身寄りのない人が亡くなられた場合はどうなるのか
一般的に人が亡くなった場合は親族が死亡届を提出し、市町村から火葬許可を交付された後に遺体を火葬します。しかし、亡くなった方に身寄りがない場合は、遺体や遺品を引き取る人もいないことになってしまいます。
このようなケースにおいて、身寄りのない故人の遺体や遺品、財産はどうなるのでしょうか。死後に備えて自分でおこなえる準備とともにわかりやすく解説します。
参考:地方公共団体における遺品の管理に関する事例等|総務省行政評価局
身寄りのない故人の遺体はどうなるのか
身寄りのない人が亡くなった場合は所在地もしくは死亡地の市町村が遺体を管理し、身寄りの探索をおこないます。
しかし、遺体を長期間保管することは現実的に難しく、探索するにもタイムリミットがあります。
身寄りが見つからない場合は市町村が埋葬または火葬することが法令で定められているため、市町村はタイミングをみて埋葬または火葬することになります。
引き取り手のない遺骨は各市町村が納骨堂などに保管していますが、市町村によっては保管スペースが足りていません。
この場合は一定の期間を決めて保管し、その期間を過ぎた遺骨は合葬するなどの対応をとっています。
遺骨の扱いに関しては法令による決まりがないため、各市町村の判断に委ねられている状況です。
身寄りのない故人の遺品はどうなるのか
身寄りのない故人の遺品は市町村が保管することになっています。
しかし、遺族などの身寄りが現れない場合も市町村が勝手に処分することはできず、相続人を探索して意思確認をおこなう必要があります。
遺品は相続財産であり、原則としてこれらは法定相続人に相続されるべきものだからです。
そして、市町村が探索しても相続人を特定できなければ、相続財産管理人の選任を家庭裁判所に申し立てることになります。
遺品を処分するまでは各市町村で保管しなければなりませんが、遺品を保管するには場所の確保が必要となり、手間やコストもかかります。
先述した遺骨の保管と同様に、遺品の保管に関してもスペースや費用の面で市町村に大きな負担が発生している状況です。
また、身寄りのない故人が民間の集合住宅に住んでいた場合、遺品の引き取り手がいなくても市町村は原則として対応しないことになっています。
このようなケースでは住宅管理者などが対応せざるを得ないのが現状で、放置された”遺品部屋”の対応に多くの時間と費用を要した事例が全国各地で起きています。
身寄りのない故人の財産はどうなるのか
身寄りのない故人の財産も市町村によって管理され、埋葬または火葬の費用などにあてられます。
総務省行政評価局によると、全国の市町村が保管する遺留金(亡くなった人が残したお金)は2021年10月末の時点で少なくとも21億円にのぼったといいます。
身寄りのない人の財産に関してもまずは市町村が相続人を探索し、それでも見つからなければ国庫に納めることになります。
また、相続放棄をする場合など、相続人が見つかっても市町村に遺留金が残ってしまうケースもあるようです。
遺留金は今後も増え続けることが予想され、その管理を担う市町村の負担はますます大きくなるでしょう。
このような負担を軽減すべく、総務省は厚生労働省に対して「預貯金の引き出しの実施状況」に関する把握と改善を要求し、法務省に対しても「残余遺留金の弁済供託」の運用改善を勧告しています。
身寄りのない人は自分の死後にどう備えるか
少子高齢化や核家族化が進み、自分の死後に不安を抱える人は少なくありません。
身寄りのない人は自分の死後にどう備えればよいのか、ここでは2つの対応策をご紹介します。
遺言書を作る
遺言書は法的な効力を持っており、自分の財産をどう分けるか指定することができます。
公証人が作成する「公正証書遺言」は正確性が高く、紛失したり改ざんされたりする心配はありません。
しかし、遺言書が効力を持つのは財産や身分に関する事項に限られるため、葬儀形式や遺品整理など死後の手続きに関する希望があれば「死後事務委任契約」の締結が必要となります。
死後事務委任契約を締結する
死後事務委任契約とは、自分の死後の事務手続きを第三者に任せる契約のことです。
死後事務委任契約を締結すると、葬儀や供養方法の指定のほか、遺品整理や形見分け、行政手続き、賃貸住宅の契約解除、個人情報の削除といったさまざまな手続きを信頼できる第三者に委任することができます。
身寄りのない人や身寄りがあっても頼れない人にとって、死後の不安を解消する有効な手段となるでしょう。
まとめ
身寄りのない人が亡くなった場合、そのご遺体や遺品、財産は市町村が管理し、身寄りや相続人を探すことになります。
身寄りがなく自分の死後に不安を抱えている方は、法的な効力のある遺言書を作成して財産の分配を指定したり、死後事務委任契約を結んで死後の手続きを委任したりするなどの手段を検討する必要があるでしょう。
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