2020.07.14
エンディングノートを親に勧めたいなら
エンディングノートは「終活ノート」「安心ノート」など様々な呼び名がありますが、終活を意識した人なら必ず存在を知ることになるノートです。
先日、編集部の私は、遺品整理専門会社ワンズライフの上野社長から「終活講演に登壇させてもらうと『自分の両親にエンディングノートを書いてもらいたいが、どうしたら書いてくれるのだろうか』という質問を良く受けます」という話を聞きました。
確かに、親に遺言書を書いてくれとは言いづらいですが、エンディングノートを書こうよと言うのは気が楽かもしれないと思いました。
そこでこの記事では、エンディングノートを親に勧めるタイミングや、スムーズに書いてもらうためのコツについてわかりやすくご紹介します。
そもそもエンディングノートとは?
エンディングノートとは、人生の終末期について書き記したノートです。
自分にもしものことが起こった時に人生の最期をどのように迎えたいかということや、家族や周囲の人へのメッセージなどを書き記しておきます。
終活の一環として作成することが多く、メディアや映画で「終活」という言葉が広まった影響でエンディングノートが人気となりました。
最近では、本屋の終活関連コーナーやスマホアプリなど、様々な方法でエンディングノートを購入できます。
また、エンディングノートを無料配布しているサイトもあるため「どこで買えるかわからない」とお悩みの方は、ぜひ一度インターネットでチェックしてみてください。
エンディングノートを親に勧めるタイミングは?
終活や人生の最期に関する言葉はデリケートです。
自ら進んでエンディングノートを書き始める高齢者の方もいますが、自分はまだまだ元気という意識を持ち「エンディングノートは必要ない」と考える方も多いでしょう。
いくら親子でも言葉を間違えると誤解を招き、家族間のわだかまりを生んでしまう可能性があります。
親にエンディングノートを勧めたい時は、書くことに前向きになれるタイミングで、さりげなく切り出すのがおすすめです。
では、具体的にはどのようなタイミングが良いのでしょうか?
①終活の話題が出たタイミング
テレビ番組や新聞記事などで終活についての話題を見かけたら、そのタイミングでさりげなく親に説明してみるのも良いでしょう。
たとえば、お墓や葬儀のテーマになった時に「家族は亡くなったあとも色々と大変だね」と第三者目線で話を振ってみます。そのまま「そうだね、やっぱり困るだろうね」という流れになれば、自然にエンディングノートを勧めやすいのではないでしょうか。
②法事のタイミング
子どもが親と同居していれば、一緒にテレビを見る時間や話し合いをする時間も持ちやすいでしょう。
しかし、離れて住んでいる場合は急にエンディングノートの話題を切り出すと不自然に思われるかもしれません。
そういった場合は、法事で親族が集まるタイミングを狙うというのもひとつの手です。
「こんな風にエンディングノートを書いて欲しい」と直接的に言うのではなく、自分たちの近況や孫の成長などの明るい話題から少しずつ終活の話にシフトさせていくと自然に勧められます。
③健康や介護に関する話題が出たタイミング
親が自身や友人の健康についての話をしたときに、さりげなくエンディングノートの説明をしてみるのもおすすめです。
年を重ねると、健康や介護について考える高齢者の方も増えるでしょう。
「急に入院になった時に必要なものがわかると助かるのだけれど」といった形で「なぜエンディングノートがあったら嬉しいか」という理由を交えて提案してみるのも良いでしょう。
エンディングノートを親に書いてもらうコツは?
人によっては「万が一のことは想像したくない」とエンディングノートを書くことをためらう親もいるかもしれません。
また、書く項目が思ったよりも多く、いざ筆を執っても書き進めることが億劫になってしまうという方もいるでしょう。
このように、エンディングノートを親に勧めても書いてもらえない場合はどうすればいいのでしょうか?
次は、エンディングノートを親に書いてもらうコツについて解説します。
エンディングノートを書くメリットや活用方法を伝える
エンディングノートという言葉が日本で広がった背景には、以前よりも「終活」の認知度が高まっていることが挙げられます。
マクロミルの調査によると、20~70代の全年代において「終活」という言葉を知っている人は98%となっており、世代を問わず言葉そのものはメジャーになっていることがうかがえます。
しかしその中で「終活をしている」と答えた人は全体の1割程度でした。
このように、エンディングノートの認知度は高まっていますが、実際に書いたことのある人は実は少なく、メリットや効果的な使い方を知っている人も少ないのが実情です。
エンディングノートを親が書かないときは、以下でご紹介するメリットや使い方を伝えてみてはいかがでしょうか?
エンディングノートを書くメリット①:資産についての情報を把握できる
家族といえども親にどのような財産があるのかは案外わかりづらく、同居をしていなかったり遠方に住んでいたりすればなおさらです。
親が亡くなった後は相続手続きが必要となりますが、資産についての情報がはっきりとしていない場合は預貯金や保険の契約、株式などを家族がひとつひとつ確認しないといけません。
資産の一覧をエンディングノートに書いておけば、自分の経済状況を把握できるだけでなく、遺された家族への負担を減らすこともできます。
エンディングノートを書くメリット②:家族に思いを伝えられる
エンディングノートは遺言書と違い、法的効力はありません。
そのため、書き方の決まりにとらわれることなく好きな内容を書ける点もポイントです。
内容も死後に備えた話に特化する必要はなく、家族へのメッセージや感謝の気持ちを綴っても構いません。
また、エンディングノートには「延命治療はどうして欲しいか」「臓器提供は希望するか」「亡くなる前に会いたい人は誰か」など、万が一自分の意思が伝えられない状況になったときの意思も書いておけます。
あらかじめ終末期についての希望を書き記しておけば、亡くなった後に家族が「あの時の判断は間違っていなかっただろうか」と後悔することも少ないでしょう。
エンディングノートを書くメリット③:人生の振り返りができる
エンディングノートは一度書いたら終わりではありません。
10年、20年と年月が経てば、資産状況や健康状態などは当時と変わっている可能性があります。
定期的に読み直し、書き足しや修正をする習慣をつけておけば、過去に書いた内容を見て自分を振り返ることができます。
これまでの人生を見つめ返し、これからの人生をどう生きたいのかを考えるきっかけにもなるでしょう。
終活の捉え方は、決して死ぬ準備ではなく「人生の終焉を考えることを通じて、自分を見つめ今をより自分らしく生きる活動のこと(一般社団法人終活カウンセラー協会)」です。
日記のように書いたら終わりではなく、人生の状況に合わせて内容を更新できるのもエンディングノートの大きなメリットといえます。
【関連記事】エンディングノートとは何?メリットやオススメの選び方と書き方を解説
子どもが書くのを手伝う
普段から手紙や日記を書く習慣がないとペンを持つことが億劫になってしまう高齢者の方もいるでしょう。
また「書き方が難しいから」という理由で書かないという方もいるかもしれません。
そんなときは、親に要所を聞きながら子どもがエンディングノートの記入を手伝うというのもひとつの方法です。
入院時に必要になることやかかりつけの病院、普段飲んでいる薬のことなどを教えてもらい、子どもが記入していくのも良いでしょう。
ただし、気乗りしていない親に対してエンディングノートを強く勧めるのは避けたほうが無難です。
答えたくない内容を何度も聞いたり、すぐに質問の答えを言わないからといって急かしたりすることもあまりおすすめできません。
親の気持ちに寄り添いながら、ゆったりとした気持ちを持って接することが大切です。
また、たとえエンディングノートの法的効力がなくても、相続や延命処置、遺産配分の希望などは親族間のトラブルの原因となりやすい項目です。
相続や資産に関するページは、代筆ではなく自筆で書いてもらうことをおすすめします。
まとめ
遺品整理専門会社ワンズライフの上野代表はエンディングノート書き方講師でもあるため、次のような話をよくします。
「エンディングノートは記入するよりも書くプロセスが重要です。
これまでの人生を振り返ったり、思い出したりすることで頭が整理されると気持ちも整理しやすくなります。
今の自分の状況を書くことで大局的な視点もでき、感謝の気持ちが湧いてきます。その結果、さらに気持ちが整理されやすくなるのです」
「エンディングノートを書くのが「難しい」「煩わしい」「必要ない」という親には、子どもから「一緒に書こう」と誘ってみてください。
1か月または数か月に1度親子でエンディングノートを書く時間を作り、親の人生に興味を持っていることを示すと、案外すんなり一緒に書いてくれることもあります。
つまり「あなた」が実際に自分のエンディングノートを書いてみることが、結果として一番の近道になるかもしれません。」
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