その現場に遭遇してしまった場合、どのように対応すれば良いのでしょうか?
はじめにするのは「すぐに警察へ通報すること」です。
「孤独死とは」の章でもご紹介したように、そもそも孤独死という定義ははっきりと決められていません。
明らかに孤独死であったとしても、警察では死因が特定されるまでは「異状死」として扱われ、強盗や殺人といった事件性がないかの調査が行われます。
これらの調査を行う上で、新聞や郵便がたまっているかなど、当時の内部の様子も重要な情報源となる可能性があるため、孤独死に遭遇してしまった場合、故人の荷物には一切手を触れないように気を付けましょう。
また、警察による現場検証と並行して、ご遺族や保証人へなどに連絡が入ります。
その後、死因の特定や事件性の有無についての調査が終了すると、ご遺体を引き受ける人が決まり、葬儀の手配などが行われるという流れです。
このように、万が一孤独死の第一発見者となった時は、大まかな流れを把握しておくことで、急な出来事でも落ち着いて対応できます。
孤独死現場を発見した際の対応や一連の流れについては、ワンズエンディングのこちらのコラムページでも解説しています。
【関連記事】「孤独死を発見した時の対応を解説 警察に通報後の流れと特殊清掃」
孤独死が起きた現場の原状回復について
一人暮らしをしていた人が孤独死をしてしまい、その方が賃貸住宅に住んでいた場合は、遺族や保証人に「原状回復義務」が発生します。
孤独死現場では、遺体の発見が遅れて部屋に臭いや汚れがある場合は、遺品整理やハウスクリーニングのほかに「特殊清掃」と呼ばれる作業が必要となるケースがあります。
特殊清掃とは、孤独死のほか、事件や事故、自殺、病死といった原因で住人が室内で亡くなり、何らかの事情によって発見が遅れてしまった遺体の痕跡を取り除く作業のことです。
目安としては、夏場だと亡くなってから2~3日、冬場だと5~7日程度をすぎると遺体から腐敗臭が発生するといわれています。
ですので、死後数週間以上経って発見された場合や、遺体の腐敗がすすんで臭いが近隣に漏れているといったケースだと、特殊清掃が必要となる可能性が高いでしょう。
反対に、死後数時間以内に発見され、部屋の中に臭いもほとんど残っておらず、遺体からの血痕や体液の漏出も見られない状態であれば、特殊清掃は行わず、遺品整理とハウスクリーニングで原状回復ができることもあります。
孤独死が起きた部屋の原状回復で特殊清掃が必要になるかどうかは、死後どれぐらいで発見されたか、死因、湿度、季節など、さまざまな要因によって変わってきます。
孤独死だからといって絶対に特殊清掃が必要とは限らないため、専門の清掃会社に依頼する前に、まずはお部屋の状態を確認して、原状回復のためにどのような作業を行うべきかを考える方が良いでしょう。
遺品整理やハウスクリーニングは必要な場合が多い
孤独死された人の部屋には、たいていの場合、生前に使用していた家財や家具・家電がそのまま残っています。
そのため、特殊清掃を行うかどうかにかかわらず、原状回復には遺品整理やハウスクリーニングが必要となるケースがほとんどです。
身内が亡くなったときは「故人の遺品は自分たちで片付けたい」と考える方が多いでしょう。
部屋の原状回復は基本的にご遺族や保証人が行いますが、身寄りのない方の場合だと、大家さんが片付けをするケースもあり「費用がかかるから自分でやった方が良いかもしれない」と思う方もいるのではないでしょうか。
しかし、遺品整理は、家財の運び出しや廃棄する遺品の処分方法の確認など、やることが多くあり、葬儀や相続の手続きで忙しい中片付けを進めるのはなかなか大変です。
また、遺品の量次第では数週間や数か月以上かかってしまうことも少なくないため、大家さん一人だけでは手に負えないこともあります。
このように、ご自身の家族が孤独死をしてしまったり、所有している不動産で孤独死が発生したりした場合は、整理専門会社が提供している「遺品整理サービス」を受けるというのもひとつの手です。
当社ワンズライフでは、過去に特殊清掃サービスを提供していた経験と知識を生かし、孤独死現場の遺品整理のご依頼やご相談も承っております。
遠方に住まわれていて当日の立ち合いが難しい親族の方や、不動産のオーナーさまからご依頼、ご相談もお受けしておりますので、お気軽にご連絡ください。
まとめ
孤独死に対し、若い世代の方でも「一人暮らしだし、自分もいずれ突然孤独死してしまうのではないか?」という不安を抱えている方も多いかと思います。
孤独死は、周囲とのコミュニケーションが希薄化することで発生しやすくなります。
孤独死を防ぐためには、たとえ苦手意識があったとしても言葉をかけ合い、地域で暮らしている人一人ひとりが、自分から周囲と積極的にコミュニケーションを取ることが大切なのです。
もし、家族や親せきが一人暮らしをしている場合には、定期的に連絡を取るよう心がけてください。
写真や動画を送ったり、ビデオ通話をしたりするのがおすすめです。
また「遠くの親戚より近くの他人」ともいわれます。
近所の人と町中で出会ったら積極的に挨拶をして、お互いの顔を覚えるようにしていきましょう。
このような小さなコミュニケーションの積み重ねが、社会全体で孤独死を防いでいく第一歩につながります。
人と出会うことがあったら、明るく元気に笑顔で話しかけていきましょう。
参考文献:
1)東京都監察医務院 「東京都23区における孤独死の実態」http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kansatsu/kouza.files/19-kodokushinojittai.pdf
2)時事通信 「孤独死」に備える
https://www.jiji.com/jc/v4?id=kodokushi0001
3)内閣府 「平成27年度 第8回 高齢者の生活と意識に関する国際比較調査結果」
http://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/h27/zentai/index.html
4)厚生労働省 「孤立死防止対策取組事例の概要」
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12000000-Shakaiengokyoku-Shakai/0000034190.pdf
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12000000-Shakaiengokyoku-Shakai/0000034191.pdf
5)ウィルケア 「孤独死とは?急増する孤独死の特徴と原因、対策、特殊清掃について」
http://ihinseiri-willcare.com/column/%E5%AD%A4%E7%8B%AC%E6%AD%BB/
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