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2021.02.25

不動産相続には何が必要?手続きや費用について解説

親や親族が不動産を所有していると、亡くなった際に相続手続きが必要です。しかし、不動産手続きが初めてだったり慣れていなかったりすると「どんな書類が必要?」「費用はいくらぐらいかかるの?」など、疑問に思うことも多いのではないでしょうか?また、相続する不動産に誰も住まない場合は、空き家整理を行う必要も出てきます。

そこで今回は、不動産相続で準備する書類や手続きの流れ、費用について解説したうえで、空き家を相続する際の注意点と整理方法を詳しくご紹介します。

不動産相続の手続きの流れ

故人に財産ある場合、亡くなってから10ヶ月以内に相続税の納付と申告をする必要があります。
しかし、相続税を納付するまでには、誰が相続人となるのか、相続方法はどうするのかなどを親族間で話し合っておかないといけないため、手続きが完了するまでには案外時間がかかります。
そのため、「納付期限に間に合わない」と直前になって慌てることがないよう、事前に手続きの流れを把握しておきましょう。

この章では、不動産手続きの一般的な流れをご紹介します。
今回は不動産手続きについて解説していくため、ここでは、故人が不動産を所有していたと仮定して、話を進めていきます。

※相続や税に関する法律は、社会情勢に合わせて内容が見直され、法改正が行われることがあります。
この記事では、2020年時点での法律に沿って、不動産相続の手続きの一般的な流れを解説しています。

 

①遺言書の捜索

まずは、亡くなった方の遺言書が残されていないか捜索します。
もし遺言書が見つかったら「公正証書遺言」という文言が封筒に書かれているかチェックしましょう。
遺言書には「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」の2種類があります。
公正証書遺言は、故人が生前に手続きをしており、原本も公証役場に保管されているのでその場で開封しても構いません。
しかし、自筆証書遺言だと、その場で開封することで改ざんを疑われる可能性があります。
そのため、家庭裁判所で開封するようにしましょう。

 

②相続人の決定

次に、相続人を決定します。
故人の出生時から死亡までの連続した戸籍謄本を取得して、親族関係を確認し、遺産を相続する権利が誰にあるのかを把握しましょう。
あるいは、法務局で相続情報を証明してもらうことも可能です。

 

相続人の順位

相続人になれる人や順位は法律で明確に決められています。
2020年時点の法律では、法定相続人になれるのは、故人の配偶者と血族です。
以下に、相続人の順位を箇条書きでまとめました。

 

・配偶者……必ず相続人となる
・第1順位……故人の子ども・養子・孫
・第2順位……故人の父母
・第3順位……故人の兄弟姉妹

 

たとえば、故人の配偶者がすでに亡くなっており、子どもが3人いた場合は、法定相続人は3人となります。

 

②相続の選択

相続人は、遺産を相続するか、放棄するかを選択することが可能です。
相続財産には、家や土地といった不動産、預貯金といったプラスの財産だけなく、借金やローンの残債等のマイナスの財産も含まれます。
そのため、相続人は、相続の選択をする前に故人の財産の全容を把握しておくことが大切です。
相続の方法には「単純承認」「限定承認」「相続放棄」の3種類があります。
以下に、それぞれの方法の内容をまとめました。

 

単純承認

プラスの財産もマイナスの財産も含めて、遺産をすべて相続する方法です。
単純承認の場合は特別な手続きは必要ありません。
相続の開始を知った日から3ヶ月経過すると、単純承認をしたとみなされます。

 

限定承認

プラスの財産の範囲内のみで相続する方法です。
故人の遺産の全容が把握できていない場合や、一部の財産のみを相続する場合に利用されます。
限定承認は、相続の開始を知った日から3ヶ月以内に手続きが必要です。
手続きは裁判所を通して行われ、必要な書類も多いことから、あまり利用されることはありません。

 

相続放棄

プラスの財産もマイナスの財産も含めて、すべての相続権を放棄する方法です。
故人に借金があり、マイナスの資産が多い場合によく用いられます。
相続放棄も、ほかの方法と同様、相続の開始を知った日から3ヶ月以内に手続きが必要です。
なお、放棄の手続きが完了するまでに故人の預金を引き出したり形見分けをしたりすると、単純承認したとみなされる可能性があるため注意しましょう。

 

④遺産分割協議

遺言書がある場合は、その内容にもとづいて故人に遺産を分割します。
遺言書が残されていない場合や、記載されていない財産が見つかったときは、民法で定められた財産分与の割合に沿って分割するか、相続人で話し合って分け方を決めましょう。

 

遺産分割の話し合いは、相続人全員の合意が必要です。
複数の相続人がいて、話し合いに参加していない人がいたり、1人でも遺産分割協議書への署名・押印を拒否したりすると、無効になってしまいます。
あとでトラブルにならないよう、遺産分割協議は相続人全員で行うことが大切です。

不動産の分割方法

相続する財産に家や土地といった不動産が含まれているときは、現金のように分けることが困難なため、以下のような方法で分割します。

 

① 現物分割
家や土地をそのまま分割して相続する方法です。
不動産が複数あるときに、長男がAの土地を相続、次男がBの土地を相続するといった分け方を指します。

 

② 換価分割
不動産を売却し、その売却金額を相続人それぞれで分割する方法です。

 

③ 代償分割
不動産を取得した相続人が、ほかの相続人に不動産以外の資産を渡す方法です。
長男が不動産を相続し、不動産の価値と同様の現金を渡すケースなどを指します。

 

④ 共有相続
相続人全員で同じ不動産を相続する方法です。共有名義となるため、売却の際は名義人全員の合意が必要となります。

 

⑤不動産の名義変更【相続登記】

遺産分割協議が終わって土地や家を相続することになったら「相続登記」を行いましょう。
相続登記とは、法務局で申請をして、不動産の名義を相続人に変更する手続きのことです。
期限は特に決められていませんが、未登記のままにしておくと、相続人のひとりが亡くなったときに新たな相続人が発生して、権利関係が複雑になるかもしれません。
親族間の相続トラブルを防ぐためにも、相続登記はすみやかに行うことをおすすめします。

 

⑥相続税の申告と納付

相続登記が完了したら、相続税の金額を計算し、申告書を作成します。
その後、必要書類を添え、故人の住所地を管轄する税務署に申告書を提出すれば、手続きは完了です。

 

不動産相続に必要な書類一覧

では、不動産相続を行うにあたり、どのような書類を準備すれば良いのでしょうか?
ここでは、手続きの内容別に必要な書類をご紹介します。
なお、法改正があると、それに伴って必要な書類が変更となる可能性もあります。
ここでは、2020年に手続きを行うと想定して、必要な書類をまとめました。

 

相続登記の際に必要な書類

相続登記を行い、相続する家や土地の名義変更を行う場合に必要な書類は以下の通りです。

 

・被相続人の戸籍謄本……出生時から死亡時までの一連の戸籍の流れがわかるもの
・被相続人の住民票の除票もしくは戸籍附票……本籍の記載が必要
・相続人全員の戸籍謄本……故人の死亡日以降に取得したもの
・相続人全員の住民票
・相続人全員の印鑑証明書
・固定資産額評価証明書もしくは固定資産税の課税明細書
・相続不動産の権利書
・死亡届……コピーで可
・相続関係説明図……手書きでも可。用紙のサイズにも規定はない
・遺産分割協議書……遺言書がある場合は不要

 

相続税申告の際に必要な書類

税務署で相続税を申告するときに必要な書類は以下の通りです。

 

・被相続人の戸籍謄本……出生時から死亡時までの一連の戸籍の流れがわかるもの
・被相続人の住民票の除票もしくは戸籍附票……本籍の記載が必要
・相続人全員の戸籍謄本……故人の死亡日以降に取得したもの
・相続人全員の住民票
・相続人全員の印鑑証明書
・固定資産額評価証明書もしくは固定資産税の課税明細書

 

上記の6つの書類は不動産の相続登記の際にも必要となるため、取得する際は各2通ずつ準備しておきましょう。

そのほかには、以下の3つの書類も必要です。

・相続不動産の登記簿謄本もしくは全部事項証明書
・地籍測量図
・公図の写し

 

なお、相続税申告の際は不動産だけでなく、財産に関わるさまざまな書類を準備しなければいけません。
葬儀にかかった費用がわかるものや、通帳、負債があれば残高証明書なども用意しておきましょう。

 

土地や家などの不動産を相続する際にかかる費用

不動産相続の手続きでは、さまざまな諸費用が発生します。
次に、土地や家などの不動産を相続する際にかかる費用を見ていきましょう。
ここでは、2020年時点の情報をもとにかかる費用を計算しています。

 

相続税

相続する資産の総額が基礎控除額を超えるときは、相続税を支払う必要があります。
相続税の対象は、不動産、預貯金、車、骨とう品など、故人の財産にあたるものすべてです。
そのため、不動産以外の資産も相続する場合は、遺産の合計金額で相続税を計算しましょう。
税額は、以下の手順で算出できます。

 

1. 遺産の総額を計算する
2. 基礎控除額を計算する……「3,000万円+相続人の人数×600万円」で算出します
3. 遺産の総額から基礎控除額を引く
4. 法定相続分で相続すると仮定し、3の金額を相続人それぞれに振り分ける
5. 4の金額にそれぞれの相続税の税率をかけて、相続人全員分の税額を算出
6. 5の金額を、実際に相続する割合で振り分ける

 

なお、配偶者が相続人となる場合は、1億6,000万円まで非課税枠があります。
仮に夫が亡くなり1億円の遺産があったとしても、妻1人が全額を相続するのであれば、課税額は0円です。
基礎控除額の金額や、相続税の詳しい計算方法については、国税庁のHPで掲載されていますので、そちらを参考にするとよりわかりやすいでしょう。

(国税庁:相続税の計算と税額控除

 

登録免許税

登録免許税とは、相続登記の際に発生する税金です。
金額は、不動産の固定資産税評価額の0.4%となっており、土地と家のそれぞれの名義変更が必要な場合は「(土地の金額+家の金額)×0.4」の費用が必要です。

 

例①
固定資産税評価額2,000万円の土地の相続登記を行う場合
2,000万円×0.4%=8万円

 

例②
固定資産税評価額2,000万円の土地と1,000万円の家の相続登記を行う場合
(2,000万円+1,000万円)×0.4%=12万円

 

提出書類の取得費用や郵送費用

相続税と登録免許税以外には、必要書類を取得する費用が掛かります。
人によって必要書類の数は変わってくるため金額にも差はありますが、おおよそ5,000~20,000円程度かかると考えておくと良いでしょう。
遠方から書類を取り寄せたときは、発行料のほかに、郵送費用もかかります。

 

手続き代行費用

不動産相続は自分で行うこともできますが、集める書類が多かったり法務局に出向いたりする必要があるため、司法書士に手続きを依頼する人もいます。
報酬額は専門家によって違うため一概には言えませんが、不動産1件あたり60,000~80,000円程度が相場です。

 

相続する不動産が空き家の場合の注意点

すでに持ち家があったりの不動産の所在地が自宅から遠く離れていたりすると、相続しても自分で住むことがなく、そのままの空き家の状態が続いてしまうかもしれません。
空き家になっている家や、今後誰も住む予定がない家を相続した場合、どのようなことに注意すれば良いのでしょうか?

 

注意点①:空き家でも税金が発生する

たとえ誰も住んでいない空き家であっても、その不動産を所有している間は固定資産税と都市計画税の支払い義務が発生します。
税金を滞納すると延滞税がかかったり、最悪の場合は滞納者の財産が差し押さえられたりするかもしれません。

 

通常、空き家が住宅用地になっていて、敷地面積が200㎡以下であれば、固定資産税の減免対象となり、税額は通常の6分の1で済みます。
しかし、放置して建物の劣化が進んで「特定空き家」に指定されてしまうと、減免措置が適用できなくなるため、固定資産税が高額になってしまうのです。(2020年時点の「空家等対策特別措置法」の内容より)

 

注意点②:相続放棄をしても管理義務が残る

誰も住む予定がない物件であれば、相続人全員で話し合い、空き家を相続放棄することもできます。
しかし、相続放棄をしても、次に相続人となった人が空き家の管理を開始するか、裁判所によって選任された管理人が管理を始めるまでは、引き続き管理義務は残ります。

 

相続人である以上、相続をしていなくても空き家の管理をしないといけません。
万が一管理義務を怠り、近隣の住宅や住民に損害を与えてしまうと、相続人が法律によって罰せられる可能性もあるのです。

 

注意点③:相続登記をしないと売却ができない

相続登記をしないままでいても法的に問題はありません。
しかし、名義変更をしないと売却はできないため、たとえ空き家であっても管理と税金の支払いを続けることになってしまいます。
何年も経ってから相続登記をしようとしても、その間に相続人が亡くなっていて新たな相続人が増えるなど、手続きに膨大な時間と手間がかかってしまうのです。

 

【空き家を相続】その後の活用方法について

空き家をそのまま所有しているだけだと、固定資産税の支払いが続き、維持管理にもお金が必要です。
だからといって空き家を放置すると、特定空き家に指定されたり、損害賠償責任を問われたり、不法投棄や火災の原因になったりなど、さまざまなリスクがあります。
では、空き家を相続したらどうするのが良いのでしょうか?

 

ここでは、空き家の整理・活用方法についてご紹介します。

 

まずは家財整理が必要

空き家には前の住人の家財道具がそのまま残っていることがあります。
まずは家財を整理し、家の中をきれいにすることから始めましょう。
捨てる物、売れそうな物、貴重品、思い出の品で残しておく物などいくつかのジャンルに分け、荷物を仕分けていきます。
捨てる物は不法投棄せず、自治体のルールに沿って処分しないといけません。
売れそうな物は、リサイクルショップやネットオークションを利用するのがおすすめです。
一通り荷物の整理を終えたら、最後に家の中や庭を掃除しましょう。

 

賃貸に出す

空き家に住まない場合は、賃貸に出すという方法もあります。
家賃により固定収入を得られるというメリットがありますが、築年数によっては貸し出す前にリフォームが必要です。
地域の家賃相場や借り手がいそうかどうかも考えながら、慎重に判断することをおすすめします。

 

売却する

名義変更が済んでいれば、空き家を売却することも可能です。
ただし、すぐに買い手が見つかるとは限らないため、売却が決まるまでは空き家の管理や税金の支払いは続けないといけません。
仲介手数料や接客対応は不動産会社によって差があるので、希望に沿った売却ができるよう、信頼できる会社を見つけることが大切です。

 

空き家バンクを活用する

全国の自治体やNPO団体が主体となって運営を行っている「空き家バンク」を利用するという方法もおすすめです。
登録は無料となっており、運営元が空き家をPRしてくれるため、自分で入居者や購入希望者を探す手間を省けます。
空き家バンクに登録すると修繕費に対して補助金が下りることもあるため、金銭的な負担を軽減できるのも大きなメリットです。

 

【関連記事】相続した実家(空き家)をどうする?空き家問題の現状と対策

 

まとめ

不動産相続は、相続人の決定や名義変更などやることが多い上に、書類を集める手間もあります。
しかし、家族や親族が不動産を所有していれば、その方が亡くなった時に自分が相続することになるかもしれません。
いざという時に慌てないよう、この機会に不動産相続の段取りを覚えておきましょう。

 

また、相続した家が空き家である可能性もあります。
空き家を放置するとさまざまなリスクが生じますので、早急に対策方法を考えることが大切です。
まずは空き家の状況を確認し、家の中に家財が残されていれば整理を行いましょう。

 

思い入れのある実家や親族の家であれば自分で整理をしたいところですが、空き家整理は時間と労力がかかり、長年放置された家財にはカビが生えているなど、衛生的な問題もあります。
そのため、空き家整理を自分で行うのが大変だと感じたときは、プロの整理専門会社のサービスを利用するのもひとつの手です。
ワンズワイフでは、遺品整理のほか、空き家整理のご依頼も承っております。
司法書士や不動産会社とも提携していますので、家財整理後のリフォームや売却についてご相談いただくことも可能です。
空き家整理についてお悩みの方は、ワンズライフにお気軽にお問い合わせください。

 

この記事を書いた人
One's Ending編集部
関東の遺品整理専門会社(株)ワンズライフのメディア編集部です。 遺品整理、生前整理、空家整理に関することから、終活、相続税に関することまで。人生のエンディングにまつわる、役に立つ情報やメッセージをお届けしていきます。
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