2018.02.16 (2021.04.01 One's Ending編集部 加筆)
特殊清掃の仕事に求められる資格事件現場特殊清掃士について解説
特殊清掃とは、一体どんな仕事かご存知でしょうか?
孤独死や病死、自殺などによって住民が部屋の中で亡くなり、遺体の発見までに一定の時間がかかった場合、その場所にはハエ・ウジ等の害虫が大量に発生します。
また、遺体からは強烈な腐敗臭が発生し、壁や床に匂いが染みついてしまうことも少なくありません。
部屋の中がウイルスに汚染されていると感染症のリスクも伴うため、清掃には専用の機器や薬剤の使用、そして専門的な知識が求められます。
そのような時、お部屋の原状回復で頼りになるのが「事件現場特殊清掃士」の方々です。
この記事では、特殊清掃士の仕事内容、求められる資格、業者選びのポイントについてご紹介します。
特殊清掃とは?
まずは「特殊清掃」という言葉の意味を解説します。
一人暮らしの方の孤独死や事件・事故、自殺等が原因で部屋や敷地内で死亡事故が発生した場所のことを事故現場と言います。
特殊清掃とは、何らかの事情によって遺体の発見が遅れてしまい、臭いや害虫、体液、ウイルスなどで汚染された事故現場の原状回復を行う特殊な清掃作業のことです。
そのほか、特殊清掃では、長期間家庭ゴミが放置され、通常のハウスクリーニングでは対処が困難なゴミ屋敷の清掃作業を行うこともあります。
現在日本は核家族化の影響で単身者世帯が増え続けており、65歳以上の人がいる世帯では、全体の約27%が単独世帯となっている状況です。(参考:内閣府「高齢化の状況」より)
このようなことから、近年では一人暮らしの方の「孤独死」が急増しています。
孤独死された方は同居者がいないことから発見されるまでに時間がかかることも多く、原状回復には特殊清掃が必要となることも少なくありません。
さらに、高齢者の方が認知症やセルフネグレクトになって部屋の片付けや整理ができなくなったことで、自宅がゴミ屋敷化してしまうケースも多発しています。
高齢者人口や単身世帯の増加といった社会背景から特殊清掃の需要は年々高まっており、高齢者が増え続けていることを考えると、今後もその必要性は高まっていくでしょう。
事故現場の法的意味
どのような死亡原因が「事故物件」に該当するのかという定義は、法令で詳細に決まっているわけではありません。
過去の裁判の判例の解釈では、自然死や老衰は事故物件には当たらないとされ、事故や自殺、殺人事件等、基本的には自然死でないことが条件になります。
実際には、不動産会社や管理会社、大家さんがそれぞれの現場の状態を過去の判例に照らして事故物件に該当するかを判断することが多いようです。
ただし、どのような原因の死亡であっても、死後長期間に渡り発見されず、異臭が漂って周辺住民にその事実が広く知れ渡ってしまっているというケース場合は「心理的瑕疵」のある事故物件であると判例が出ています。
現場処理を行う警察においては、病死も含め「事故現場」と呼びます。
なぜ事故現場かどうかが問題になるかというと、入居者が亡くなった事件現場の物件を再賃貸する場合には「事故物件にあたるかどうか」が告知義務の件で問題となり、訴訟にまで発展する可能性があるほど、重要な意味合いを持つからです。
いずれにしても、不動産会社の方や物件を所有するオーナーは、周辺住民の精神的な負担を軽減するためにも、迅速な対応を取ることが大切だといえます。
【関連記事】事故物件を抱えたときに知っておきたい、定義や告知義務とは
事故現場特殊清掃士とは?
事故現場特殊清掃士とは、一般社団法人 事件現場特殊清掃センターが認定している民間資格です。
孤独死、事件・事故、自殺等、これらのことが起こった事故現場は、時間の経過によって、害虫、体液、ウイルス等により汚染されています。
特殊清掃士は、専門の知識と機材をもって、その部屋の原状回復を担うことが業務です。
残念ながら事故現場原状回復業務を請け負っている業者には、依頼者に法外な報酬を請求する業者や、きちんとした情報と知識を持っていない業者もいるのが実態です。
その中において、事故現場の原状回復に関する心構えや専門知識を学習して、依頼者にきちんと現場の状況を説明でき、原状回復業務を実行できるプロ。
そのような方々のことを事故現場特殊清掃士と言います。
特殊清掃士の仕事
特殊清掃士は、通常のハウスクリーニングだけではなく、事故現場の遺体の痕跡をなくし、お部屋の原状回復作業を行います。
なお、特殊清掃を請け負う企業によって業務の範囲と料金体系には違いがあるため、正確なサービス内容や料金ついては、実際に直接問い合わせて聞いてみた方が良いでしょう。ここでは、特殊清掃士が原状回復のために行う主な作業内容をご紹介します。
除菌・消臭
特殊清掃をする際には「まずは臭いを消臭」と言われているほど、消臭作業は重要です。
亡くなった方の発見までに時間が経ってしまうと、遺体からは腐敗臭が発生し、部屋や建物内全体に悪臭が充満します。
さらに、漏出した体液や血液には細菌が増殖しているので、誤って触れると感染症にかかってしまう恐れもあります。
そのため、部屋に入って家財の片付けを行う前に、強力なオゾン脱臭器や専用の薬剤を使用して、臭いと菌をできる限りなくします。
害虫駆除
遺体の発見が遅れてしまうと、室内にはウジやハエ等の害虫が発生します。
害虫が外部に逃げると感染症の媒介となって二次被害が起きるほか、シロアリやキクイムシなどが発生すると、建物そのものがダメージを受けてしまう恐れもあるのです。
そういった事態を防ぐため、殺虫スプレーや特殊な薬剤を噴射して、徹底的に害虫を駆除します。
解体やリフォームなどによる原状回復
特殊清掃では、最初に臭いのもとを除去してから、オゾン脱臭機器等で消臭作業を行っていきます。
ただし、それでも臭いや体液が落ちないときには、壁紙やフローリングの貼り替え、設備の入れ替えといったリフォームや、建物への負担を可能な限り抑えながら、解体をすることもあるそうです。
一部解体などが発生する場合、きちんとした特殊清掃を行う企業は、事前に依頼者へ確認をとってから仕事を進めていきます。
家財道具の搬出と遺品整理
事件や事故、病気等で突然亡くなってしまった方の部屋には、生前使用していた家財道具がそのまま残っていることがほとんどです。
特殊清掃士は、ハエやウジなどの害虫の駆除、体液などの染みの除去、殺菌等が一通り終わったあとは、家財道具の搬出と故人の遺品整理を行います。
洗浄、消臭作業をしても臭いが取り除けない遺品については、密閉梱包してから注意深く搬出し、自治体のルールに従って適切な方法で廃棄処分します。
また、部屋の中には、預金通帳や相続に必要な書類など、貴重品も数多く残されているでしょう。
こういった貴重品や故人の形見の品はご遺族にお返しすることもできますが、臭いや汚れが染み込んでいると、すべてに元通りにするのは困難です。
ご遺族には、お返しする前に遺品の状態を説明し、判断を仰ぎます。
特殊清掃士に必要な心構え
特殊清掃士に必要な心構えは、自己防衛と近隣・他者への配慮の気持ちです。
実際の事件現場には、感染症の原因となる細菌が発生していることがあります。
不用意に作業をするとその感染源に触れて自分自身が感染し、それをまた他者に感染させるといった二次被害も想定されるのです。
また、事故現場には独特の強い臭気が発生していることも少なくありません。
臭気に対しては、不用意に扉や窓を開けておくことにより、近隣に臭気をまき散らす可能性も考えられます。
そのため、特殊清掃の業務にあたる際は、常に自己防衛を意識し、近隣・他者を守るという心構えが必要です。
また、特殊清掃士の仕事には、強い精神力も求められます。
事件現場はすでに遺体が運び出されているとはいえ、吐しゃ物や血痕、体液、糞尿、腐敗して剥がれ落ちた皮膚が部屋の中に残っていることもあります。
特殊清掃士は、こういった遺体の痕跡を見ることがあるため、心に負担がかかります。
臭気に関しても、いまだかつて臭ったことのない臭いだと考えてください。
そのような環境下においても、常にお亡くなりになった故人様の最期を任せられているという責任感、ご遺族のことを想う使命感、そのようなプロ意識が必要とされます。
専門家として、お客様に「安心して任せられる」と思ってもらえるような活動をしていかなければなりません。
事件現場特殊清掃士に求められる資格
事故現場特殊清掃士の資格取得の手続きは「一般社団法人 事件現場特殊清掃センター」のホームページから行うことが可能です。
受講料を払い、講義を受けてレポートを提出し、一定の基準にまで達することができれば、事件現場特殊清掃士の資格を得ることができます。
資格取得までの流れ
以下は、事件現場特殊清掃士の資格を取得するまでの大まかな流れです。
1. 一般社団法人 事件現場特殊清掃センターへ受講の申し込みと入金
2. 教材セット( DVD、教本、資料集、問題集 )到着後受講開始
3. 教材により、知識・手法取得( 終了・認定までの目安は2カ月 )
4. 課題提出により一定のレベルで合格通知
5. 認定証書の発行
6. 事件現場特殊清掃士としての研修・活動を開始
資格取得のメリット
資格取得の勉強によって、事件現場特殊清掃のために必要な心構えはもちろんのこと、作業を安全に間違いなく行うために必要な正しい手順と方法も学ぶことが可能です。
また、有資格者ということで、依頼者やご遺族からの信頼を得ることにもつながります。
事故現場の原状回復作業の手順は、大まかにいうと以下の通りです。
1. 室内の消臭・除菌のための薬剤の噴霧
2. 害虫の駆除作業など各現場に応じた清掃業務、汚染個所の撤去
3. 専用の機材を使用した、薬剤の再散布。薬剤がかかってはいけないものにマスキングをする等正しい散布の手順を踏み、家財道具の変色・変質等を防ぐ
4. 退室後の作業員の除菌・消臭を行うことによるウイルス等の拡散防止処置
このように、正しい手順を学ぶことにより、作業の安全・正確性を保つことができるのです。
特殊清掃業者への相談が必要な事故現場とは
もし、ご自身が管理・所有する不動産で死亡事故が起こってしまった場合、どのような状況であれば特殊清掃を行う必要があるのでしょうか?
ここでは、特殊清掃士による清掃を行った方が良いケースと、遺品整理やハウスクリーニングで原状回復が可能なケースについて解説します。
特殊清掃業者への相談が必要となる事故現場
遺体が発見された時点で建物内に腐敗臭が充満している場合は、すでに害虫や細菌が繁殖していると考えられます。
お部屋の原状回復には特殊な機器や薬剤による消臭・除菌作業を行う必要があり、部屋に立ち入る際は、防護服や防毒マスクも欠かせません。
こういったケースでは専門的な知識や技術が求められるため、専門の会社に特殊清掃を依頼することをおすすめします。
季節や湿度にもよりますが、通常は亡くなってから1~2日経つと遺体の腐敗が進みます。
一例として、警察の検死の結果、死後24時間以上経過していたときや、温度・湿度の高い夏の時期、冬でも暖房をつけたまま亡くなっていた場合などは、特殊清掃が必要となる可能性が高いでしょう。
遺品整理やハウスクリーニングで原状回復ができることも
反対に、お部屋の中で入居者が亡くなっても、特殊清掃までは行わなくて良いケースもあります。
たとえば、入居された方が心臓発作で突然亡くなって数時間以内に発見され、外傷や出血もほとんど見られなかった場合などです。
このケースのように、ご遺体の腐敗もほとんどなく、血液や体液、排泄物による汚染も見られなければ、遺品整理と通常のハウスクリーニングで原状回復ができることもあります。
特殊清掃を専門の業者に相談するときに気を付けたいこと
万が一、あなたが所有する不動産で死亡事故が起きてしまい、特殊清掃を行う必要性が生じたときは、どのようなことに気を付けて依頼する会社を選べば良いのでしょうか?
ここでは、特殊清掃サービスをプロに依頼するときの注意点をご紹介します。
見積もりを取る
特殊清掃の料金は、お部屋の広さや亡くなった場所、作業にあたるスタッフの人数などで変動するため、一概に「〇円」と決まっているわけではありません。
企業のホームページに記載されている料金はあくまで目安と考え、依頼する場合は訪問見積もりをお願いすることをおすすめします。
なお、企業によっても料金設定は異なるため、相場を知る上でも、複数社に見積もりを出してもらった方が安心です。
特殊清掃が必要なときは事態が一刻を争うような急ぎの場合が多いため、電話で「緊急である」ということを伝えると、スピーディーに対応してもらえるでしょう。
サービス内容を確認しておく
一口に「特殊清掃」といっても、企業によってどこまでの作業を依頼できるかは異なります。
お部屋の供養はしてもらえるのか、解体やリフォームにも対応してもらえるのかなど、作業内容を事前に確認しておくことも大切です。
実績や経験が豊富
特殊清掃では、正しい作業手順や機材の扱い方など、専門の知識や高度なスキルが求められます。
きちんと作業ができていないと「臭いや汚れが取り切れていなかった」というトラブルにもなりかねません。
そのため、企業のホームページや過去に依頼した人からの体験談(口コミ)を確認し、実績が豊富なところに依頼することをおすすめします。
まとめ
特殊清掃の現場を原状回復することは危険であり、作業的にもとても難しいことです。
特殊清掃の需要の高まりとともに、事故現場の清掃を請け負う企業も少しずつ増えてきていますが、問題のある業者がないとは言えない状態です。
依頼後に「清掃がきちんとできていなかった」「高額な料金を請求された」「廃棄物の処理を適切に行ってくれなかった」といったトラブルに巻き込まれてしまうのを防ぐためにも、特殊清掃を依頼する際は、優良な企業をしっかりと見極めなくてはいけません。
近年は、単身高齢者による孤独死が社会問題となっています。
不動産会社の方や、部屋を賃貸に出している大家さんは、ある日突然所有する不動産が事故物件になってしまう可能性もゼロではありません。
事故現場の清掃は時間との勝負です。
万が一のことが起きたときに落ち着いて対応できるよう、あらかじめ特殊清掃についての基本的な知識を身に着けておき、いざという時に迅速に対応してくれる会社を探しておくことをおすすめします。
ワンズライフの特殊清掃
当社ワンズライフには、数多くの現場で経験を積み重ねた事件現場特殊清掃士の有資格者が在籍しており、事件現場特殊清掃センターに認定されている特殊清掃の専門企業として、お客様から安心と信頼を頂いております。
また、遺品整理士も多数在籍していますので、特殊清掃現場での遺品整理も承っております。
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