
特定空き家とは?固定資産税に影響する空き家対策特別措置法の定義と判断基準
都会に住むAさんは、地方に誰も住んでいない実家を所有しています。長い期間に渡り、所有者として固定資産税だけを払い続け、管理だけされた空き家として放置してきました。
ところが先日、雑誌の特集で『 空き家対策特別措置法 』という法律があることを知ったのです。自分なりに詳細を調べて見ると、実家も『 特定空家 』に指定されるかもしれないという心配を持ちました。
今回の記事では、Aさんのような事例を元に、空き家対策特別措置法に関する情報を求めておられる方のために、「特定空き家」のことをご紹介いたします。固定資産税に影響する空き家対策特別措置法の定義と判断基準をまとめましたので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
空家対策特別措置法とは
国立社会保障・人口問題研究所は、平成25年に「 日本の世帯数の将来推計 」を発表しました。その調査内容によると、世帯総数は2019年をピークに減少を開始し、平均世帯人員も減少が続く可能性があるとされています。
この結果を見ると、平成25年度から全国に820万戸ある空き家がこれからも著しく増加するであろうことを予測できます。空き家対策特別措置法は、市町村の空き家対策の取り組みを法律面をも含めて、バックアップするために平成26年11月27日に制定されました。(法律第127号) また、特筆すべき事項として、『 特定空家 』という用語が記載されたことが挙げられています。
特定空き家とは?

空家等対策の推進に関する特別措置法において、「特定空家」の定義は以下の条文(第二条2項)に定義されています。
第二条 この法律において「空家等」とは、建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む。)をいう。ただし、国又は地方公共団体が所有し、又は管理するものを除く。 2項 この法律において「特定空家等」とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態、又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態、その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう。
【引用】 国土交通省 空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年11月27日法律第127号)
上記の内容である特定空き家の判断基準は、国土交通省のガイドラインにて規定されています。こちらのガイドラインに基づいて簡単なチェックポイントを記載しましたので、ぜひ参考にしてみてください。本記事においてはわかりやすくするために、内容表現を一部変更していますので、正確な表現を知りたい方は、事前対策として国土交通省ガイドラインをご参照ください。ここで学んだ知識を積極的に活用していきましょう。
【参考】国土交通省 「特定空家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)
倒壊など保安上危険となる恐れがある
- 部材の破損や地盤の沈下等の状況により建築物に傾斜(20分の1傾斜が基準と言われています。)が見られる
- 建物の基礎や柱(大黒柱)に大きな亀裂やひび割れ、変形または破損が発生している
- 建物の基礎や柱(大黒柱)が腐っていたりシロアリ被害などによって大きな断面欠損が発生している
- 屋根が変形している
- 軒が壊れて垂れ下がっている
- 雨どいが壊れている
- 外壁を穴が貫通している。外壁の下地が露出している
- 目視で、看板、給湯設備、屋上水槽等の支持部分が腐っている状態を確認できる
- 目視で、野外階段、バルコニーが傾斜している状態を確認できる
- 目視で、門、塀が傾いている状態を確認できる
- 擁壁表面に水がしみ出し、流出している状況がある
著しく衛生上有害となるおそれがある
- 身体に有害なアスベストが飛散する。または建物表面に出てしまう可能性が高い状況である。
- 浄化槽( 汚水槽 )等の破損等による汚物の流出、悪臭の発生がある。
- 排水等の流出による、悪臭の発生がある。
- ごみ等の放置、不法投棄による臭気の発生がある。
- 多数のネズミ、ハエ、蚊などの発生がある。その結果、近隣の生活環境が悪化している。
著しく景観を損なっている
- 屋根、外壁等が、汚物や落書き等で外見上、汚れたまま放置されている。
- 多数の窓ガラスが、割れたまま放置されている。
- 看板の原型を留めず本来の用をなさない程度まで、破損、汚損したまま放置されている。
- 立木等が建築物の全面を覆う程度まで生い茂っている。
- 敷地内(土地)のごみ等が放置されている。
周辺の生活環境に悪影響を及ぼし放置することが不適切
- 立木が腐っていたり、倒壊、枝折れ等が生じたりしている。近隣の道路や敷地等に枝などが大量に散らばって、歩行者の通行を妨げている。
- 敷地外に動物の毛又は羽毛が大量に飛散し、地域住民の日常生活に支障(衛生面的に不潔である)を及ぼしている。
- 住みついた動物が周辺の土地・家屋に浸入し、地域住民の生活環境に悪影響を及ぼすおそれがある。
- 動物の鳴き声、その他の音が頻繁に発生している。
- 動物の糞尿、その他の汚物の放置により、臭気が発生している。
- シロアリが大量に発生して、近隣の家屋に飛来し、地域住民の生活環境に悪影響を及ぼす恐れがある。
- 門扉が開けっ放し、窓ガラスが割れている等不審者が容易に侵入できる状態で長らく放置されている。
- 周辺道路、家屋の敷地等に土砂等が大量に流出している。
- 雪の降る地域においては、屋根の雪止めの破損など不適切管理により、空き家からの落雪が発生し、歩行者等の通行を妨げている。
特定空家に指定されたらどうなるのか
空家のある市町村から、所有者へ固定資産税等の住宅用地特例からの除外勧告を受けます。その結果、優遇措置が撤廃され、更地状態と同等の固定資産税が徴収されることになります。それまでの6倍の固定資産税です。 指導、勧告に従わない場合は、最大50万円の罰金が課せられるほか、強制撤去が行われ、その代執行費用は、所有者へ請求されます。
強制代執行に至るまでの流れ(判断する主体は市町村となります。)
- 空家の所有者等の事情の把握。
- 空家への立ち入り調査実施。
- 特定空家への指定。
- 税務部局等、関係部局への情報提供。( 空家所有者情報の外部提供関するガイドライン参照 )
- 空地の所有者への助言又は指導。
- 空地の所有者への勧告。
- 空家所有者への命令。(必ず書面にて行う。命令違反には最大50万円の罰金があります。)
- 強制代執行 → 所有者への費用徴収へ
- 代執行前に、必要な措置が取られた場合は、それに適切な対応することとなる。
参考】国土交通省 空家等対策の推進に関する特別措置法の概要
空き家を整理しておくのは必須
空き家所有者は、自己物件が原因となって放火や、犯罪、地域の衛生環境面悪化など、近隣の住宅に迷惑が掛からないように、きちんと屋内外とも整理した上で管理を行うことが重要です。特に害虫や害獣の糞害は、建物の寿命を著しく縮めて、不動産の金銭的価値を低下させる結果にもなります。
もし空き家の不備が原因で第三者がけがをした場合、当然その治療費は保険がきかず、全額空き家所有者の負担となります。治療費だけでなく、「その方が治療中働くことができなかった状況」というように、逸失利益も請求される可能性も当然あるのです。
また、空き家の不備がもとで他の家屋を損壊させた修繕費用も、空家所有者側の負担となり、修繕費が高くついたとかの言い逃れもできにくい状況となります。このようなケースの場合は、調停や裁判になることが多く、それらに係る時間もかかるので注意が必要です。
大雪や大雨後の自然災害後には、必ず様子を見る必要があります。空き家の管理には、時間もお金もかかるのです。
まとめ
空き家対策特別措置法の制定で、「空き家は放置しておくしかない」という、これまでの行政の考えが変わりつつあります。相続で空き家を相続した場合、ますは空家の整理を行うことが必須です。事前に計画を立てておくとスムーズに進みます。
これまでずっと放置してきた実家も、この機会にしっかり整理しておくことを考えるべきでしょう。その上で、空き家の廃墟化を防ぎ、公的機関を利用した空き家マッチングシステムにて、賃貸にしたり売却したりするのも良いと思います。
また、親族だけで対応できない場合には、専門の業者のサービスを利用して相談し、改善策などのアドバイスをもらうのがおすすめです。
問題が起きて大きな負担になる前に早めに解決し、心の負担を減らしましょう。
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