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2017.06.22

相続税とは~基礎知識と計算方法~

被相続人(遺産を残す方)であるご両親や親戚の方が高齢になったとき、いざとなってから慌てることのないように、前もって考えておきたいのが相続税対策です。この記事では、相続税の基本的な知識と計算方法についてわかりやすく解説していきます。

相続税とは

相続税の定義は、「人が死亡することを原因として財産が移転する際に、その財産に課される税」です。相続税の方式は世界中でさまざまな方法がとられていて、アメリカ合衆国、イギリス、韓国、台湾などでは、遺産課税方式を採用しています。この方式では、相続人の人数や相続分の割合は関係なく被相続人の財産額から税額を決定する方式です。そのため相続税の計算は簡単になります。

 

それに対して日本が採用している法定相続分課税方式は、相続人の人数や相続分の割合を細かく計算して相続人の状況に応じて相続税額を決める方式です。日本の相続税の計算が難しい理由はここにもあります。そして税率の高さですが、日本の相続税は最高税率55パーセントで先進国の中でも高い税率です。

相続税の目的

アメリカ合衆国にはこのような言葉があります。

「働いて得た収入を、遊興三昧で使い果たしてしまえば税は課さない。だが、もしお前が子どもを愛していて、自分の財産を残そうとするのなら、罰を与えよう。」

これは、子どものためにお金を残すな、という意味ではありません。所得税を取られたあと、蓄えた財産にさらに相続税をかけることは道義的に許されない。つまり相続税はおかしい、という意味なのです。

 

それでもなお、相続税をかけることには意味があります。

 

富の再分配

相続税を課税する意味のひとつは富の再分配です。この場合の富の再分配とは、お金持ちの家系はずっとお金持ちのまま、貧乏な家系はずっと貧乏なままという状況を是正することだと言えます。
では、どのような方法で富の再分配を行うのでしょうか。日本では累進課税という制度により、相続財産が少ない人は少額又は非課税とし、相続財産の多い人には高額な相続税を課することによって、土地や資産を社会に還元させる方法でこれを行っています。

 

所得税の補完機能

もう一つの意味は所得税の補完機能です。 被相続人は生存中に、社会的、経済的事情から、所得税の軽減を受けてきた可能性があります。その結果蓄積された財産に相続税を課することで、所得税の軽減分を清算しようという考えです。

 

平成27年の相続税法改正

5つの改正ポイントをご紹介します。

 

1.税率区分の改正



上の表のように、それまでの6段階から8段階にかわり、40%課税されていた相続金額1億円超から3億円以下の区分から、2億円超から3億円以下が分けられ、45%課税となりました。
また、新たに相続金額6億円超の区分が加わり、55%課税になりました。

 

2.基礎控除の改正

基礎控除は、納税者の負担軽減のため、一定額を課税対象から差し引く(控除する)制度です。

 

  • 改正前 5000万円+(1000万円*法定相続人の人数)
  • 改正後 3000万円+( 600万円*法定相続人の人数)

 

上記のように、基礎控除の金額が改正前の60%に減額され、相続税の申告が必要になる方がかなり増加すると考えられます。

 

3.未成年者控除の改正

未成年者控除は、未成年者が相続人になる場合に、一定額の控除を受けることのできる制度です。

 

  • 改正前 満20歳になるまでの年数* 6万円
  • 改正後 満20歳になるまでの年数*10万円

4.障害者控除の改正

障害者控除は、障害者が相続人になる場合に、一定額の控除を受けることのできる制度です。

 

  • 改正前 障害者が85歳になるまでの年数* 6万円 (特別障害者は12万円)
  • 改正後 障害者が85歳になるまでの年数*10万円 (特別障害者は20万円)

 

5.小規模住宅等の特例

相続人が被相続人の配偶者であること、あるいは同居していた親族であることなどを要件として、最大で80%土地の評価額が下がる制度です。

 

  • 改正前 居住している宅地の限度面積 240㎡
  • 改正後 居住している宅地の限度面積 330㎡

 

事業用でも居住している場合の基準も緩和されました。被相続人が2世帯住宅、老人ホームに入っていた場合なども改正後は要件を満たせば、特例を受けられるようになっています。

 

相続税の計算方法

電卓

相続税の計算はどのように行えばいいのでしょうか、ここで一例を示します。 まずは、相続財産金額を計算して、次に、基礎控除額を出します。相続財産金額から基礎控除額を引いた金額が、課税対象額になります。ご自分で計算する場合、わからないことがあれば国税庁のホームページで調べて見るのもいいでしょう。

国税庁ホームページの画面左端にある「訪問者別に調べる」の「個人の方」項目で調べることで詳しい説明を見ることができます。より優しく説明を受けたいという方は、税務署に行くことで、直接的なアドバイスを受けることができます。

 

課税遺産総額の計算

まずは、相続財産を計算していきます。

 

1.現金・預金・有価証券

現金や預金はそのままの金額で計算します。有価証券の種類には、株券、手形、金券、船荷証券、小切手などがありますが、ここでは評価の難しい株券を見てみましょう。
上場していない株式の場合では、経営支配力を持つ株主(議決権割合が一定割合以上で、経営に関与しないする株主)の場合は、原則的評価方式で計算します。経営支配力を持たない場合は、配当還元方式で計算します。
上場企業の場合は、相続開始日の終値、相続開始日が属する月の終値の平均額、前月の終値の平均額、前々月の終値の平均額のうち一番安い額で評価します。

 

2.不動産

市役所の税務課に行き、故人の不動産の課税評価額を出してもらいます。小規模住宅等の特例を受ける場合は申告が必要です。

 

3.動産

骨董品や、自動車など価値のあるものは、原則として売買実例価格(実際に売買された金額例)、精通者意見価格(専門家がつけた価格)等を参考に評価します。

 

4.死亡退職金や生命保険

金額のうち、非課税限度額を超えた分が加算されます。
非課税限度額=500万円*法定相続人の人数

 

5.課税遺産総額

1~4の金額を全て計算して足したものから借金(故人の死亡時確定しているもの)、ローンや葬儀費用を引いたものが相続税金のかかる課税遺産総額となります。 故人が保証人になっていた場合、原則債務控除の対象となりませんが、連帯保証人の場合は、債務控除になる場合がありますので注意が必要です。 あとになって特定の財産を計算に入れたか否かで混乱するのを防ぐために、一覧表にしておくことをお勧めします。税務署に質問されたときにも役立ちます。

 

※相続財産の評価額については、「相続税評価額とは?相続税における土地などの評価方法」において詳しく解説しています。

基礎控除額の計算

基礎控除額は、法定相続人の人数に応じて決定します。以下の計算式にあてはめて、そもそも相続税がかかるのかどうかを確認しましょう。

 

3000万円+(600万円*法定相続人の人数)

 

各人の相続税の計算

住宅と車

では課税遺産総額と基礎控除額などを、実例を挙げて計算してみましょう。
例)被相続人 夫(60)残したプラス遺産:(家・土地・預金・動産)2億6800万円
遺族と相続配分は下記のとおりです。

なお、故人の負債には、住宅ローンと、車のローンがありました。

1. 課税遺産総額

(2億円)=相続財産2億6800万円-家のローン1500万円-車ローン200万円-葬式代300万円-基礎控除(3000万円+(600万円*3人)

2. 課税遺産総額2億円を法定相続分で分割

【妻2分の1・子ども各4分の1】

  • 妻 1億円
  • 長男 5000万円
  • 長女 5000万円



 

3. それぞれの相続税を前述した上の表を使って算出します

  • 妻 1億円*30%-700万円=2300万円
  • 子ども各 5000万円*20%-200万円=800万円

 

4. 全員の相続税額を足します

2300万円+(800万円*2)=相続税の総額(3900万円)

 

5. それぞれの実際の配分比率で相続税の総額を配分します

 

  • 妻  3900万円*50%=1950万円 配偶者は法定相続分までは相続税がかからないため相続税は0円
  • 長男 3900万円*30%=1170万円 そのまま1170万円の相続税がかかります。
  • 長女 3900万円*20%= 780万円 未成年控除で12万円が引かれて、相続税は768万円となります。

 

まとめ

自分で相続税は非課税であると判断しても、あとになって税務署から「相続税に関するお尋ね」という書類が来ることがあります。調査に使った書類はすべて残しておきましょう。

 

相続税は簡単な計算式で出てくるものではありませんが、だからといって一般の方にはできないものでも決してありません。今日では、税務署も質問をすればしっかり答えてくれます。相続発生時における相続税の計算と申告を自分でやってみようという方はぜひ頑張ってみてください。

この記事を書いた人
前田 慶太
朝陽行政書士事務所 所長、行政書士。30年間の職歴のうち25年間をスーパーの店長や、ツアーコンダクターで従事。様々な人と触れ合ううち相続問題で困っている方が大変多いことを憂い、行政書士業に参入。現在、特定行政書士として、全国相続協会相続支援センターに加入、また、名古屋入管申請取次資格も取得し、現在増えつつある、外国人配偶者の問題にも対応しています。
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