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2019.07.03

孤独死を防ぐために知っておきたい、現状と3つの備え

誰にも看取られることなく、ひっそりと死を迎える孤独死が増えています。昨今では有料老人ホーム内で孤独死が発生するなど社会問題になりました。高齢者単身世帯が増加していく中、孤独死を防ぐために何をすべきか。課題や要因をまとめました。

孤独死とは?

一般的に孤独死は、誰にも看取られずに亡くなり、一定期間発見されなかった状態を指します。1970年代頃から言葉が使われ始め、1995年1月17日に発生した「阪神淡路大震災」で一般に広がりました。震災により地域コミュニティが崩壊したとして仮設住宅などに避難していた高齢者が相次いで死亡。その後も20年間に仮設住宅や復興公営住宅などで孤独死した方は1,000人を超えるなど、深刻な問題になっています。

 

孤独死に陥りやすい状況

孤独死

孤独死は震災に限らず、全国各地で発生しています。東京都によると、2016年度の東京都区部の死亡総数76,826 人中、異状死は12,780人。この内、孤独死は4,604人と報告しています。1989 年に16.5%だった孤独死は2001年に26.3%、2016 年では36.0%となるなど、増加傾向が見られます。孤独死に至るには、いくつかの共通点が見られます。内閣府が取りまとめた「平成29年版高齢社会白書」をもとに検証してみました。

 

「令和元年版 高齢社会白書」

 

高齢者単身世帯である

65歳以上の高齢者の単身世帯数の増加は男女ともに顕著であり、1980年の高齢者人口に占める独居世帯の割合は男性4.3%、女性11.2%でしたが、2015年には男性13.3%、女性21.1%と増加。男性約192万人、女性約400万人となっています。高齢者は突然体調を崩すことが多く、夏場は熱中症、冬場は浴室の寒暖差によるヒートショックなど、注意が必要な場面がたくさんあります。家族が同居していれば防げていたと思われる事故でも、単身世帯のためすぐに発見されずに命を落とすケースが後を絶ちません。

 

慢性的な疾患がある

高齢者の多くは慢性疾患を抱えています。もっとも多いのが、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患で、心臓の筋肉への血液の供給量が減ったり障害されたりすることにより引き起こされます。次に多いのが閉塞性動脈硬化症で、四肢の主要な動脈の硬化が進み、狭窄または閉塞が起こることにより血液の流れが悪くなり、手足に循環障害を起こします。いずれも発症を抑制するためには、適切な運動や食生活が必要となります。家族が同居していても病気のコントロールは難しいものですが、単身世帯の場合、毎日バランスが取れた食事を採ることは難しく、疾患を悪化させてしまいます。また家の片づけが行われていない場合、何かにつまずいて転びケガをするなど、危険性が高まります。

 

コミュニティが形成できない

孤独死する方の多くは、人とのコミュニケーションを図ることが苦手な傾向が見られます。低い年金で暮らしているため外に出る余裕がない人や、逆に退職によりこれまでの社会的立場を失った現実を受け入れがたいなど、他人との交流を拒む人が孤立しているようです。特に男性の高齢者はプライドが高く、コミュニティに入ることを拒むなど、女性に比べ孤独死の危険が高くなっています。

 

高齢社会白書では「地域で付き合いがない」と回答している単身世帯の高齢者は、男性が13.7%、女性が8.0%となっていると報告しています。近隣住民とのコミュニケーションが不足していると、異変が起きたとしてもそれに気付く人が少なくなります。同様の理由から、家族との繋がりが薄い場合も孤独死のリスクは高まります。もし賃貸住宅で亡くなった場合、撤去費用や修繕費用、場合によっては清掃費用などが家族に請求されます。何よりも腐乱死体になった親の姿など、見たくないですね。

 

孤独死を防ぐ3つの備え

孤独死の発見は、大半が警察官や消防隊員、民生委員であり、家族による発見は約2割に過ぎないと言われています。孤独死する方は、コミュニケーションが苦手な特徴がみられるため、付きすぎず、離れすぎずの関係を保ちつつ、定期的に誰かとかかわることで孤独死を防ぐことが期待できます。

 

1. 地域の孤独死対策を調べておく

見守り活動

いまや孤独死は高齢者のみならず、世代を超えた社会問題であり、各自治体ではさまざまな取り組みが行われています。地域包括支援センターなどで、見守りサービスなどを行っている場合がありますので、自治体の孤独死対策を調べておきましょう。なお、主要都市のおもな取り組みは次の通りです。

 

民間事業者と連携した見守り活動(札幌市)

札幌市と民間事業者が連携し、民間事業者の事業活動等を通じて、異変のある、または何らかの支援を必要とする65歳以上の高齢者及び障がい者を早期に発見し、必要な支援を行う。

 

新聞販売店との見守り協定・高齢者の 見守り支援事業(名古屋市)

「名古屋市新聞販売店地域安全協議会」と名古屋市で高齢者の見守り協定を締結。新聞配達中等新聞がたまっている世帯が発見された場合、各区福祉事務所に連絡を行うなど、孤独死防止に向けた取り組みを行う。

 

地域包括支援センターによる一人暮らし高齢者の全戸訪問(京都市)

京都市内在住の65歳以上の一人暮らし高齢者を対象として、地域包括支援センターによる訪問活動を実施。

 

2. 見守り家電、民間サービス、アプリの活用

見守り家電

家族がいる方なら、さりげなく見守りができる家電や民間サービス、アプリの活用が効果的です。

 

無線通信機を内蔵した電気ポット

電気ポットの使用状況を、家族の携帯電話またはパソコンにEメールで知らせるほか、ホームページの専用サイトで一週間のポット使用状況をグラフで見ることができます。

 

警備会社の見守りサービス

高齢者が自分で壁のボタンを押すことにり警備員を呼ぶことができるほか、意識を失ったり、歩行が困難になったときもセンサーが異常を検知して警備員がすぐに駆けつけます。オプションとしてトイレにも浴室にも持っていけるペンダントボタンも用意されています。

 

郵便局による高齢者見守り

郵便局社員が離れて暮らす高齢者宅を訪問し、その様子を家族に伝える見守りサービスです。話し相手が欲しい高齢者にとって、顔なじみの社員とのコミュニケーションが定期的にとれることを楽しみにしている方もいるようです。

 

携帯電話会社のアプリ

大手携帯会社のスマートフォンユーザーのオプションとして、見守り機能が用意されています。あらかじめ登録した配信条件で、高齢者のスマートフォン利用状況を知らせてくれます。

 

3. 日頃から近隣とのコミュニケーションをとっておく

地域交流

「遠くの親戚より近くの他人」という言葉がある通り、近くに頼れる人がいるのは心強いものです。高齢者の元を訪れたときは、「家族と離れて暮らす親が心配」など、近隣に一声かけるのも効果的です。特に高齢者が近隣との関係を拒んでいる場合は、日ごろから努力して地域のコミュニティに参加したり、近隣の方とあいさつをするなど、周囲の協力が得られやすいよう配慮してください。

 

高齢者との関りが孤独死を防止する

孤独死は高齢者だけの問題ではなく、最近では若年層や中高年にも広がっており、誰の身に起こるか分かりません。解決すべき課題は「孤独を感じる状態の解消」です。孤独の感じ方は人それぞれですが、自分の存在が認められない寂しさは、すべての世代で共通だと思います。人は喜ばれて生まれ、そして悲しんで看取られるのが一番の理想です。

 

高齢社会白書では高齢者の3人に1人が孤独死を「身近に感じる」と回答しているほど、死と隣り合わせの生活を強いられていることが分かります。家族との交流を拒絶する高齢者もいますが、それは迷惑をかけたくないという思いやりかも知れません。家族がいるのであれば、こまめに連絡を取るとともに、生きていてくれることへの感謝の意を伝えてあげてください。

この記事を書いた人
吉田 匡和
社会福祉士・介護支援専門員・社会福祉主事・福祉住環境コーディネーター。 一般企業を経て、介護業界に転職。老人保健施設、特別養護老人ホーム、デイサービスなどの相談援助業務・管理職を務める。 社会福祉士・介護福祉士養成校の教員を経て、フリーライターに転向。 個人事業所「Bule Orca【ブーレオルカ】」を立ち上げ、介護業界のほか、飲食、旅行などさまざまな分野で執筆を行っている。
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