2019.03.26 (2020.12.17 One's Ending編集部 加筆)
介護施設・老人ホーム入居準備の注意点。引っ越しと生前整理のすすめ
介護施設へ引っ越す際、何を持って行けばいいか迷うものです。現在住んでいる家を引き払う場合は、家財道具の処分も行わなくてはならず、どれを残してどれを捨てるかなども考えなくてはなりません。今回は、初めての施設への引っ越しでの注意点と、入居準備にあたって必要となる生前整理についてご紹介します。
介護施設の種類
介護施設には、特別養護老人ホーム、老人保健施設、有料老人ホームなど、さまざまな種類の施設が存在しています。
まずはそれぞれの施設の特徴をご紹介します。
特別養護老人ホーム
介護保険施設のひとつとして位置づけられる「入居施設」です。
自治体や社会福祉法人などが運営し、要介護度及び所得によって、段階的に料金が設定されています。
個室または最大4人ほどの相部屋となり、家具やベッドなど、生活に必要な家財道具が設置されている施設です。
老人保健施設
特別養護老人ホームと同じく、介護保険施設のひとつとして位置づけられる「中間施設」です。
一定期間入居してリハビリテーションを受けることで、在宅復帰を目指します。
老人保健施設も、入居する部屋は個室または最大4人ほどの相部屋です。
家具やベッドなど、生活に必要な家財道具も設置されています。
有料老人ホーム
介護保険施設とは異なり「家」として位置づけられています。
基本的に、家具やベッドなどは入居者自身が用意しなければなりません。
ほとんどが個室で、特別養護老人ホームや老人保健施設に比べて間取りが広いことが多く、ある程度の私物を持ち込むことが可能です。
介護施設への引っ越し準備
施設によって、持っていくものは違います。
こちらでお伝えするものはあくまで参考程度に考え、実際に必要な持ち物は施設の方に確認するのが確実です。
共通で用意するもの
施設への引っ越し準備の際、共通で用意すべきものは、衣類、着替え、靴、歯ブラシ、歯磨き粉、入れ歯洗浄剤などの日用品です。
そのほかにも、健康保険証や介護保険証、マイナンバー、印鑑など、貴重品も持参します。
本人が管理できない場合、施設側で現金管理を行ってもらうことも可能です。
なお、衣服は季節によって入れ替えるなど、その時々に応じて必要な分を用意するのが良いでしょう。
次に、施設別に用意する持ち物をご紹介します。
特別養護老人ホーム・老人保健施設
特別養護老人ホーム・老人保健施設へ引っ越しする場合、ベッド・タンスなどの大きな家財道具の用意は不要です。
また、車椅子やオムツも施設で用意されており、極端に言えば、衣類・下着・靴などの身の回りの物があれば、ほぼ不自由しません。
ただし、入居スペースが限られていることが多いため、荷物を持ち込みすぎないように注意しましょう。
特に、老人保健施設は利用期間が限られています。
短期間で退所することを考え、持ち物は最小限の量にするのがおすすめです。
有料老人ホーム
有料老人ホームは、個人で使用するものは入居者が用意します。
アパートやマンションに入居するのと同様に、ベッド(介護用を含む)や布団、タンス(クローゼット設置の場合は不要)などの家財道具、場合によっては家電も用意しなければなりません。
持っていく物に悩んだ際は、現在家にあるものを、新しく暮らす部屋の大きさに合わせてダウンサイジングしてみるとわかりやすいでしょう。
施設に持ち込めないもの
持ち込みが可能な荷物かどうかは、施設のスペースと、集団生活に支障があるかによって判断されます。
居室に入りきらない大きな家財道具や、著しく風紀を乱すと判断されたものは持ち込めません。
持ち込む荷物に関して特に規制はないため、施設側からOKさえ出れば、仏壇や趣味で使用している物など、好きな物を持っていけます。
ペット同伴禁止が多い
ペットを飼うことを禁止している施設が多いようです。
有料老人ホームではペット同伴可としているところもありますが、特別養護老人ホームや老人保健施設では、許可されている施設はほとんど見当たりません。
入居前に里親を探すなど、あらかじめ対応しておく必要があります。
老人ホーム、介護施設への引っ越し作業
施設への引っ越しとなると、重い荷物があったり、介護ベッドなどの医療器具を持って行ったりすることもあるでしょう。
高齢者がこれらの荷物を自分で運ぶのは大変です。
そのため、荷物の量や種類によっては、引っ越し業者への依頼を検討することをおすすめします。
引っ越し業者の中には、福祉車両を完備していて、ヘルパー資格者が作業の指揮を取る「介護施設への引っ越し専門の会社」もあります。
特別養護老人ホームや、老人保健施設は、入居の際に必要な荷物が少ないため、自家用車で運ぶことも可能です。
荷物の量は、衣装ケース3つ分くらいを目安にすると良いでしょう。
老人ホーム、介護施設への引っ越しにあたっての注意点は?
老人ホームや介護施設へ引っ越しをするときは、必要な持ち物の確認、引っ越し準備以外にも、しておいたほうが良いことがあります。
その中でも、入居される方からよく質問にあがる「住所変更手続き」と「近隣への挨拶」についての注意点をまとめました。
住所変更手続きは必要?
住所変更手続きが必要かどうかについては、施設によってルールが異なります。
長期入所が前提となる特別養護老人ホームや有料老人ホームでは、住民票の移動を義務付ける施設が多いようです。
ただし、すべての施設がそうとは限らず、中には住所変更手続きが不要な施設もあります。
施設のルールに関わらず、これまで住んでいた家を引き払った場合については、住民票の移転が必要です。
また、現住所と入所施設の市町村が異なるケースだと、入所しても自治体の独自サービスが受けられないことがあるため、気を付けましょう。
入居者が死亡した場合、火葬は住民票のある市町村で行うのが一般的です。
別の自治体で火葬すると、住民とは異なる費用が請求されたり、給付が受けられなかったりする可能性があります。
そうしたことも念頭に置き、事前に調べたうえで、住所変更手続きを行うか判断しましょう。
なお、老人保健施設については短期入所が原則なため、住民票の移動はできません。
近隣への挨拶は?
連絡や来客があったとき、年賀状の発送などを考えて、知り合いには施設へ転居したことを伝えておきます。
本人や家族が差し支えなければ、近隣への挨拶も行った方がいいでしょう。
施設に入居すると、これまで築いていた地域との交流が希薄になりがちです。
関係を絶やさないためにも、礼を尽くした方がいいですね。
老人ホーム、介護施設への引っ越し準備にあたって生前整理は必要?
一人暮らしなどで入居する施設が終の棲家になる場合は、施設に持ち込めるものだけ残して、そのほかの不要な荷物は処分することをおすすめします。
家族と同居している場合でも、もうその家に戻る予定がなければ、この機会に生前整理しておいた方が良いかもしれません。
生前整理とは、ご自身が亡くなったあとに遺族が遺品整理や相続に困らないよう、自分で財産関係を整理しておくことです。
ご自身の亡き後は家族が遺品整理を行いますが、荷物の量が多いと、かなりの時間がかかってしまいます。
それだけでなく、ご本人でないと貴重品の保管場所がわからなかったり、家族には捨てて良い荷物かどうかの判断がつかなかったりして、なかなかスムーズに作業が進まないかもしれません。
ほかにも、生前整理で財産の整理を行っておけば、残された家族が相続問題でトラブルになるのを避けられるというメリットもあります。
【関連記事】生前整理とは?必要性はある?進め方を徹底解説
生前整理&家の片付けの進め方
施設に入居した場合でも、人によっては盆や正月など、自宅に帰る機会があるかもしれません。
そういった場合はすべて捨ててしまわず、これまで暮らしていた部屋でもくつろげるように不要な物だけ処分し、ある程度の荷物は残しておくのもよいでしょう。
以下に、生前整理の&家の片付けの進め方とポイントを簡潔にまとめました。
〈生前整理&家の片付けの進め方〉
① 財産目録の作成
健康保険や年金手帳の書類、生命保険の証書、預金通帳、有価証券など、財産に関する内容を一覧にしてまとめておく。
② 荷物の仕分け
家の中にある荷物を「必要な物」と「不要な物」に分けていく。
不要かどうか判断に悩むときは「保留」にして一旦置いておくのがおすすめ。
③ 不用品の処分
仕分けた荷物の中から「不要な物」に分類されたものを「売る物」「捨てる物」に分ける。
売る物はリサイクルショップに持って行ったりネットオークションを利用したりする。
捨てる物は自治体の分別方法に従って処分する。
④ 不動産の整理
所有している不動産があれば、相続の手続きを検討する。
すぐに手放さない場合でも、手続きの手順や相続の種類について確認しておくのがおすすめ。
⑤ デジタル遺品の整理
パソコン、スマートフォンのデータをチェックし、不要な写真やファイルは削除する。
ログインパスワードやIDなどは、家族にわかるように書き記しておくのがおすすめ。
⑥ エンディングノートの作成
財産目録、葬儀・お墓の希望、万が一のことがあった時に知らせてほしい知人・友人の電話番号や連絡先、家族へのメッセージなど、自分に関するあらゆる情報をエンディングノートにわかりやすくまとめておく。
なお、生前整理や家の片付けを行う際は、いきなり作業に取り掛かるのではなく、やるべきことを事前に「リスト化」しておくことが大切です。
そうすることで、ひとつひとつの作業が中途半端になったり、作業漏れが起こったりすることを防げます。
【関連記事】生前整理でやることとは?リストを使った進め方のポイント
実家の片付けは業者に頼むのもひとつの手
ここまでは、ご本人がある程度元気で、自分で生前整理や家の片付けを行うことを想定して話を進めてきました。
しかし、認知症を患っていて要介護だったり、高齢者の方だと体の自由がきかなかったりして、老人ホームや介護施設に入居するご本人が生前整理をできないことがあるかもしれません。
その場合は、親に代わって子どもが家の片付けを進めるという方法もあります。
ただし、家族だけで片付けを進めるのは大変です。
ここでは、片付けが大変な理由と、プロの整理専門会社に依頼するメリットについて詳しくご紹介します。
家族だけで片付けるのは体力的・精神的な負担が大きい
親世代の高齢者の方は、物が少ない時代に生きてきたことで「捨てることがもったいない」という意識が根強くあり、いざ家族が片づけようとしても、あまりの物の多さに「どこから手をつけて良いかわからない」と困ってしまうことも多いのです。
捨てる物の中には家具、家電などの大きい荷物もあり、自分たちだけで運び出して片づけるのは大変な労力を要します。
1部屋だけだとまだ大丈夫かもしれませんが、家一軒丸ごと片付けしないといけないときは、数週間~数か月、場合によっては半年以上かかってこともあるでしょう。
子どもが現役世代であれば家庭や仕事で忙しく、片付けに何日、何か月も費やすことは困難です。
実家が遠いと往復の交通費も必要なため金銭的な負担も増し、仕事を何日も休むとなると、周囲にも迷惑をかけてしまいます。
また、仕事を休んで有給休暇を使えればよいですが、そうでなければ休んだ分だけ給料が減って、家族への負担も大きくなってしまうでしょう。
信頼できる業者に依頼することが大切
このように、空き家となった実家を自分たち片づけるのが大変なときは、プロの整理専門会社に相談・依頼するのもひとつの手です。
荷物の量にもよりますが、プロに依頼すれば数日間で作業が完了します。
プロに頼むと費用は発生しますが、自分たちで片づける労力やかかる時間、交通費などを考えると、結果的に依頼した方が負担を減らせるかもしれません。
ただし、片付けを代行する専門会社は数多く存在します。
大切な親の荷物であれば、信頼できる業者に安心して任せたいものです。
依頼したものの「大切な物まで捨てられてしまった」「スタッフの接客がイマイチだった」とトラブルになって後で後悔しないよう、プロとしての高い意識を持ち、依頼者の気持ちに寄り添いながら“お客様第一”で作業を行ってくれる企業を選びましょう。
遺品整理を行う会社の多くは、生前整理にともなって必要となる家の片付けや、不用品の処分なども請け負っています。
業者選びに悩んだ際は、ワンズライフのこちらの記事を参考にされてみてはいかがでしょうか。
【関連記事】遺品整理の業者選び プロが教えるオススメの選び方
引っ越しを機に、できる限りの生前整理をしておきましょう
施設への引っ越しでたくさん物を持って行っても、居室に入りきらなければ持ち帰ることになってしまいます。
反対に、荷物の量が少なすぎると、施設で生活してから必要な物が足りず、困るかもしれません。
そのため、部屋のスペースや必要な持ち物は、事前に確認しておきましょう。
ただし、いくら荷物が多すぎるのはよくないといっても、何もない部屋は味気ないものです。
お気に入りの小物や写真など、気分を盛り上げてくれるものを持って行き、寂しくないようにお部屋を賑やかに飾り立てるのもおすすめです。
介護施設への引っ越しは、身辺を整理するチャンスとも言えます。
何かあったときに家族が困らないように、どこに何があるかわかるように記しておくなど、この機会に生前整理を始めてみるのも良いかもしれません。
認知症などにより本人が整理できない場合、荷物が多すぎて家族だけでは片付けを行うのが難しいときは、整理専門会社に相談・依頼してみてはいかがでしょうか。
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