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2018.05.24 (2021.05.17 One's Ending編集部 加筆)

空き家バンクの制度の概要やメリット・デメリットを解説

地方を離れ、都会に出てきた方の多くが将来直面する課題が、両親亡き後の実家の「空き家問題」です。
すでに問題に直面なさっている方もいるでしょう。また、ご両親が健在であっても「空き家となる生家はどうやって管理しようか」「誰かに貸すことはできるだろうか」など、今後の空き家の活用方法にお悩みの方も多いのではないでしょうか?

そこでこの記事では、空き家の所有者と利用希望者をマッチングしてくれる「空き家バンク制度」の概要や、メリット・デメリットをご紹介します。

空き家バンクは、空き家の活用を促進するために、官民挙げて取り組まれている制度です。あなたが持てあましている空き家が、空き家バンクを利用することで、故郷の活性化に寄与します。実家の空き家問題にお悩みの方は、この機会に制度の利用を検討されてみてはいかがでしょうか。

空き家が増えている背景

住宅・土地統計調査(総務省)によると、全国の空き家の総数は1983年から2013年の間に、1.8倍(448万戸から820万戸)に増加しました。
また、2019年に実施された最新の調査では、2018年時点での空き家の総数は全国で846万戸となっており、増加の一途をたどっています。

また、東京都の発表によりますと、東京都内の空き家は、昭和38年が67,000戸、昭和63年が411,100戸、平成25年が817,100戸と、年々増え続けています。
空き家といえば、地方だけの問題ととらわれがちですが、都市部でも空き家は増え続けており、全国的な問題となっているのです。

 

参照:東京都 

 

では、なぜ全国で空き家が増えているのでしょうか?
空き家が増える要因としては、主に以下の3つが挙げられます。

 

固定資産税を低く抑えるため

所有している土地に建物が建っていると「住宅用地の特例」が適用され、空き地の時と比べ、固定資産税が6分の1に減額されます。
そのため、誰も住む予定がない空き家であっても、節税のために建物を取り壊さない方も多くいます。

 

少子高齢化や家族形態の変化

少子高齢化によって日本の総人口が減り、住宅の総数が総世帯数を上回る「供給過多」の状態になっているのも、空き家が増え続けている要因のひとつです。

 

そのほかには、家族形態の変化も大きく影響しています。
1980年代以降になると核家族化が進んで、子どもが親世帯と離れて暮らし、自分の家を持つケースが増えました。
そうなると、親が高齢になって再び子どもと同居することになった場合や、介護施設などに引っ越しをすると誰も住む人がいなくなり、空き家になるという状況が起こってしまうのです。

 

中古住宅が売れにくい

国土交通省の調査によると、日本における中古住宅のシェア率は約13.5%となっており、マンション、戸建てを問わず、住宅購入の際は新築が好まれる傾向があります。(参照:「住宅土地統計調査」)
そのため、中古住宅が売れにくく、空き家になっても購入者や借り手が見つかりにくい状況となっています。

 

このような所有者の悩みを解決し、全国で増え続ける空き家問題の解消のために活用されているのが「空き家バンク制度」です。
次の章では、空き家バンクの制度の概要について詳しく解説します。

 

空き家バンクとは

空き家

空き家バンクとは、『空き家再生等推進事業』の一環として、空き家の活用を促進するために自治体が主体となって行っている制度です。
空き家バンクでは、空き家の売却・賃貸を希望する所有者が、空き家登録を受けてホームページに物件情報を公開します。
そして、空き家を借りたい・買いたいと考えている人は、気になる物件があれば申し込みを行い、市町村を通じて紹介を受けるシステムです。
運営主体が自治体の場合、空き家の情報は、各市町村もしくは都道府県から委託を受けた公益社団法人宅地建物取引業協会が運営するホームページに掲載されます。

 

空き家バンクの目的は、地域の空き家の数を減らすことだけではありません。
仲介した空き家に他地域から人が移住・定住することで人口を増やし、その地域の活性化を促進させることも目的としています。

 

NPO法人や民間企業との連携も増えてきている

空き家バンクは国が積極的に取り組みを推進しているということもあり、自治体だけではなく、多くのNPO法人も運営しています。

 

また、「一般社団法人全国空き家バンク推進機構(以下ZAB)」と提携して、空き家バンク事業に取り組んでいる民間企業もあります。ZABは、空き家・空き地などの空き資源の利活用を通じて、地方創生と公民連携を目指している団体です。この事業では、自治体の首長経験者や、不動産関連の政策に詳しい有識者なども参画しています。
民間では、ZABが有する自治体とのネットワークや知見と、民間企業の運営ノウハウ合わせた新たな空き家ビジネスが増加しつつあります。

 

参考:全国版空き家・空地バンクの取り組みについて(国土交通省)

 

空き家バンクの仕組み

 

空き家バンクの仕組み

空き家バンクでの取引は、通常の物件売買とは違って不動産業者による仲介はなく、基本的に空き家の所有者と利用希望者が直接交渉をする仕組みです。
契約内容は、所有者側が「建物の修繕は借り手(買い手)側が行うことを希望している」、一方利用希望者側は「改築をしたいため原状回復義務がないことを希望している」など、様々なパターンがあります。

 

契約後のトラブルを防ぐためには、所有者側、利用希望者双方での入念な話し合いが必要です。
空き家バンクでは、取引の際に所有者側と利用希望者側で問題が起こっても、自治体は責任を負わないことになっています。
そのため、ご自身で交渉をすることに不安がある方は、宅地建物取引業者と仲介契約を結ぶか、司法書士などの専門家への依頼を検討するのもひとつの方法です。

 

【空き家の所有者向け】登録の流れ一覧

ここでは、空き家所有者が自治体の空き家バンクを利用するときの流れを解説します。
市町村ごとに登録の手順は異なりますが、大まかな流れは以下の通りです。

 

参考:兵庫県養父市空き家バンク「物件登録までの流れ」

 

1.必要書類の提出
空き家バンクへの物件登録にあたり、まずは「空き家バンク登録申込書」「登録カード」に必要事項を記入して、市町村の窓口に直接持ち込むか、郵送で提出します。
なお、市町村によっては「間取り図」「登記簿謄本」「公図」「測量図」などの提出が必要となることもあります。

 

2.自治体による現況調査
申し込み後は、市の担当者が現況調査を行い、売却や賃貸に出しても問題がないかを調査します。
場合によっては、市が認定した宅地建物取引業者の職員が同行することもあります。

 

3.問題がなければ空き家バンクへ登録
現況調査をして問題がなければ、市の担当者や宅地建物取引業者と売買希望金額・希望賃料、修繕の有無などを話し合います。
その後、登録が完了すれば、市町村のホームページで空き家情報が公開されます。

 

【空き家を利用したい方向け】申し込みの流れ一覧

田舎暮らしや、地方への定住・移住をするあたり空き家の利用を検討している方は、始めに移住の目的を考えてみましょう。
「移住地においてどんなことがしたいのか」を考えるほか「仕事はどうするのか」「商業施設や飲食店、医療機関はあるのか」なども考慮した上で移住後の計画を具体的に立てることがポイントです。
そうすることで、実際に田舎暮らしをスタートした時に「想像していた生活とは違った」「思っていた以上に不便だった」と失敗してしまうのを防ぎやすくなります。

 

したがって、移住・定住希望者の方が空き家バンクを利用する際は、移住後の暮らしについて具体的な計画を立てて、ご自身の目的に合った地域を絞ってから、空き家バンクを検索して物件情報を閲覧、その後実際の利用申し込みに移るという流れが良いでしょう。
こちらも、市町村や団体ごとに手続きの手順は違いますが、大まかな流れは以下の通りです。

 

参考:ふくい空き家情報バンク「空き家をお探しの方」

 

1.移住・定住したい市町村の空き家バンクに申込書を提出
まずは、移住・定住を希望する市町村のホームページもしくはインターネットで「空き家バンク ○○市」と検索し、利用者登録に関するページにアクセスしましょう。
利用者登録の際は、所定の「利用登録申込書」の提出を求められることもあれば、仲介不動産業者に連絡することで申し込みが可能な場合もあります。
このように、自治体によって手続きが違うため、住みたい地域の手続き方法をホームページなどでよく確認しましょう。

 

2.現地、物件の見学
市町村によっては、空き家バンクの利用者登録後に現地見学を推奨しています。

 

3.空き家所有者と条件等の交渉、契約(宅建業者の仲介が入ることが多い)
物件を見学し、利用を希望する場合は所有者と交渉します。
貸し手と借り手の間には宅地建物取引業者が間に入るケースがほとんどですが、まれに入らないこともあります。
いずれにしても、入居後のトラブルを防ぐためには、ご自身で契約内容についてしっかりと確かめておくことが大切です。

 

空き家バンク活用のメリット・デメリット

空き家バンク制度の活用によって、自治体は空き家を減らすことができ、移住者や定住者の増加につながり、地域の活性化も期待できます。

 

それだけでなく、空き家バンクは、物件の所有者、空き家の利用を希望する側、それぞれにもメリットがあります。
また、空き家バンク制度は自治体主体で運営されていることから通常の物件売買とは異なる点も多く、デメリットがあることも事実です。では、具体的にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?

 

ここでは、空き家を所有する側から見たメリットとデメリットをご紹介します。

 

【メリット】空き家の管理にかかる費用や手間を軽減できる

空き家の所有者には「管理責任」があり、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、適切な管理や修繕等が義務付けられています。(参考:国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の概要」)

 

そのため、老朽化によって倒壊の危険性がある場合は修繕を行ったり、庭木が伸びて景観を損なう恐れがあれば剪定を依頼したりと、空き家の管理にはそれなりの費用が必要です。
また、ご自身で空き家の管理をする場合は、現地に通って建物や敷地内の清掃・点検を行う手間もあります。

 

空き家バンクでは、所有者と借主もしくは買主が相談して条件を決められますので、双方が納得すれば「庭の手入れは借主が行う」「修繕にかかる費用は借主(買主)負担」といった契約を結ぶことも可能です。
また、維持管理は所有者が行う契約であっても、人が住むことで建物の老朽化を防げるので、修繕にかかる費用負担を抑える効果も見込めます。

 

【メリット】空き家を現状のまま貸すことも可能

空き家バンクに登録した物件の家賃や原状回復義務などの諸条件については、市町村の担当者や宅地建物取引業者と交渉できます。
そのため、所有者が「借主負担DIY型」の契約形態を選択すれば、一般の賃貸とは違ってハウスクリーニングや改修工事を行わず、現状のまま貸し出すことも可能です。

 

また、借主が自費でDIY等を行う契約にすれば、居住性が向上して長期間住んでくれる可能性が高くなり、安定した家賃収入を見込めるというメリットもあります。
ほかにも、借主が設備交換やリフォームをしたことによって、退去時には貸出時よりも設備等の価値が上がったというケースもあります。

 

【デメリット】空き家の状態によっては登録できない可能性がある

空き家バンクでは、基本的に老朽化が激しい物件でも申請可能です。
しかし、市町村によっては、宅地建物取引業者による調査で「流通の見込みがない」と判断されてしまうと、空き家バンクへの登録ができないケースもあることを覚えておきましょう。
この場合、改修工事をしてから再度登録申請をしたり、空き家を解体して土地として取引したりなどの選択肢もあります。

 

【移住・定住希望者側】空き家バンク利用のメリット・デメリット

次に、移住・定住を希望する方が空き家バンクを利用するメリットとデメリットを解説します。

 

【メリット】通常の不動産情報サイトにはない好物件が見つかることがある

そのまま住むことはできないが、DIYやリノベーションで自分の好きなように改築して住みたいという方にとっては、良い物件が見つかる可能性があります。
家主との交渉で「借主負担DIY型」にしてもらうことができれば、通常の賃貸契約のような原状回復義務がなく、法令の範囲内で自由に改築可能です。

 

また、借主負担DIY型の契約形態では、入居前のハウスクリーニングをしなくても良いことから、所有者側の費用負担が少なく、相場よりも安い家賃物件を借りられることもあります。

 

【メリット】物件以外の情報も得られる

空き家バンクに掲載された物件を見学する時は、市の移住相談員が現地の案内をしてくれたり、住環境や農地情報、地元住民の生の声を聞けたりなど、物件以外の情報が得られるというメリットもあります。

 

【デメリット】自治体のホームページでは詳細な情報が得られないことがある

民間企業の運営する不動産情報サイトとは違い、空き家バンクのホームページには、物件の詳細な情報が掲載されていないことも少なくありません。
理由は、いたずらや不法侵入などの犯罪を防ぐためです。
写真が掲載されている物件も多いですが、情報が公開されてからある程度時間が経っていると、建物の状況や周辺環境などが変わっている可能性もあります。
したがって、気になる物件があれば、現地を訪れて実際に確認した方が良いでしょう。

 

空き家バンクに関わる各自治体の補助金・支援制度

空き家バンク制度を導入している市町村の中には、建物の改修やリフォーム費用の一部を補助する制度を実施していることがあります。
たとえば、古くなった水廻り設備を交換する、耐震工事を行う、家の中に残った家財道具の処分費用などに補助金制度を活用できます。
そのため、所有者は初期費用を抑えつつ効果的に入居希望者へ物件をアピールでき、利用希望者は移住・定住にかかる費用を節約することが可能です。

 

ここでは、各自治体で実施されている空き家バンクに関わる補助金制度や、移住・定住を促進するための支援制度をいくつかご紹介します。

 

※こちらで掲載している内容は、2021年3月時点の情報です。
年度によって補助金の金額や利用条件等が変更となる可能性もあります。正確な情報については、各市町村の担当部署にご確認いただくことをおすすめします。

 

奈良県奈良市の「空き家・町家バンク活用補助金」

奈良県奈良市では、空き家所有者、利用希望者双方に向けて補助金制度を設けています。
物件の所有者の場合、荷物の撤去費20万円+改修費50万円で最大70万円の補助金を受け取ることが可能です。
利用希望者は、かかった費用の2分の1を上限として、空き家の購入費50万円もしくは改修費50万円まで補助が受けられます。(購入費補助金と改修費補助金の併用は不可)

 

高知県香南市の「住宅耐震改修費補助金」

空き家バンクに登録されている空き家を購入し、市内に定住する人が対象の補助金制度です。
利用条件は、主要構造部、台所、トイレ、お風呂、居室など、生活に必要な部分のリフォームを行い、その費用が5万円以上かかる場合となっています。
補助額の上限は50万円(リフォーム費用の2分の1まで)です。

 

福島県福島市の「福島市UIJターン移住支援制度」

福島県福島市では、空き家バンクで取得した空き家の改修費用を助成しているほか、移住・定住に関するさまざまな支援制度を設けています。

 

たとえば「福島市UIJターン移住支援金制度」は、東京圏から福島市に移住した方が、福島県のマッチングサイトを通して対象の企業に就職したり起業したりした場合、移住支援金が受け取れる制度です。
金額は、単身世帯で60万円、転入時に2人以上の世帯では100万円となっています。
なお、支給にあたっては、5年以上継続して居住する意思を持っていることなど、いくつかの条件を満たす必要があります。

 

補助金・支援制度のよくある失敗と予防策

最後に補助金・支援制度についての補足として、よくある失敗と、予防の方法をご紹介します。
よくある失敗が、補助金制度の詳細を確認せずに契約して、あとでその物件が対象外だったと知るケースです。

 

 

こういった失敗を防ぐためには、契約前に詳細な制度の内容をご自身で調べておくことと、その物件が補助金・支援手続きの対象となるかを市町村の窓口に確認しておくことが大切です。

 

まとめ

地方の風景

全国の自治体、NPO法人等において、さまざまな形態の空き家バンクがあります。
空き家の所有者の方で、どう活用していいかわからない場合は、まずは物件がある地域の自治体に相談してみてはいかがでしょうか。
空き家の利用希望者の方は「こんなところに住みたい」からはじめて、住みたい地域の物件を調べてみましょう。
その上で「そのまま住める物件が良いのか」「DIY可能な物件が良いのか」「改修に補助金が出るのか」などをじっくり考えた上で、空き家バンクの利用を検討してみることをおすすめします。

 

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この記事を書いた人
One's Ending編集部
関東の遺品整理専門会社(株)ワンズライフのメディア編集部です。 遺品整理、生前整理、空家整理に関することから、終活、相続税に関することまで。人生のエンディングにまつわる、役に立つ情報やメッセージをお届けしていきます。
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