2019.05.10 (2022.08.30 One's Ending編集部 加筆)
親が片付けられない理由は認知症の初期症状かも?実家を片付けるときの注意点
久しぶりに帰省したときに、実家が散らかっていて驚いたことはありませんか?
「きれい好きだった母なのに、今ではゴミ屋敷状態の家に住んでいる」
「何度も説明しているのに、父が壊れたものをずっと捨てずに残している」といった悩みを持つ人は、少なくないはずです。
親が片付けられなくなったのは、認知症のせいかもしれません。
認知症の種類にもよりますが、早めに対処すれば、進行を遅らせることが可能です。
また、認知症が原因でゴミ屋敷状態になっている場合、片付け方を間違えると、より症状を悪化させる可能性もあります。
そこで、今回の記事では、実家が散らかっている原因の1つである認知症にスポットを当て、親への対処法や片付けるときの注意点をご紹介します。
少しでも思い当たるところがある方は、ぜひこの記事を参考に早めに対策を考えてくださいね。
認知症を疑う状態とは?
認知症は、年をとればとるほどなりやすいものです。
厚生労働省のホームページ(※)によると、日本における65歳以上の認知症の方は2020年に約600万人と推計され、2025年には約700万人になると予測されています。
これは、高齢者の5人に1人が認知症になるという計算です。
※出典:厚生労働省「認知症」
認知症?それとも加齢による物忘れ?
認知症に似ているものとして、加齢による物忘れがあります。
人や店の名前などがとっさに出てこないというのは、誰もが経験したことがあるはずです。
「親の物忘れがひどくなった」と、感じていても加齢によるものだと思い込んで、認知症だと気づかないケースもあります。
認知症の特徴を挙げると、単なる物忘れではないとわかるはずです。
・いつもやってきた仕事や家事でミスが起きるようになる
・慣れている道で迷子になる
・お金の勘定ができなくなる
・話が通じなくなる
・ボーっとしていることが増える
・妄想がある
このような様子が見られたら、早めに専門医を受診するのがおすすめです。
早期対応することで、認知症の進行を遅らせられるかもしれません。
また、認知症の初期は、「まだら認知症」といって、忘れっぽいときとしっかりと判断しているときとが入り混じっている状態です。
まだら状態だと、自分の親が認知症だと認めたくない気持ちもあり、「やっぱり物忘れだったのだ」と、決めつけがちですが、早めに専門医に相談しましょう。
片付けができない=認知症?
認知症というと、記憶がなくなるというイメージが強いかもしれません。
しかし、片付けができなくなることも、認知症の方によく見られる現象です。
それは、ものを片付けるという行為が、記憶力と判断力を必要とするものだからです。
私たちがものを片付けるとき、「どこに置くか」「捨てるか?それとも、保管するか?」など、実に多くのことを判断しています。
また、ものを元々あった場所に片付けるときは、どこに置いていたのかを覚えておく記憶力が必要です。
認知症では、この2つの能力が低下してしまいます。
このため、認知症の方はどこに置いたのか覚えていなくて、ものを探し回ったり、ものを捨てるという判断ができずにゴミを家に溜めてしまったりするのです。
片付けができない原因はほかにも考えられます。
高齢者特有の問題だけでなく、若い世代も知っておきたい原因もあるので、ぜひこちらの記事もチェックしてください。
【関連記事】親が片付けられない症候群かも!?どうする遺品整理!
【関連記事】片付けられない症候群の特徴と改善策とは?部屋を片付けられない原因は病気や障害かも?
認知症の多く見られる「物盗られ妄想」
認知症の方と関わるとよく見られる「物盗られ妄想」も、家が散らかる原因の1つです。
物盗られ妄想とは、認知症の方が「泥棒に入られた」や「〇〇を盗まれた」などと、訴えることを指します。
ほとんどの場合、実際には何も盗られておらず、認知症の方の妄想なのです。
物盗られ妄想があると、「大切なものを盗まれないようにしよう」と、普段収納しない場所にものを隠しがちです。
どこに隠したのかを忘れてしまうと、自分で隠したのに、なかなか見つからず探し回ることになります。
すると、家中が散らかってしまうのです。
認知症で片付けができなくなると、何が起きる?
親が認知症になり、片付けができない状態になると、具体的に何が起きるのでしょうか?
家の中が散らかることは以下のような危険につながります。
・物につまずいて転倒しやすくなる
・不衛生で不健康になる
・現金や預金通帳、大切な書類などが見つからない
・火災などの危険がある
実家が散らかった状態で、親が認知症かもしれないと思ったら、上に挙げた危険性を意識して対応していきましょう。
認知症の親の家を片付けるコツと注意点
認知症の親の家を片付けようとしたときに、「勝手に掃除や片付けをしないで」や「捨てるものは1つもない」と、片付けを拒否された方も多くいらっしゃるでしょう。
トラブルを避けるためにも、片付けるときのコツと注意点をご紹介します。
動線を確保できればOKと考える
実家が散らかっているのを見ると、「早くきれいにしたい」と、子ども世代としては焦りがちです。
すべて一気に捨ててしまいたいと感じるかもしれません。
しかし、すべてを片付けることで、生活環境が変わってしまい、認知症の親を混乱させる可能性があります。
すると、認知症を悪化させることにつながるかもしれません。
このため、認知症の親の家を片付けるときは、動線の確保を最優先に考えましょう。
とりあえず転倒しなければよいと考え直して、廊下や階段にあるものだけ片付けます。
とくに、寝室からトイレまでなど、行き来する場所を優先的に片付けるのがおすすめです。
本人にとって馴染みのあるものは処分しない
子どもから見ると古びたものであっても、親が愛着を持っている場合もあります。
本人が大事にしているものを処分するのはやめましょう。
大事なものを捨てられたという悲しみで、無気力になってしまったり、捨てられたことを忘れて探し回ったりする可能性もあります。
どうしても片付ける必要があるものであれば、親と一緒に片付けるようにしましょう。
大切にしているものを勝手に処分しないということは、親が認知症でない場合にも気をつけたいポイントです。
実家の片付けをする際は、親とのトラブルが起きやすいので、こちらの関連記事も参考にしてください。
【関連記事】片付けられない親と喧嘩せずに生前整理をするコツ
ゴミ出しをサポートする
親世代の現役時代と比べて、現在はゴミ出しのルールが難しくなっています。
一般の人でも苦手という人が多いゴミ出しのルールを、認知症の方が理解して、分別したり曜日ごとに出したりするのはかなり難易度です。
ゴミを捨てられないのはゴミ出しが難しいことが要因の可能性があるので、ゴミ出しのサポートをおすすめします。
定期的に訪問できるようであれば、自分でゴミ出しのサポートをしてもよいですし、ヘルパーさんなどに相談するのもよいでしょう。
危険なものは目につかない場所へ
刃物や薬品、火器など危険なものは、認知機能が低下した人の目には触れない場所に保管してください。
とくに注意したいのが、ろうそくや線香、ライターなど火器が多い仏壇です。代用品としてろうそく型の照明を使うなど、細心の注意を払いましょう。
片付けのゴールは、「安全に安心して暮らせること」
高齢者の5人に1人が認知症になる時代です。
認知症になると、認知機能が低下して、今まで当たり前にできていた片付けが難しくなります。
しかし、「認知症だから仕方ない」といってそのまま放置していると、部屋中にたくさんのゴミや物があふれて不衛生になりますし、何かにつまずいて転倒したり、場合によっては骨折したりすることもあります。
危険なものを取り除いたり動線を確保したりして、高齢の親が安心して暮らせることを最優先に片付けをしましょう。
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