2018.06.24
グリーフケアの意味とは~身近な人を失った悲しみを乗り越える方法~
大切な人を亡くした方が身近にいる時…。
周囲の皆さまは「少しでも元気になってもらいたい」「悲しみを乗り越えてほしい」という思いから、さまざまな声掛けや行動を起こそうとします。
しかし、相手のためを思って起こした言動が、かえって相手を傷つけてしまうケースも少なくありません。
そこで今回の記事では、身近な人を失った方に寄り添いサポートする「グリーフケア」の意味をご紹介いたします。悲しみを乗り越える方法についてもまとめてみたので、ぜひ参考にしてみて下さいね。
グリーフケアとは
グリーフという言葉は、日本語は「深い悲しみ」や「悲観」と訳されます。
つまり、グリーフケアをそのまま訳すと「深い悲しみや悲観に対する世話」という意味になるのです。
人が大切な人を亡くしてから立ち直るまでに、「12のプロセス(過程)をたどる」と言う専門家もいるほど、深刻に思い悩んでしまう大変な時期になります。
このような時期だからこそ、周囲はそのプロセス(過程)を乗り越えていけるよう、継続的にサポートしていく必要があるのです。
専門のグリーフケアアドバイザーを養成している「日本グリーフケア協会」は、グリーフケアについて、「喪失と立ち直りという二つの間で揺れ動いて不安定な状態となった人に対し、さりげなく寄り添ったり援助したりすること」と定義しています。
大切な人が亡くなった深い喪失感と、「悲しみを乗り越えなくてはならない。」という気持ち。
上記のような2つの思いの狭間で揺れ動き、不安定になりながらもさまざまな過程を経て、悲しみを乗り越えられるまでサポートすること。
それが、グリーフケアです。
グリーフケアの歴史
グリーフケアは1960年代に欧米で提唱され、日本でも1970年代頃より研究が開始されました。
この研究が始まった背景には、医療の進歩に伴う平均寿命の延長および、核家族化・非婚化に伴う家族の在り方の変化が関連すると考えられています。
日本香堂によると、日本中でグリーフケアという言葉が浸透し始めたきっかけは、2003年に起きた福知山線脱線事故でした。
あまりに不条理な死を受け入れなくてはならなかったご遺族に対し、2009年にグリーフ専門の研究機関である「グリーフケア研究所」が設立されたのです。
日本では病気や事故以外にも、年間3万人を超える自殺者がいますし、阪神淡路大震災や東日本大震災などの自然災害を理由に大切な人を亡くす方が存在します。
よってグリーフケアの専門家でなくても、グリーフケアがどういったものかを知識をつけ理解しておくことは重要だと言えるでしょう。
一歩を踏み出すまでのグリーフケアの方法
大切な人と死別した方が新たな一歩を踏み出すために、周囲はどのようなケアを行えるのでしょうか。
故人について語りあう
亡くなった方についてあれこれ話すと、故人と過ごした時間(場面)を思い出すので、あまり良くないのでは?と複雑な心境を感じた方もいるかもしれません。
しかし、悲しみという感情は、外に表出することで少しずつ乗り越えられるとされています。
よって故人との思い出を語ったり、故人宛てに手紙や文章を書いてみたりすることは、自分の悲しいという感情を外へ出すという意味で、非常に有効的な方法だと言えるのです。
また、故人の遺品整理を行うのも、これまで過ごしてきた思い出を振り返り、悲しい感情を乗り越える一歩として大切です。
思いを吐き出す
人間は大切な人が亡くなったことに対して、「自分があの時、もっとこうしていれば…。」という後悔や「なんで突然いなくなってしまったの?」という怒り等、悲しみ以外のさまざまな感情も複雑に入り乱れるとされています。
このような普段抑えていた感情を思い切り外へ吐き出すということも、グリーフケアとしては非常に有効です。
「周囲にいる人へ直接自分の思いを吐き出してもらう」という方法もあります。
しかし、中にはたとえ身近な人であっても、自分の思いを吐き出すことに対して戸惑いを感じる方もいるでしょう。
そうした方へおすすめするのが、地域や病院などで開かれている、家族や遺族の会へ参加することです。
同じような境遇で大切な人を亡くした方同士、お互いの気持ちがわかるからこそ、自分の思いを素直に吐き出すことができ、それが悲しみを乗り越える第一歩へと繋がります。
セレモニーを行う
お通夜やお葬式(葬儀)など、故人とお別れする儀式を行うこと自体が、グリーフケアであるといえます。
遺品の整理も、グリーフケアに当てはまるといえるでしょう。
儀式を通して、その方が亡くなったということを現実として受け止められるからです。
セレモニーを行うにあたって大切なのは、あくまでも自身の感情を押し殺さず、素直に自分の想いを吐き出すことです。
周囲の視線を気にするあまり、感情を押し殺してしまう状態は、それだけ悲しみを乗り越えることが困難になるのです。
よって周囲の方は、素直に自分の感情を吐き出して表現できるように、サポートしてあげるとよいでしょう。
遺骨を納める
お墓に納骨すると、故人が離れた場所にいくような気がしてしまい、なかなか決心がつかないという方もいらっしゃいます。
しかし、法要を済ませた後にお墓へ納骨することは、故人への思いに一区切りつけるきっかけになり、事実を受け入れるための第一歩となります。
「ご本人が辛い中、無理やり納骨を進める」というわけではありません。
直接行動を起こさせるのではなく、納骨後もお墓参りを行って、遠く離れずにずっと気持ちの支えになると伝えることが、グリーフケアとして大切です。
グリーフケアを行うときに気を付けること
グリーフケアは、資格を所持しないとできない訳ではありません。
ごく一般的な人から専門家まで、様々な人が行うことができます。
では、一般人がグリーフケアを行う場合、前もって気を付けるべきことは何があるのでしょうか?
また、どのようなケースにおいて、より専門的なグリーフケアを受けるべきなのか流れを確認しましょう。
家族や親族、友人や知人など、身近にいる人がグリーフケアを行う場合
身近にいる人は、生前から相手を深く理解している分、どのように声掛けするべきか戸惑いがちです。
また、逆に親しい関係だからこそ介入しすぎてしまい、良くない結果をもたらす可能性もあります。
そのため、身近にいる人は「さりげなく寄り添う」ことを最初の活動目標にしましょう。
たとえば、大切な人の死に大きなショックを受けて毎日部屋にこもって泣き喚き、食事もまともに取れてない方がいたとします。
生活を共にしていた身近な人ほど、その方の精神状態や健康状況が心配になるでしょう。
酷く疲れ切っていた場合には、うつ病等の症状が現れるかもしれないため、いつも以上に気にかけてあげる必要があります。
また、寄り添いたい心境から「身体のためにも、少しは何か食べたほうがいいよ?」「そんなに泣いても、あの人はもう戻ってこないから頑張って前を向こう!」というように、ついその人の気持ちが前向きになるような言葉を言ってしまいがちです。
しかし、グリーフケアの原則は、個人の感情を素直に吐き出してもらうことです。
このような声掛けにより「泣いてはいけない。」「食べなくてはいけない。」といった悲しい感情へ逆らう行動を起こす場合があります。
それゆえ、乗り越える際により多くの日数を必要とする恐れがあります。
こうした危険を避けるためには、泣きたい時は泣く、落ち込んでいる時は落ち込む、怒りたい時は怒るなど、本人が感情に逆らわずに過ごせるよう、サポートしてあげることが大切です。
専門家に依頼するべきケースは、こんな時
大切な人を亡くした方の中には、その深い悲しみを経験するがゆえ、心身ともに不調をきたすケースもあります。
食事量が一時的に落ちていたりずっと泣いていたりする状態は、悲しみを受け入れる過程において、比較的多くの方に見られる特徴です。
しかし、受け入れる過程において負の感情を表に出すことができず、どうしようもない絶望感や不安に襲われる方もいます。
また、このような状態にあると周囲が危惧した場合には、専門的なグリーフケアを受ける必要があるのです。
人によって、悲しみを受け入れられる期間は異なります。
だからこそ、「大切な人の死を乗り越えられないなんて…。」とご自身に対して悲観的になっている方は、ぜひ専門的なグリーフケアを受けて相談するのがおススメです。
関連記事:「遺品整理がつらい、できない…」を乗り越える方法とは?グリーフケアとの関係
まとめ
日本人は周囲の目を気にするあまり、悲しみを外へ吐き出すことがなかなかできません。
けれども、心から故人を偲んで悲しみに浸ることは、自身が新たな一歩を踏み出すために必要な作業です。
無理に自分の感情を抑えようとせず、ありのまま十分に悲しむ時間を作ること。
それが、大切な人の死を受け入れ、乗り越える唯一の手段だと言えるでしょう。
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