2020.11.02
生前整理はいつから始める?始める時期・タイミングと進め方を解説
生前整理は、自分の死後に、残された家族への負担を減らせるというメリットがあります。ただ「いつから始めるべき?」「具体的に何をしたらいいの?」と、生前整理を始めるタイミングや進め方についてわからない方も多いのではないでしょうか?
そこで今回の記事では、生前整理を始める時期・タイミングのひとつの目安と、具体的な進め方についてわかりやすく解説します。
生前整理とは?始める時期とタイミング
生前整理とは、存命中に自分で財産関係を整理しておくことをいいます。
生前整理を行うのはもちろん自分のためでもありますが、一番の目的は、自分の亡き後に家族へ負担をかけないようにすることです。
なお、生前整理を行うタイミングで引っ越しをするのであれば、財産の整理とともに、家の片付けも行うこともあります。
〈生前整理〉
誰が行う……自分が
誰のために……家族のために
内容……財産関係の整理を行う、必要に応じて家の片付けを行う
生前整理については、ワンズライフのこちらの記事でも詳しくご紹介しています。
【関連記事】生前整理とは?必要性はある?進め方を徹底解説
生前整理は「〇歳で始めるべき」といった、明確な決まりはありません。
自分の体力・体調・年齢・介護状況などを総合的に考えたうえで「そろそろ生前整理をした方がいいかもしれない」と思ったタイミングで始めるのが良いでしょう。
以下では、生前整理を始めるにあたって、遺品整理ワンズライフに片付けを依頼された方のケースをいくつかご紹介します。
①家族と同居するタイミングで
高齢になり、家族と同居するタイミングで生前整理を始められる方もいます。
2階建て以上の住宅に住んでいて、ベランダや寝室が上階にあったりすると、毎日階段の昇り降りが必要です。
しかし、年を重ね、足腰が悪くなってくると、階段を昇り降りするのが難しくなり、1階のみで生活を送ることになります。
上階の掃除ができなくなると、ほこりが溜まって不衛生です。
また、ベランダが1階にない場合は、洗濯物を干すことすら大変になってしまいます。
このように、これまで生活してきた家での生活することが難しくなり、家族と同居することになってもう住む予定がない場合は、荷物の整理を兼ねて生前整理を始めるのも良いでしょう。
②老人ホーム・施設へ引っ越すタイミングで
施設の種類によっては持っていける家具や家電の量が決まっています。
再び家に戻ってくる可能性が低い場合は、引っ越しのタイミングで財産や家財道具を整理しておいた方が良いかもしれません。
短期入所で在宅での生活を目指す場合はすべての家財道具を処分する必要はありませんが、ある程度片づけておく方と戻ってきたときに生活しやすくなります。
③長期入院するタイミングで
病気やケガで長期入院する予定の場合も、生前整理について考えるタイミングだといえます。
快復して以前のように生活できればよいですが、年齢や病気・ケガの具合によっては、そのまま施設へ入居することになるかもしれません。
病院に入院して、治療を受けながら荷物や財産の整理を進めるのは大変です。
長期間家を離れることがわかっているときは、この機会に生前整理を考えてみるのも良いでしょう。
④自分で整理整頓をするのが難しくなったタイミングで
「どこに何があるかわからない」「物忘れが激しくなってきた」など、自分で整理整頓するのが難しくなったときも、生前整理を考えるひとつのタイミングです。
そのままでいると、自分では気づかないうちに家がゴミ屋敷になってしまい、いざ生前整理を始めようと思っても物が多すぎて、手が付けられなくなるかもしれません。
「以前は片付けられたのに、高齢になってから片付けられなくなった」という人の場合、認知症やADHD、うつ、統合失調症など、脳の病気や精神疾患の影響を受けている可能性も考えられます。
自分自身ではどうしても気づきにくいため、子どもや周囲の人から「片付けた方がいいよ」「生活に支障が出ているよ」などの指摘を受けたら、早めに家族に助けてもらったり、行政やプロの整理専門会社に相談したりすることが大切です。
生前整理を行うメリット
家族が亡くなると、家族は葬儀やお墓の準備のほか、遺品整理も行います。
遺品整理とは、亡くなった故人の遺品や財産をほかの人が整理することです。誰が遺品整理するかについて決まりはありませんが、整理の専門会社に依頼しない場合は、子どもや親族が行うことが多くなっています。
賃貸物件や売却予定の家であれば、退去期限までに整理を終わらせないといけません。
しかし、遺品の中には、通帳やキャッシュカード、保険関係の書類などの貴重品も多々含まれていますので、急いでいるからといって大切な物まで処分しないように細心の注意が必要です。
大切な家族が亡くなった悲しみの中、限られた時間の中で多くの荷物を分類し、遺品整理を進めるのは大変な手間と精神的負担がかかります。
あらかじめ生前整理をしておけば、遺品整理の際に子どもや家族への負担を軽減できるのです。
【関連記事】遺品整理と生前整理の違いは?どちらが大変?
また、財産関係を整理して遺産分割について決めておけば、自分が亡き後に家族間で相続に関するトラブルが起こるのを回避できるかもしれません。
身の回りの財産を整理しておくことで、現在の資産の状態が把握しやすくなり、今後のマネープランも立てやすくなるでしょう。
老前整理とは?生前整理との違い
生きている間に終活の一環として行う整理には、生前整理のほか「老前整理」というものがあります。
この2つは「誰が、誰のためにするか」が違うため、行っていく整理の内容も変わってきます。
老前整理とは、老後を迎える前に身の回りの物を整理しておくことです。
生前整理が亡くなった後のことも考えて行うのに対し、老前整理は、今の暮らしをより良くしたり、セカンドライフに備えたりするための整理という意味合いで語られます。
〈老前整理〉
誰が行う……自分が
誰のために……自分のために
内容……身の回りの物の整理を行う
老前整理を行うメリット
家の中に物があふれていると、老後の生活に支障が出る可能性があります。
床にある物につまずいて転んでしまうと、骨折やケガにつながるかもしれません。
高いところに収納している荷物が地震で落ちてきて頭にぶつかったり、部屋をふさいで逃げられなくなったりすることもあります。
元気なうちに老前整理をしておけば、体力がなくなってから物を片づける必要がなくなり、ケガや災害時のリスクも軽減できるのです。
また、荷物の整理整頓を通して、本当に自分に必要な物を考える機会ができます。
「何を残しておきたいのか」「今後の人生に必要な物は何か」が明確になり、頭の中が整理しやすくなるでしょう。
家の中をまるごと片づけようと思うと、想像以上に時間がかかります。
高齢になってからだと、重たい荷物を運ぶのは大変ですし、気力ももちません。
そのため、老前整理は気力・体力・判断力が十分にある40~50代で始めるのがおすすめです。
【関連記事】40代・50代でやるべき老前整理とは?メリットと成功のコツ
生前整理の進め方
生前整理で財産関係を整理するにあたって、家の中にあるものを片付けて何があるか把握し、不要なものは処分する必要が出てきます。
ここからは、財産の整理と一緒に物の片付けも行うことを想定して、生前整理の進め方を解説していきます。
なお、お子さんとの同居や施設への引っ越しに伴い生前整理を始めようと思っても、体力が低下して重たい荷物を運ぶことができなかったり、持病があったりして自分ひとりで行うのが難しい方もいるかもしれません。
そういった場合は、子どもや家族に手伝いを頼むか、プロの整理専門会社にサポートを依頼するという方法もあります。
まずは、今後空き家となる予定の実家を、ご自分で、もしくはお子さんと一緒に整理していく場合の進め方を見ていきましょう。
まずはリストを作成する
生前整理をスムーズに進めるためには、事前にきちんと計画を練っておくことが大切です。
いきなり目の前にある荷物から取りかかると、後で「あっちの片付けを忘れていた」「どこまで進めたか忘れた」などのアクシデントが発生し、作業に時間がかかってしまいます。
まずは、生前整理でやっておきたい内容をリスト化してみましょう。
〈生前整理でやることリスト〉
財産目録の作成 |
【財産関係】 |
物を仕分けて「必要な物」と「不要な物」を決める |
【家の片付け】 |
不要品の処分を行う |
【家の片付け】 |
不動産の整理を行う |
【財産関係】 |
デジタル整理をする |
【財産関係】 |
エンディングノートの作成 |
【関連記事】生前整理でやることとは?リストを使った進め方のポイント
生前整理の進め方【財産関係】
ここからは、財産関係の整理と物の片付けにわけて、具体的な進め方をご紹介します。
財産関係の整理で主にすることは、財産目録の作成、不動産の整理、デジタル整理です。
財産目録の作成
「財産目録」とは、所有している財産の内容を一覧にまとめた表のことです。
財産の内容だけでなく、金額が評価額など、できる限り詳細に書き記しておきましょう。
また、プラスの資産だけでなく、借金やローン残高など、負債についても記入しておくことが大事です。
もし、トータルしてマイナスの方が多ければ、遺族は相続の際に財産放棄を選択することも可能です。
プラスの資産とマイナスの資産の両方を記載しておけば、家族は財産の総額を一目で把握できます。
財産目録に記載しておきたい内容の一例を、以下にまとめました。
〈財産目録の内容(一例)〉
・健康保険、年金手帳、生命保険、医療保険の加入歴がわかる書類
・各種保険証券
・土地や不動産関係の権利書
・預金通帳
・現金(自宅の金庫などで保管している場合)
・有価証券
・絵画や壺などの骨董品・美術品
・宝石や貴金属
・車などの資産価値が高いもの
・住宅ローンや借入金の残高
用紙や書式に法的な決まりはありませんので、好きなように書いて構いません。
パソコンで作成しても良いですし、手書きでノートに書いても良いでしょう。
最近では、インターネット上でフォーマットを無料配布しているサイトもありますので、そちらからダウンロードするのもおすすめです。
不動産の整理
持ち家があったり土地を所有していたりする方は、不動産の整理について一度考えてみましょう。まだその家に住む予定があればすぐに売却する必要がありませんが、もしもの時に備えて相続の手続きの方法を調べておくと良いかもしれません。以下に、不動産の相続の方法を簡単にまとめました。
〈不動産の相続の方法〉
- 現物分割……不動産をそのままの形で相続する方法。
ひとつの土地を分割して相続人がそれぞれ単独取得する場合や、複数の不動産を相続人が単独で取得する場合などがある。 - 換価分割……不動産を売却して、現金化してから相続人に相続する方法。
- 代償分割……相続人の中の1人がすべての不動産を相続し、ほかの相続人にはそれに見合う現金を渡す方法。
例えば、相続遺産が1億円で相続人が5人いる場合、すべての不動産を引き継ぐ人が、ほかの相続人4人に2,000万円ずつ支払うことになる。 - 共有分割……不動産を複数の相続人で共有する方法。現物分割と違い、分割の協議は不要となる。
デジタル整理
デジタル整理とは、紙や書類などのデータをパソコン、もしくはスマートフォンに取り込んで整理することです。
SNSのアカウントや写真データ、ネット銀行の口座情報などは、管理していた方が亡くなると「デジタル遺品」となります。
パソコンやスマートフォンにはロックをかけている方が多いため、もしご本人が亡くなるとほかの方には操作することができません。
デジタル遺品には口座情報などの資産に関する内容が含まれていることも多いため、いざという時に家族が困らないよう事前に整理しておくことが大切です。
デジタル遺品の整理方法を、以下に簡単にまとめました。
〈デジタル遺品の整理方法〉
・メールや写真を確認し、不要なものは削除、残しておきたいものには目印をつけておく
・パソコンやスマートフォンのロック番号は、エンディングノートなど別の場所に書き記し、普段はほかの人の目につかない場所に保管しておく。SNSアカウントがある場合は、アカウント名やログインパスワードを確認し、同じようにノートなどに記載しておく。
・ネット銀行や仮想通貨などの情報は、アカウント名やパスワードだけでなく、銀行名や第2パスワードも記載しておく。年会費の有無や、引き落としに連携させている口座など、できる限り詳細を詳しく書いておくことが大切。
【関連記事】デジタル遺品とは?パソコンやスマホに残るデータの遺品整理・生前整理
生前整理の進め方【家の片付け】
次は、生前整理にともなう家の荷物の片付け方法について詳しく見ていきましょう。
家の片付けを行う際は、やみくもに手をつけるのではなく、どこから片づけるか順番を決め、その場所が終わってから次の場所に取り掛かることが成功のコツです。
不要品の選定
片付ける場所の順番を決めたら、荷物を「必要」「不要」に仕分けていきます。
残すか判断に迷うものは「保留」にして置いておくと、作業がスムーズに進みます。
〈不要品として処分する物の一例〉
・もう着る予定がない服、何十年も使用していない雑貨類
・使わない家具や家電
・趣味の物で、もう使用する予定がないもの
・もう読まない古本、古雑誌
・不要なアルバム、写真類
不要品の処分
荷物の仕分けが一通り終わったら、次に不要品の処分を行います。
「不要」に仕分けした荷物の中で、売れそうな物はリサイクルショップに買取を依頼したり、ネットオークションなどで売却したりするのもおすすめです。
壊れた家具や家電など、もう使えない不用品は、自治体のルールに沿って正しく処分しましょう。
スプレー缶やライター・消火器などの危険物や、分別方法がわからない物があれば、専門の会社に依頼して回収・処分してもらうのが安全です。
【関連記事】遺品整理、生前整理で出た不用品の処分方法まとめ
エンディングノートを活用するのもおすすめ
エンディングノートとは、過去の振り返りや、これからの目標、死後の希望、自分の想いや希望など、人生に関するあらゆることを自由に書き記せるノートです。
終活の一環として、近年急速に認知度が高まりました。
ただ、エンディングノートには、遺言書と違って法的効力がありません。
そのため、遺産の配分や相続の取り決めに関して意思表示しておきたいときは、遺言書を別に作成しておくのが良いでしょう。
〈エンディングノートに記入できる内容(一例)〉
・ご自身のプロフィール(生年月日や本籍地、家系図など)
・財産の情報(財産目録)
・医療・老後の介護の希望
・友人、知人の連絡先
・葬儀やお墓の希望
・デジタル遺品の情報
・家族や親族、周囲の方への感謝の気持ち
・今後の人生の目標
・ペットのことなど
【関連記事】エンディングノートとは何?メリットやオススメの選び方と書き方を解説
生前整理はプロの業者に相談するという方法もある
自分がこれまで住んできた家ですので、財産の整理から荷物の片付けまで「できれば自分でやりたい」と思う方も少なくないでしょう。
しかし、長く住んできた家であると、荷物の量はかなり増えています。
財産の整理をしようと思っても「どこに何があるかわからない」「高齢で重いものが運べない」など、自分ひとりで進めるのは困難かもしれません。
施設や家族との同居にともなって引越しを行う方は、家を退去する日が決まっており、その日までに作業を完了させないといけない場合もあります。
このように、時間がなくて急いで片付けをする必要があったり、自分で作業を進めるのが難しかったりするときは、一度プロの整理専門会社に問い合わせて、相談してみるのもひとつの方法です。
業者を探すときは費用以外もチェック
プロに依頼するときは、費用の安さだけでなく、プロとしての高い意識を持ち、依頼者の気持ちに寄り添って作業を進めてくれる会社を選びましょう。
以下に、プロの整理専門会社に依頼する際にチェックしておきたいポイントを箇条書きでまとめました。
〈プロに依頼・相談する際に見ておくべきポイント〉
- 遺品整理や生前整理の関する資格を保有しているか
- 料金体系がわかりやすいか
- サービス内容は自分が依頼したい作業と一致しているか
- 資格取得者が見積もりに来るか
- スタッフの接客対応は良いか
- ホームページに「企業理念」や「代表挨拶」が公開されているか
これらのポイントをチェックして、企業の良し悪しを総合的に判断しましょう。
まとめ
生前整理を始める時期、タイミングは人それぞれです。
生前整理で行う財産や物の整理は、作業量が多く、時間もかかります。
誰かにさせられても、自分が乗り気でなければなかなか作業は進まず、途中で挫折してしまうかもしれません。
施設への引っ越しや家族との同居、持病が悪化してきた場合など、生活状況や健康状態を考えて「そろそろ生前整理をしよう」と自分で決断したときに始めるのが良いでしょう。
ただ、高齢であったり家の退去日が決まっていて短期間で片付けないといけなかったりと、さまざまな事情で自分や家族だけでは作業を進めるのが困難なケースもあります。
このように「自分たちでしたいけれどできない」という場合は、プロの整理専門会社に一度相談・依頼されてみてはいかがでしょうか。
おすすめ記事