タンス預金は相続税や贈与税の対象になるのか
遺品整理をしていると、思いもよらないところから現金が見つかることがあります。自宅に保管された現金、いわゆる「タンス預金」が見つかった場合、これは相続税や贈与税の対象になるのでしょうか。
今回は、相続税・贈与税の基礎知識とともに、故人が残したタンス預金は課税対象となるのかわかりやすく解説します。
相続税・贈与税の基礎知識
まず初めに相続税・贈与税とはどのような税なのか確認してみましょう。
相続税とは
相続税とは、相続によって受け取った財産に課される税のことです。
ただし、相続税には基礎控除があり、その額を超えない場合には相続税を支払う必要はありません。
●遺産に係る基礎控除額の計算式
3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
●相続税がかかる財産の一例
・ 現金
・ 預貯金
・ 有価証券(株式や公社債など)
・ 土地・建物
・ 宝石
経済的価値のあるものが対象で、上記の他にも貸付金や特許権、著作権、死亡保険金などにも相続税がかかります。一方で、日常礼拝をしている墓石や仏壇など、相続税のかからない財産もあります。
贈与税とは
贈与税とは、個人からの贈与によって受け取った財産に課される税のことです。対象となるのは個人から受け取った財産のみで、法人からの贈与によって財産を取得した場合には所得税がかかります。
贈与税には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つの課税方法があります。
●暦年課税
贈与税がかかるのは、1年間に贈与された財産の合計額から、基礎控除額110万円(毎年)を控除した残りの金額です。
受け取った財産が110万円以下であれば贈与税はかからず、申告する必要もありません。
●相続時精算課税
贈与税がかかるのは、相続が開始されるまでの累計額から、特別控除額2,500万円を控除した残りの金額です。
2024年1月1日以降の贈与においては年間110万円の基礎控除も適用され、1年間の贈与額が110万以下であれば申告不要となります。
暦年課税との選択制になっており、相続時精算課税の適用には一定の要件があります。
タンス預金は課税対象に〜相続税か贈与税がかかる
それでは、故人が自宅に保管していた「タンス預金」は、相続税や贈与税の対象となるのでしょうか。
タンス預金は「現金」であるため、それを受け取る際には税金がかかります。
タンス預金の受け取りが「相続」(=亡くなったあとに引き継ぐ)であれば相続税、「贈与」(=生前に無償で受け取る)であれば贈与税の対象となります。
タンス預金は自宅に保管しているお金であり、申告しなくてもバレないのではないかと考える人もいるでしょう。
しかし、税務署は亡くなった方の預貯金口座の動きを調査でき、疑わしい場合には税務調査をおこなってタンス預金の存在を明らかにします。
相続税や贈与税には「時効」(=申告・納税の義務が免除される)もありますが、時効が成立するには年数がかかり、その間は税務署からの指摘に怯えることになるでしょう。
タンス預金のお金もきちんと集計し、正しく申告・納税することが重要です。
注意!申告を怠るとペナルティーが課される
銀行に預けていても自宅に保管していても、それが現金であることに変わりありません。
必要な税金の申告を怠ってしまうと、当然ながらペナルティを受けることになります。
タンス預金は後から見つかるケースもありますが、すでに申告を終えていたとしても、タンス預金を見つけた場合にはなるべく早めに修正申告することが重要です。
相続税・贈与税の申告漏れや無申告によって課されるペナルティには以下のようなものがあります。
●延滞税
定められた期限までに納税されない場合に課されるペナルティです。
納期限の翌日から2か月以内であれば年2.4%、2か月を超える場合は年8.7%の延滞税が課されます(2022年1月1日から2024年12月31日までの期間)。
●無申告加算税
申告・納税をしなかった場合に課されるペナルティです。
50万円までの部分は15%、50万円を超える部分は20%の無申告加算税が課されます。
ただし、期限後に申告した場合でも、期限内に申告する意思があったと認められ、かつ申告期限から1か月以内に自主的に申告した場合には課されません。
故人が自宅などで保管していた現金は把握しづらいですが、故人が亡くなった時点で自宅にあるお金をすべて集めておくのが望ましいでしょう。生前にエンディングノートなどでお金の保管状況を記録しておくと、家族の手間を省くことにつながります。
まとめ
故人が残した「タンス預金」は、それを生前に贈与として受け取っている場合は贈与税、亡くなった後に引き継ぐ場合は相続税の対象となります。
申告を怠るとペナルティを課されることがあるため、後から見つけた場合も追加で申告する必要があります。
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