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遺品整理、それは人生のドラマそのもの

今回は少し視点を変えて、遺品と人生のドラマの関連が描かれた作品を紹介してみます。
故人がこの世に遺した品物こそ、その人が生きてきた証であり、人生のストーリーを著す象徴だと考えるからです。
これらを通じて、一度、ご自身やご家族の人生のストーリーについて想いを馳せてみてはいかがでしょうか。

そこに、命と向き合う人々がいるから。

『アントキノイノチ』/さだまさしさんの小説、映画。

 

これは、「時間」「命」などをテーマに歌を紡ぐシンガーソングライター、さだまさしさんが書いた小説です。遺品整理についてはもちろん、孤独死、いじめ、命の尊厳、人間の優しさなどさまざまな要素も織り交ぜた社会性の高い作品となっています。

 

ストーリー

物語は、遺品整理の現場から始まります。この小説は映画にもなりましたが、原作の小説の文章表現においても遺品整理の仕事がわかりやすく描写されているので、この仕事の「日常」と、そこに従事する人たちがどのような想いでいるのかが伝わってきます。 主人公・杏平は、遺品整理業「クーパーズ」で働き始めたばかりの新入社員。高校時代に人間関係に傷ついたことによって他人との人間関係を作るのが苦手になっていましたが、やがて心が安定してきたためこの仕事に就いたのです。 最初は見習いとして凄惨な現場に立ち会い、戸惑う杏平でしたが、温かい心をもつ社長から命と向き合うことの大切さを教えられ、次第に強く立ち直っていきます。そして、彼の心の中に高校時代からくすぶり続けていた、いじめられたクラスメイトに対する「殺意」は、命の重さと向き合っていくうちに新しい感情へと変化していくところも、この作品の大きな見どころと言えます。もちろん、ラストシーンで杏平が叫ぶ、この作品のタイトルの意味を示唆する象徴的な問いかけも含めて。

 

ポイント

この作品では、遺品整理という仕事を通して人間の優しさや命の重さが描かれています。遺品整理の仕事のことは、作品中では「仏さんの忘れ物の、天国への引っ越し屋さん」という表現がされています。遺品整理の重要性、そして生きることの難しさ、死への恐怖と尊厳も含めて、この仕事の社会的な重要性をより多くの人に改めて考え直していただく機会かもしれません。筆者個人的には、クーパーズの社長さんが杏平に言った言葉がとても感動的でした。 「さ、永島君、仏さんを助けに行こう」。

 

 

モノへの執着、そして喪失感の行末。

『トニー滝谷』/村上春樹さんの短編小説、映画。

 

村上春樹さんらしい、「喪失」をテーマにした作品です。ただ、ここでは洋服に対する女性の「執着」も描かれているので、人生における遺品整理、果ては生前整理のことまで考えさせられる深みのあるストーリー展開になっています。

 

ストーリー

この短編小説は、2005年にイッセー尾形さんと宮沢りえさんが主演を務めて話題になった作品です。精密機械専門のイラストレーターとして名を成したトニー滝谷は、とある聡明な女性と結婚します。しかし、その女性の唯一の欠点は、洋服を目の前にすると衝動的に買ってしまうことだったのです。とにかく、我慢できない。彼女は夫婦でのヨーロッパ旅行のときでさえ、観光など行かずにブティックを回り尽くします。いくらお金に不自由はしていないとはいえ、それはよくない。トニー滝谷は彼女に言います。そんなに多くの洋服が本当に必要なのか?と。結果、彼女も思い直して購入した洋服を返品しに行くのですが、強すぎる執着心がゆえにその帰り道に亡くなってしまうのです。 部屋ひとつ分の洋服が遺され、独りになったトニー滝谷。妻の死を受け入れることができないため、彼はそれらの洋服を着ることを条件に自分の事務所のサポートをしてくれる女性を雇います。しかし、結局のところ洋服は妻の存在の「影」に過ぎないことを悟り、ある「決断」をします。そして、その2年後。彼は父親が亡くなった時に膨大なレコード・コレクションを引き継ぐのですが、最後の一行で、この短編のもつ「喪失感」が見事に表現されています。

 

ポイント

世の中には、モノへの執着が深い人がいます。深ければ深いほど、苦しむのかもしれません。言うまでもなく、人間はある日突然、亡くなる可能性もあります。モノへの深すぎる執着というものは、遺品整理において、本人のみならず家族をも苦しめてしまうのかもしれません。この作品はフィクションですが、これに近い実話はきっとどこかにあるのではないでしょうか。もしかすると、あなたの周りにも。この小説で印象的だったのは、女性の執着心がシンプルかつ鋭く表現されていたことです。 「ただただ単純に我慢ができなかった」。 まさに、人間の業の怖さを感じさせる作品です。

 

 

誰の人生にも、秘められたストーリーがある。

『マディソン郡の橋』/アメリカの小説、映画。

 

クリント・イーストウッドが監督と主演を務め、メリル・ストリープと共演したことで1995年に世界中でヒットした有名な映画ですが、ここでは「遺品」に秘められたストーリーという視点で紹介したいと思います。

 

ストーリー

物語は、1989年、母親フランチェスカの葬儀を出すために長男マイケルと妹キャロラインが遺品整理をしているシーンから始まります。母親の日記と手紙、そして見知らぬ男性から彼女宛に贈られた荷物と手紙。そして、「火葬にして、ローズマン橋から灰を撒いて欲しい」という遺書――。その時初めて、二人は平凡に生きてきたと思っていた母親の激しい恋を知ることになるのです。 1965年、アイオワ州のマディソン郡で夫と小さな農場を営んでいたフランチェスカ。彼女は、子牛の品評会に出かけた家族の留守中に、この地にある屋根付きのローズマン橋を撮りに訪れたフォトグラファー・ロバートとわずか四日間の恋に落ち、濃密な時間を過ごします。そして四日後、家族が戻って平穏な日々が戻りますが、その数日後に雨の中でロバートと再会してしまいます。そこで彼女がとった(とらなかった)行動で、物語は大きな岐路を迎えるのです。 時は過ぎ去り、やがて夫を看取ったフランチェスカはロバートの行方を探しますが、見つけることはできませんでした。しかし、ある日彼女宛に彼の弁護士から手紙と荷物が届きます。手紙には、「彼は既に亡くなっていて遺灰はあのローズマン橋から撒かれた」と書かれていました。そして荷物の中にあったものは、彼女を撮った写真集とニコンの古いカメラだったのです。 そして、1989年。母親の数奇な人生にしみじみと想いを馳せるマイケルとキャロラインは、家族の大切さを改めて思うことになるのです。

 

ポイント

捨てたくないものの中には、かけがえのない想い出、というストーリーも含まれています。それが遺品ともなれば、なおさらと言えるかもしれません。この映画では、遺品がストーリーを語り、子ども達へのある種の反面教師的な教えさえも(皮肉的ですが)含んでいます。遺品はその人の人生を色濃く表す証拠であるがゆえに、私たちはある種の敬意をもって接するべきかもしれないと思うのです。

この記事を書いた人
One's Ending編集部
関東の遺品整理専門会社(株)ワンズライフのメディア編集部です。 遺品整理、生前整理、空家整理に関することから、終活、相続税に関することまで。人生のエンディングにまつわる、役に立つ情報やメッセージをお届けしていきます。
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