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2018.03.16 (2023.05.18 One's Ending編集部 加筆)

特定空き家とは?固定資産税に影響する空き家対策特別措置法の定義と判断基準

「空き家状態の実家をどうしたらよいのだろう」親が亡くなってしまったり介護施設に入所したりして、住む人がいなくなった実家は空き家状態になります。
子どもが全員都会に出ていて、家庭を築いたり仕事をしていたりすると、ほとんど地方の実家に戻ることはないでしょう。
そうすると、空き家のままずっと放置することになります。

従来であれば、実家の固定資産税を支払い続けて、空き家として放置することも可能でした。
家屋があれば土地に対してかかる固定資産税は抑えられるので、更地にせず空き家のまま残しておく人も多くいました。
しかし、2015年に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行され、空き家を放置することでペナルティが課せられるようになりました。
また、特定空き家と認定されると、段階的に固定資産税の優遇措置もなくなります。
このため、実家を空き家状態にしている人は、管理や整理について考える必要が出てきました。

そこで、空家等対策の推進に関する特別措置法について解説し、実家が空き家状態になったときの対処法をご紹介します。

空家対策の推進に関する特別措置法とは

「空家等対策の推進に関する特別措置法」は、2015年に施行された法律です。
この法律では、適切な管理が行われていない空き家が防災や衛生、景観などの面で地域住民の生活環境に悪影響を与えることを防ぎ、空き家の活用を促進することを目的としています。
このため、空き家の所有者や管理者は、空き家を適切に管理することが責務とされています。

 

とくに管理されていない空き家を「特定空家等」と定め、市町村からの指導や行政代執行ができるようになりました。
従来住宅のある土地は固定資産税が安く設定されていましたが、特定空き家になると優遇措置がなくなったり、罰則規定が設けられたりしており、かなり空き家に厳しい法律になっています。

 

【参考】デジタル庁「空家等対策の推進に関する特別措置法

 

空家等対策の推進に関する特別措置法が制定された背景

令和元年に発表された「平成30年住宅・土地統計調査」によると、2018年における日本の住宅数は6240万7千戸となっています。
総世帯数は5400万1千世帯なので、世帯数よりも住宅数のほうが多い状態です。
空き家は848万9千戸で、総住宅数のうちの13.6%を占めています。
5年ごとにこの調査は行われていますが、毎回空き家率は増え続けています。

 

【参考】総務省「平成30年住宅・土地統計調査

 

このように、日本では人が住んでいない空き家が増えていて、30年前の1988年と比較すると空き家の数は約2.2倍になっています。
適切に管理されていない空き家が増えることで、地域に深刻な影響を与える可能性があります。
放置された空き家による防災・衛生・景観などの悪影響から周辺住民を守るために、空家等対策の推進に関する特別措置法は制定されたのです。

 

 

特定空き家とは?

空き家

空家等対策の推進に関する特別措置法において、「特定空家」の定義は以下の条文(第二条2項)に定義されています。

 

第二条 この法律において「空家等」とは、建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む。)をいう。ただし、国又は地方公共団体が所有し、又は管理するものを除く。 2項 この法律において「特定空家等」とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態、又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態、その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう。

【引用】デジタル庁「空家等対策の推進に関する特別措置法

 

具体的に挙げると、次のような状態の空き家が「特定空家等」と呼ばれます。

 

【参考】国土交通省「『特定空家等に対する措置』に関する適切な実施を図るために必要な指針 (ガイドライン)

 

倒壊など保安上危険となる恐れがある

  • ・部材の破損や地盤の沈下等の状況により建築物に傾斜(20分の1傾斜が基準と言われています。)が見られる
  • 建物の基礎や柱(大黒柱)に大きな亀裂やひび割れ、変形または破損が発生している
  • ・建物の基礎や柱(大黒柱)が腐っていたり、シロアリ被害などによって大きな断面欠損が発生したりしている
  • ・屋根が変形している
  • ・軒が壊れて垂れ下がっている
  • ・雨どいが壊れている
  • ・外壁に穴が貫通していたり下地が露出したりしている
  • ・目視で、看板、給湯設備、屋上水槽等の支持部分が腐っている状態を確認できる
  • ・目視で、野外階段、バルコニーが傾斜している状態を確認できる
  • ・目視で、門、塀が傾いている状態を確認できる
  • ・擁壁表面に水がしみ出し、流出している状況がある

 

著しく衛生上有害となる恐れがある

  • ・身体に有害なアスベストが飛散したり、建物表面に出たりする可能性が高い
  • ・浄化槽( 汚水槽 )等の破損等による汚物の流出、悪臭の発生がある
  • ・排水等の流出による、悪臭の発生がある
  • ・ごみ等の放置、不法投棄による臭気の発生がある
  • 多数のネズミ・ハエ・蚊などの発生があり、近隣の生活環境が悪化している

 

著しく景観を損なっている

  • ・屋根、外壁等が、汚物や落書き等で外見上、汚れたまま放置されている
  • ・多数の窓ガラスが、割れたまま放置されている
  • ・看板の原型を留めず本来の用をなさない程度まで、破損、汚損したまま放置されている
  • ・立木等が建築物の全面を覆う程度まで生い茂っている
  • ・敷地内(土地)のごみ等が放置されている

周辺の生活環境に悪影響を及ぼし放置することが不適切

  • ・立木が腐っていたり、倒壊、枝折れ等が生じたりしている
  • ・近隣の道路や敷地等に枝などが大量に散らばって、歩行者の通行を妨げている
  • ・敷地外に動物の毛又は羽毛が大量に飛散し、地域住民の日常生活に支障(衛生面的に不潔である)を及ぼしている
  • ・住みついた動物が周辺の土地・家屋に浸入し、地域住民の生活環境に悪影響を及ぼすおそれがある
  • ・動物の鳴き声、その他の音が頻繁に発生している
  • ・動物の糞尿、その他の汚物の放置により、臭気が発生している
  • ・シロアリが大量に発生して、近隣の家屋に飛来し、地域住民の生活環境に悪影響を及ぼす恐れがある
  • ・門扉が開けっ放し、窓ガラスが割れている等不審者が容易に侵入できる状態で長らく放置されている
  • ・周辺道路、家屋の敷地等に土砂等が大量に流出している
  • ・雪の降る地域においては、屋根の雪止めの破損など不適切管理により、空き家からの落雪が発生し、歩行者等の通行を妨げている

特定空家に指定されたらどうなるのか

しも実家が特定空家等だと指定されたら、どのように対応することになるのでしょうか?
まず、行政は住民などからの通報により、周辺環境に悪影響を与える空き家を把握します。
その後、市町村の担当者は所有者の事情を把握したり、立ち入り調査をしたりしながら、特定空家等にあたるかどうかを確認します。
特定空家等であると判断しても、行政はいきなり撤去しようとはせず、所有者や管理者に助言をするところから始めます。
具体的な対応は次の通りです。

 

対応1:助言や指導を受ける

特定空家等に認定されると、まずは市町村長から空き家の状態を改善するように助言や指導が入ります。たとえば庭木の伐採や屋根の修繕など、改善してほしい箇所についての助言があります。

 

対応2:勧告を受ける(住宅用地特例の適用外)

助言や指導をしても改善されなかった場合、行政は必要な措置をとるように特定空家等の所有者や管理者に勧告します。勧告を受ける段階で、優遇措置が撤廃されて更地状態と同等の固定資産税が徴収されることになります。それまでの6倍の固定資産税です。

 

対応3:空き家対策の命令が出る

勧告を受けても改善されなかった場合、行政は勧告よりも強い改善命令を出します。命令には期限が設けられていて、正当な理由がないまま改善されなかった場合、特定空家等の所有者や管理者は50万円以下の罰金を支払わなければなりません。

 

対応4:行政代執行

行政から命令を受けても期限内に改善しない場合、行政代執行によって特定空家等を強制撤去します。強制撤去にかかった費用は、特定空家等の所有者に請求されます。

 

【参考】国土交通省「空家等対策特別措置法について

 

空き家は管理・維持や整理が必要な時代に

 

空き家所有者は、自己物件が原因となって放火や、犯罪、地域の衛生環境面悪化など、近隣の住宅に迷惑が掛からないように、きちんと屋内外とも整理した上で管理を行うことが重要です。とくに害虫や害獣の糞害は、建物の寿命を著しく縮めて、不動産の金銭的価値を低下させる結果にもなります。

 

遠方に住んでいて空き家を管理できない場合、空き家をどうように活用するのかを考えなければなりません。

かなり古く、使うことができない状態なら、特定空家等に認定される可能性が高いので、早めに解体したほうがよいでしょう。土地を売却するときも、古い家屋付きよりも更地にした方が買い手もつきやすくなります。

空き家解体のメリット・デメリットはこちらで詳しく解説しているので、参考にしてください。

【関連記事】空き家解体のメリット・デメリット 費用や助成金について解説 | One’s Ending (ihinseiri-oneslife.com)

 

建物をそのまま残したいなら、空き家バンクを利用するのもよいでしょう。空き家バンクとは、地方自治体が主体で行っている空き家再生事業です。詳しくはこちらの記事で解説しています。

【関連記事】空き家バンクの制度の概要やメリット・デメリットを解説 | One’s Ending (ihinseiri-oneslife.com)

 

実家を解体するにしても空き家バンクに出すにしても、荷物はすべて片付けなければなりません。実家の片付けが大変で、空き家になってもそのまま放置しているという人も多いのではないでしょうか?こちらの記事では空き家を整理する手順やコツを詳しく解説しています。実家の片付けで悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

【関連記事】効率的に空き家整理をするための手順とコツを解説 | One’s Ending (ihinseiri-oneslife.com)

 

まとめ

空き家対策特別措置法の制定で、「空き家は放置しておくしかない」という、これまでの行政の考えが変わりつつあります。
親が亡くなって空き家を相続した場合、ますは空き家の整理を行うことが必須です。
事前に計画を立てておくとスムーズに進みます。

 

これまでずっと放置してきた実家も、この機会にしっかり整理しておくことを考えるべきでしょう。
その上で、空き家の廃墟化を防ぎ、公的機関を利用した空き家マッチングシステムにて、賃貸にしたり売却したりするのもよいと思います。

また、親族だけで対応できない場合には、専門の業者のサービスを利用して相談し、改善策などのアドバイスをもらうのがおすすめです。

 

問題が起きて大きな負担になる前に、早めに解決して、心の負担を減らしましょう。

 

 

この記事を書いた人
One's Ending編集部
関東の遺品整理専門会社(株)ワンズライフのメディア編集部です。 遺品整理、生前整理、空家整理に関することから、終活、相続税に関することまで。人生のエンディングにまつわる、役に立つ情報やメッセージをお届けしていきます。
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